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'''ベニクラゲ'''(''Turritopsis nutricula'')は[[ヒドロ虫綱]]に属する、いわゆる[[クラゲ]]の一種である。性的に成熟した([[有性生殖]]が可能な)個体が[[ポリプ]]期へ退行可能という特徴的な[[生活環]]を持つことで知られる。世界中の[[温帯]]から[[熱帯]]にかけての海域に分布する。
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有性生殖能を獲得するまでに[[胚発生|発生]]が進んだ個体が未成熟の状態に戻る例は、[[後生動物]]としては本種と[[軟クラゲ目]]の[[ヤワラクラゲ]](''Laodicea undulata'')でのみ報告されている<ref>[[紀伊民報]] 第18466号(2004年6月13日) [http://www.fserc.kais.kyoto-u.ac.jp/main/centernews/h16/newsp0113.pdf PDF available]</ref>。動物におけるこのような細胞の再[[分化]]は[[分化転換]]([[:en:Transdifferentiation|transdifferentiation]])と呼ばれる。論理的にはこの過程に制限はなく、これらのクラゲは通常の発生と分化転換を繰り返すことで個体が無限の[[寿命]]を持ち得ると予想されている。従って「不老不死(のクラゲ)」と称される場合もある。
== 不老不死 ==
ベニクラゲは外傷や病気にかかると死んでしまうが、[[老衰]]で死ぬことは無い。[[成体]]は死期が近づくと、約二日間ほどで[[ポリプ]]と呼ばれる[[幼体]]に若返る。一個体で何度でも若返られるため、数万、数千年程度生き続けている個体がいる可能性もある。


== 特徴 ==
ベニクラゲは厳密に言うと不老不死ではなく若返っているのだが、どちらにしてもその神秘さから将来人間にも応用できるのではないかと期待されている。
ベニクラゲは直径 4-5mm の小さなクラゲである。透けて見える[[消化器]]が赤色であるためこう名付けられた。ベニクラゲの形状はベル型で、傘の直径と高さはほぼ等しい。外傘や中膠は均一で薄い。[[胃]]は明るい赤色で大きく、横断面は十字型である。若い個体は外縁に沿ってわずかに8本の[[触手]]を持つが、成熟したものは 80-90 本の触手を備える。


== 生活環 ==
なおすべてのベニクラゲが若返るわけではなく、[[地中海]]や[[鹿児島県|鹿児島近海]]の海域に生息しているものだけがもつ特別な能力である。
[[受精卵]]は胃および外傘の中で発生し、[[幼生|プラヌラ幼生]]となる。幼生は基物に着生して[[群体|群体性]]のポリプを形成する。ポリプ形成後2日ほどで幼クラゲとして個体が離脱する。幼クラゲは数週間で成熟する。成熟に要する期間は水温に依存し、20℃ では 25-30 日、22℃ では 18-22 日ほどである。


== 関連項目 ==
== 「不老不死」 ==
普通のクラゲは有性生殖の後に死ぬが、前述の通りベニクラゲは再びポリプへと戻ることができる。成熟個体は触手の収縮や外傘の反転、サイズの縮小などを経て再び基物に付着、ポリプとなる。生活環を逆回転させるこの能力は動物界では稀であり、これによりベニクラゲは個体としての死を免れている。
*[[ヤワラクラゲ]] … ベニクラゲと同様に若返るクラゲ

この現象は[[地中海]]産のベニクラゲでのみ報告されていたが、[[鹿児島湾]]で採集された個体も同様の能力を持つことが[[2001]]年に[[いおワールドかごしま水族館|かごしま水族館]]で確認された<ref>[[南日本新聞]] 第21379号(2001年5月13日)</ref>。

== 注釈・参考文献 ==
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* {{cite journal
| author = Piraino S, Boero F, Aeschbach B, Schmid V
| title = Reversing the Life Cycle: Medusae Transforming into Polyps and Cell Transdifferentiation in ''Turritopsis nutricula'' (Cnidaria, Hydrozoa)
| journal = The Biological Bulletin
| year = 1996
| volume = 190
| issue = 3
| pages = 302-12
}} [http://www.biolbull.org/cgi/reprint/190/3/302 PDF available]
* [http://8e.devbio.com/preview_article.php?ch=2&id=6 Cheating Death: The Immortal Life Cycle of ''Turritopsis''] (英語)


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2008年10月31日 (金) 07:48時点における版

ベニクラゲ
分類
: 動物界 Animalia
: 刺胞動物門 Cnidaria
: ヒドロ虫綱 Hydrozoa
: 花クラゲ目 Anthomedusae
: クラバ科 Clavidae
: ベニクラゲ属 Turritopsis
: ベニクラゲ T. nutricula
McCrady, 1858
学名
Turritopsis nutricula
和名
ベニクラゲ(紅海月、紅水母)

ベニクラゲTurritopsis nutricula)はヒドロ虫綱に属する、いわゆるクラゲの一種である。性的に成熟した(有性生殖が可能な)個体がポリプ期へ退行可能という特徴的な生活環を持つことで知られる。世界中の温帯から熱帯にかけての海域に分布する。

有性生殖能を獲得するまでに発生が進んだ個体が未成熟の状態に戻る例は、後生動物としては本種と軟クラゲ目ヤワラクラゲLaodicea undulata)でのみ報告されている[1]。動物におけるこのような細胞の再分化分化転換transdifferentiation)と呼ばれる。論理的にはこの過程に制限はなく、これらのクラゲは通常の発生と分化転換を繰り返すことで個体が無限の寿命を持ち得ると予想されている。従って「不老不死(のクラゲ)」と称される場合もある。

特徴

ベニクラゲは直径 4-5mm の小さなクラゲである。透けて見える消化器が赤色であるためこう名付けられた。ベニクラゲの形状はベル型で、傘の直径と高さはほぼ等しい。外傘や中膠は均一で薄い。は明るい赤色で大きく、横断面は十字型である。若い個体は外縁に沿ってわずかに8本の触手を持つが、成熟したものは 80-90 本の触手を備える。

生活環

受精卵は胃および外傘の中で発生し、プラヌラ幼生となる。幼生は基物に着生して群体性のポリプを形成する。ポリプ形成後2日ほどで幼クラゲとして個体が離脱する。幼クラゲは数週間で成熟する。成熟に要する期間は水温に依存し、20℃ では 25-30 日、22℃ では 18-22 日ほどである。

「不老不死」

普通のクラゲは有性生殖の後に死ぬが、前述の通りベニクラゲは再びポリプへと戻ることができる。成熟個体は触手の収縮や外傘の反転、サイズの縮小などを経て再び基物に付着、ポリプとなる。生活環を逆回転させるこの能力は動物界では稀であり、これによりベニクラゲは個体としての死を免れている。

この現象は地中海産のベニクラゲでのみ報告されていたが、鹿児島湾で採集された個体も同様の能力を持つことが2001年にかごしま水族館で確認された[2]

注釈・参考文献

  1. ^ 紀伊民報 第18466号(2004年6月13日) PDF available
  2. ^ 南日本新聞 第21379号(2001年5月13日)