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「アセチルセルロース」の版間の差分

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'''アセチルセルロース'''(Acetyl cellulose)は、天然[[高分子]]の[[セルロース]]分子を修飾して作られた[[合成樹脂]](プラスチック)のひとつ。酢酸セルロースともいう。
'''アセチルセルロース'''(Acetyl cellulose)は、天然[[高分子]]の[[セルロース]]分子を修飾して作られた[[合成樹脂]](プラスチック)のひとつ。酢酸セルロースともいう。

'''アセチルセルロース'''(acetylcellulose)とは[[セルロース]]から製造される[[合成樹脂]]で[[繊維]]やフィルムやテープのベース材として利用される。


=== 概要 ===
=== 概要 ===
世界で初めて人工的に作られた合成樹脂は、セルロースを修飾し[[ニトロセルロース]]にしたものに[[可塑剤]]として[[ショウノウ]]を加えて練り合わせ、整形した[[セルロイド]]であった。しかし、ニトロセルロースは火薬、爆薬としても使われる極めて反応性の高い分子であるため、発火事故が絶えなかった。そのため、セルロース分子を修飾して作る難燃性の合成樹脂の登場が望まれるようにった。セルロースを構成する[[グルコース]]単位[[水酸基]]をニトロセルロースを製造するときように[[硝酸]]によって硝酸[[エステル]]とするのではなく、[[酢酸]]によってエステル化して[[アセチル基]]としたものは、分子間の[[水素結合]]によるセルロースの繊維構造を解離させて整形体に加工することが期待できるのみならず、難燃性も期待できる分子であった。
世界で初めて人工的に作られた合成樹脂は、セルロースを硝酸エステルとして修飾し[[ニトロセルロース]][[セルロイド]]であった。しかし、ニトロセルロースは火薬、爆薬としても使われる物質であ、発火性を有した。その為発火性のない他物質開発が期待された。


'''アセチルセルロース'''は[[1869年]]に[[フランス]]のシュッツェンベルジェ(P. Schutzenberger) が[[セルロース]]と[[無水酢酸]]とから初めて製造し、[[1894年]]に[[イギリス]]のクロス(C. F. Cross) とベバン(E. J. Bevan) とにより脱水触媒が改良された。
しかし、グルコース単位の3つの水酸基を全てアセチル化したものはトリアセチルセルロースと呼ばれ、難燃性であるが整形体や繊維として使用することができない。これを溶かす[[溶媒]]が見つからず、可塑性のあるコロイド溶液にして整形、紡績するすべがないからである。そのため、天然の原料繊維の形状のまま使うしかなく、[[タバコ]]のフィルター材料として用いられている。


グルコース単位の3つの水酸基を全てアセチル化したものは'''トリアセチルセルロース'''と呼ばれ、当時は[[クロロホルム]]にしか溶けず紡績には利用できないとされたが、[[塩化メチレン]]に溶解することがわかり,1930年ころから特に日本国において塩化メチレンを使ってアセテート繊維が紡績されている。また、[[第一次世界大戦]]中は飛行機の翼抵抗を低減させる塗料として利用された。また、今日では繊維用のほか,電線やコイルの絶縁体[[タバコ]]のフィルター材料として用いられている。
トリアセチルセルロースの一部のアセチル基の[[エステル結合]]を[[加水分解]]して水酸基に戻したものは、[[アセトン]]によく溶けるので、その液を小さい穴から噴出させ熱風ですると[[アセテート繊維]]が得られる。これもかなり難燃であり[[カーテン]]地に用いられる。また、シート状などの整形品に加工してプラスチックとして利用することも容易である。グス単位1つあたりアセチル化している水酸基は2箇所程度であると推測される。


トリアセチルセルロースを3倍量アセトンに20時間ほどかけて溶解し一部のアセチル基の[[エステル結合]]を[[加水分解]]して水酸基に戻し2.5アセチルセルロースにしたものは、[[アセトン]]によく溶けるのでこれ剤にして乾式紡糸すると[[アセテート繊維]]が得られる。<ref name="世界大百科辞典">瓜生 敏之、「アセチルアセテート」、『世界大百科辞典』、CD-ROM版、平凡社、1998年。</ref>発火はなく[[カーテン]]地などに用いられる。また、プラスチックとしてフィム・シト状に加工して利用される。
アセチルセルロースは合成樹脂一般と比較すると若干の[[生分解性]]を持ち、[[ごみ]]として環境中に排出された場合には緩やかに分解される。

アセチルセルロースの成分はいずれも天然に存在することから、若干の[[生分解性]]を持つと考えられている。<ref>{{cite journal | author = Sakai K, Yamauchi T, Nakasu F, Ohe T | title = Biodegradation of ellulose Acetate by Neisseria sicca | journal = Bioscience, biotechnology, and biochemistry | year = 1996 | volume = 60 | issue = 10 | pages = 1617-22}} [http://ci.nii.ac.jp/naid/110002678330/]</ref><ref>{{cite journal | author = Buchanan CM ,Gardner RM, Komarek RJ | title = Aerobic biodegradation of cellulose acetate | journal = Journal of applied polymer science | year = 1993 | volume = 47 | issue = 10 | pages = 1709-19 }} [http://cat.inist.fr/?aModele=afficheN&cpsidt=4573390]</ref>


なお、[[古生物]]の[[植物]][[化石]]研究法にアセチルセルロース樹脂のシート、つまりアセテートフィルムを利用した[[ピール法]]というものがある。
なお、[[古生物]]の[[植物]][[化石]]研究法にアセチルセルロース樹脂のシート、つまりアセテートフィルムを利用した[[ピール法]]というものがある。

==出典==
<references />

==関連項目==
* [[アセテート繊維]]


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2007年12月2日 (日) 01:51時点における版

アセチルセルロース(Acetyl cellulose)は、天然高分子セルロース分子を修飾して作られた合成樹脂(プラスチック)のひとつ。酢酸セルロースともいう。

アセチルセルロース(acetylcellulose)とはセルロースから製造される合成樹脂繊維やフィルムやテープのベース材として利用される。

概要

世界で初めて人工的に作られた合成樹脂は、セルロースを硝酸エステルとして修飾したニトロセルロースセルロイド)であった。しかし、ニトロセルロースは火薬、爆薬としても使われる物質であり、発火性を有した。その為発火性のない他の物質の開発が期待された。

アセチルセルロース1869年フランスのシュッツェンベルジェ(P. Schutzenberger) がセルロース無水酢酸とから初めて製造し、1894年イギリスのクロス(C. F. Cross) とベバン(E. J. Bevan) とにより脱水触媒が改良された。

グルコース単位の3つの水酸基を全てアセチル化したものはトリアセチルセルロースと呼ばれ、当時はクロロホルムにしか溶けず紡績には利用できないとされたが、塩化メチレンに溶解することがわかり,1930年ころから特に日本国において塩化メチレンを使ってアセテート繊維が紡績されている。また、第一次世界大戦中は飛行機の翼抵抗を低減させる塗料として利用された。また、今日では繊維用のほか,電線やコイルの絶縁体タバコのフィルター材料として用いられている。

トリアセチルセルロースを3倍量のアセトンに20時間ほどかけて溶解し一部のアセチル基のエステル結合加水分解して水酸基に戻し2.5アセチルセルロースにしたものは、アセトンによく溶けるのでこれ溶剤にして乾式紡糸するとアセテート繊維が得られる。[1]発火性はなくカーテン地などに用いられる。また、プラスチックとしてフィルム・シート状に加工して利用される。

アセチルセルロースの成分はいずれも天然に存在することから、若干の生分解性を持つと考えられている。[2][3]

なお、古生物植物化石研究法にアセチルセルロース樹脂のシート、つまりアセテートフィルムを利用したピール法というものがある。

出典

  1. ^ 瓜生 敏之、「アセチルアセテート」、『世界大百科辞典』、CD-ROM版、平凡社、1998年。
  2. ^ Sakai K, Yamauchi T, Nakasu F, Ohe T (1996). “Biodegradation of ellulose Acetate by Neisseria sicca”. Bioscience, biotechnology, and biochemistry 60 (10): 1617-22.  [1]
  3. ^ Buchanan CM ,Gardner RM, Komarek RJ (1993). “Aerobic biodegradation of cellulose acetate”. Journal of applied polymer science 47 (10): 1709-19.  [2]

関連項目