顧客満足
顧客満足(こきゃくまんぞく)とは、Customer satisfaction (CS) の訳語である。顧客満足度とも呼ばれる。人は物品を購入するとき、その物品に何らかの満足を感じたときに購入するとの考え方で、企業においては、その度合いを定期的に評価し、次期商品開発に結びつけたりする時に使うことがある。
概要
米国において、1980年代から言われ始めた概念。従来は生産者主導であった商品の質・方向性などを、消費者(顧客)の要望や嗜好を中心に据えた方が良いのではないかという考えが背景にある。また、サービス業を初めとする第三次産業の社会に占める割合が拡大していることも、関係していると言われている。
生産性や効率を多少犠牲にしてでも顧客満足度を高めた方が、消費者のリピーター化などを通じて結果的には良いと言われている。
1970年代後半に消費者への苦情処理を調査したジョン・グッドマンが、この分野の第一人者と言われている。
1990年代に入り、F・F・ライクヘルドによってロイヤリティの概念が体系化され、真の顧客満足度(ロイヤルティ)を算出しCRMを実施するうえでの消費者基盤構築が可能になっている。
日本では1991年に日本能率協会総合研究所がCS経営 (Customer Satisfaction Management) を提唱し日本初のCS調査(「製品・サービスの顧客満足度調査」)を実施している。
調査方法
満足度という見ることも計ることもできない心理的・感覚的なものを調査するため、消費者に対するアンケートを実施し、アンケート結果を元にデータ処理・分析を行って顧客満足度を算出するのが一般的。
近年は、ミシガン大学ビジネス・スクールが算出式を構築し、それを元に米国の政府機関American Society for Quality (ASQ) が産業別に顧客満足度指数:American Customer Satisfaction Index (ACSI) を発表したものが指標とされている。
日本では、経済産業省の支援のもと、サービス産業生産性協議会が、JCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)を開発した。JCSIは、客の購買行動に共通する心の動きの部分の商品・サービスを購入・利用して、どのように感じたのか等についてモデル化し、顧客満足の構造を把握できる指数である。JCSIは、平成19年から2年間の開発期間を経ており、平成21年から実用化している。またJCSIを用いて、サービスを利用する前の客の予想や期待、サービスを利用した後の客の継続した利用意向まで、サービス全体の調査や分析に活用している[1] 。そして、JCSIを用いた調査や分析は、統計的な収集方法による総計10万人以上の回答をもとに、日本の幅広いサービス産業をカバーしており、日本最大級である[2] 。
日本国内でのこの手法使用例は、ソフトバンクBBが提供するYahoo!BBのコールセンター顧客満足度調査において導入されている。
その他
派生した言葉としては、職員満足度、顧客ロイヤリティがある。
クレーム対応などが悪い企業をさして「あの企業は顧客満足度を考えていない」と言ったり、顧客定着率が低い企業を「あの企業の顧客はロイヤルティが低い」と定義付けられることがある。
参考文献
- クリス・ディノーヴィ、J.D.パワーIV世『J.D.パワー 顧客満足のすべて』(ダイヤモンド社)ISBN 978-4478375204
- 新山勝利『ポスト顧客満足の教科書』(明日香出版社)ISBN 978-4756908896
- 小野 譲司『顧客満足[CS]の知識』(日本経済新聞出版社)ISBN 978-4532112202
- 川口雅裕『顧客満足はなぜ実現しないのか~みつばちマッチの物語』(JDC出版)ISBN 978-4890083718
参考ウェブサイト
- サービス産業生産性協議会(2012年1月16日閲覧)
- 公益団体日本生産性本部(2012年1月16日閲覧)
関連項目
- マーケティング
- マーケティング・コミュニケーション
- カスタマーサービス
- マーケティングミックス
- 企業の社会的責任
- 従業員満足
- 消費者行動論
- J.D.パワー
- 日本能率協会総合研究所
- バランスト・スコアカード
- ISO