長岡弁
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長岡弁(ながおかべん)とは、新潟県中越地方で話されている日本語の方言である。下越地方南部で話される新潟弁とわずかに異なる。また、中越地方でも各市町村や集落により異なる場合もある。
アクセント
アクセント体系は外輪型東京式アクセントに分類される[1]。共通語と異なる点は、2拍名詞第2類が平板型に発音される(石、紙、川、橋、雪など)(共通語では尾高型となる)。また、一部の単語においてアクセントが異なるため、以下にその一例を挙げる(\や/はピッチの変化を表す)。
- タ\マゴ(卵)、ネ\ズミ(鼠)、イ\チゴ(苺)、ホ\ウチョウ(包丁)
- フ\ク(服)、ク\ツ(靴)、ハ\タ(旗)、ク\マ(熊)
- ダ/レ(誰)、ナ/ニ(何)
ただし地区により異なる。
文法
- が [終助詞] について
- 文尾(おもに用言の後)に付け、語調を整える。共通語の終助詞「(のだ)よ」「の」等に当たる。
- 「がー」「がぁ」と長音を付けて発音する場合もある。
- 上げ調子に発音すると疑問形となる。また下げ調子で理解・納得を示す場合もある。
- 通常の終助詞と異なり、さらに後に終助詞「か」を付けて疑問形を作る場合や、「や」「て」を付ける場合もある。
- 助動詞「だ」「です」「ます」、形容動詞の終止形に付ける場合は、その助動詞、あるいは「だ」を省く(例:ここは長岡んが。(「ん」は「なの」に当たるが、このような場合は「な」が省略され「の」が撥音化される。))。その他の助動詞にはそのまま付ける。
- て [終助詞] について
- 上記「が」と同様に、文尾につけて用いる。「(だ)よ」等に当たる。「が」と異なり、助動詞「だ」「です」「ます」、形容動詞の終止形の後にそのまま付けることができる(例:ここは長岡だて。)。
- や[終助詞]
- 上記「て」とほぼ同様、文尾につけて用いる。(例:何してんだいやー。)。
- こて[終助詞]
- 上記「て」と全く同じ。文尾に「や」を付ける場合もある。(例:そうだこってー。)(おかしいこてやー。)。
- 「ら」について
- 断定の助動詞「だ」の変形(例:「嫌だ」→「嫌ら」「そうだろう?」→「そうらろ?」)。
- 「ろー」について
- 推量の助動詞「だろう」の短縮形(例:へぇ来るろー。)。
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語彙
以下の語彙は長岡弁固有のものとは限らない。他の方言(新潟弁等)と重複、あるいは共通する語彙を含む場合もある。
- あがる[ラ五動詞]
- (学校から)下校する、の意。
- あっちゃい、あっちぇー [形容詞]
- 熱い、暑いの意。物理的な温度の高さを表し、性格や感情を表す場合には用いない。(対:しゃっこい)
- おっかかる[ラ五動詞]
- 寄りかかる、の意。
- おっぱなす[サ五動詞]
- 放っておく、放置する、の意
- が [終助詞]
- 上記文法の項を参照。
- かしがる[ラ五動詞]
- 傾く、の意。
- きーもむ[マ五動詞]
- 心配する、の意。
- くらっしゃい、くらっしぇ、くんなさい、くんなせ[助動詞]
- 下さい、の意。
- けつまづく[カ五動詞]
- 勢いよくつまづく、の意。
- こすい[形容詞]
- ずるい、の意。
- こて[終助詞]
- 上記文法の項を参照。
- さーさー[間投詞]
- そろそろ、の意。
- しゃぐ/しゃぎつける [ガ五動詞/カ下一動詞]
- なぐる、たたくの意。活用はほとんどしない。
- しゃっこい、はっこい、ひゃっこい [形容詞]
- 冷たい、の意。物理的な温度の低さを表し、性格を表す場合には用いない。(対:あっちゃい)
- すけ、すけに [接続詞]
- 「~から」「~だから」の意。理由を表す。
- ずる[ラ五動詞]
- 動く、の意。
- せがきれる
- 息が切れる、の意。
- せつない
- 悲しい,辛い,苦しい,参った,困ったなど不愉快系感情。「おやまぁせつねー」など。
- そ(ー)いが [慣用語]
- 上記「が」の用例で、特に使用頻度の多い語。「そうなのだ」、の意。
- そろっと、よろっと [副詞]
- そろそろ、の意。
- 静かにゆっくり、慎重にの意。「そろーっと」と長音を含む場合が多い。
- だまかす[サ五動詞]
- 騙す、の意。
- たまげる[ラ五動詞]
- 驚く、の意。
- ちっと、ちっとばか(し)[副詞]
- 少し、の意。
- て [終助詞]
- 上記文法の項を参照。
- でんぐりがえる[ラ五動詞]
ひっくり返る、の意。
- とぶ[バ五動詞]
- 走る、の意。
- なじら [慣用語]
- 相手の調子やある物事に対する評価を求める。「~はどうですか」に当たる。語尾に「ね」を付ける場合が多い。
- なんぎい[形容詞]
- 具合が悪い、の意。
- 馬鹿~[助詞]
- 強調表現。すごく、の意。
- 冷やかす[サ五動詞]
- 食器(ご飯茶碗など)を水に浸す、の意。
- ぶちゃる [ラ五動詞]
- 捨てる、の意。不要なものを破棄する、放置するという意で用い、「希望を捨てる」等思いをなくすといった意では用いない。
が、「そんげん甘い考えはぶちゃれ」(そんな甘い考えはお捨てなさい)等、物として考える場合はこの限りではない。
- 古しい[形容詞]
- 古い、の意。
- へぇ[副詞]
- もう、の意。(例:へぇ帰る時間だすけ。)。
- (リンゴが)ぼける[ラ五動詞]
- リンゴが古くなるって美味しくなくなる、の意。
- まぁんで[間投詞]
- ああ、本当に、の意。
- もぐす[サ五動詞]
- 沈める、の意。
- 燃す[サ五動詞]
- 燃やす、の意
- も(ん)じゃくる [ラ五動詞]
- くしゃくしゃに丸める、の意。
- や[終助詞]
- 上記文法の項を参照。
- やっこい [形容詞]
- 柔らかい、軟らかいの意。物理的なやわらかさを表し、穏やかや融通が利くといった意味では用いない。
- よむ[マ五動詞]
- 熟れる、の意。
- あっため返し
- 再放送、の意。
- 一緒くた
- 混ざっている、の意。
- いっぺこと
- 沢山、の意。
- 嘘んこ
- 真剣でない、本物でない、の意。
- おめさん
- 貴方、の意。
- おめった
- お前たち、の意。
- おった
- 落ちた、の意。
- お寺さん
- お寺の住職、の意。
- かんじん
卑しい、の意。
- けむ、けぶ
- 煙、の意。
- げっぽ
- ビリ、最下位、の意。
- 豪儀(ごうぎ)
- 大変、すごい、の意。
- しょーしい
- 恥ずかしい、の意。
- しょったれ
- だらしがない、の意。
- せぼんこ
- 猫背
- のめしこき
- 面倒くさがり、の意。
- よした
- 子供に対して、「よくやった」と言う時に用いる。必ず「よしたよした」と2回言う。
- わさ
- 悪さ、の意。
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参考文献
- ^ 金田一春彦監修『新明解日本語アクセント辞典』三省堂、2001年 ISBN 4-385-13670-X