第一海軍卿
”First Naval Lord”及び”First Sea Lord”と称される役職は、イギリス海軍における武官の最高のポストである。1771年にファースト・ネーバル・ロード (First Naval Lord) が設けられ、1868年にファースト・シー・ロード (First Sea Lord) と改称されたが、役割は同じであり、日本語では両者とも第一海軍卿と訳される。ファースト・ロード (First Lord of the Admiralty) が「第一海軍卿」と訳されることもあるが、こちらは「海軍大臣」或は「海軍卿」と訳されるのが一般的であり、「第一海軍卿」と表記されていれば通常「ファースト・ネーバル・ロード」又は「ファースト・シー・ロード」のことを指す。政治家と幹部級の官僚及び軍人で構成される海軍本部委員会 (Admiralty Board) の一員であり、同委員会に於ける制服組のトップである。日本海軍の軍令部総長やアメリカ海軍の海軍作戦部長に相当する。1964年に海軍省、陸軍省、航空省が国防省に統合されることとなり、海軍本部も国防省に吸収されたが、第一海軍卿の役職名は維持され現在も存続する。
海軍本部委員会の制服組メンバーには他に以下の役職者がいた。
- 第二海軍卿(人事担当)
- 第三海軍卿(軍備担当)
- 第四海軍卿(補給・衛生担当)
- 第五海軍卿(海軍航空隊担当)
歴代第一海軍卿
ファースト・ネーバル・ロード(1771年-1868年)
- サー・ジョージ・コックバーン 1828年-1830年
- サー・トマス・ハーディ 1830年-1834年
- ジョージ・ヘニッジ・ダンダス 1834年 *
- チャールズ・アダム 1834年
- サー・ジョージ・コックバーン 1834年-1835年
- サー・チャールズ・アダム 1835年-1841年
- サー・ジョージ・コックバーン 1841年-1846年
- サー・ウィリアム・パーカー (準男爵) 1846年
- サー・チャールズ・アダム 1846年-1847年
- ジェームズ・ホイットレー・ダンダス 1847年-1852年
- モーリス・フィッツハーディンジ・バークレー 1852年
- ハイド・パーカー 1852年-1854年
- モーリス・フィッツハーディンジ・バークレー 1854年-1857年
- サー・リチャード・サンダース・ダンダス 1857年-1858年
- サー・ウィリアム・マーティン 1858年-1859年
- サー・リチャード・サンダース・ダンダス 1859年-1861年
- サー・フレデリック・グレイ 1861年-1866年
- サー・アレグザンダー・ミルン 1866年-1868年
ファースト・シー・ロード(1868年-1964年)
- サー・シドニー・ダクレス 1868年-1872年
- サー・アレグザンダー・ミルン 1872年-1876年
- サー・ヘイスティングス・イェルヴァートン 1876年-1877年
- ジョージ・ウェルズリー 1877年-1879年
- サー・アシュレイ・クーパー・キー 1879年-1885年
- サー・アーサー・フッド 1885年-1886年
- ジョン・ヘイ卿 1886年
- サー・アーサー・フッド 1886年-1889年
- サー・リチャード・ハミルトン 1889年-1891年
- サー・アンソニー・ホスキンス 1891年-1893年
- サー・フレデリック・リチャーズ 1893年-1899年
- ウォルター・カー卿 1899年-1904年
- サー・ジョン・アーバスノット・フィッシャー 1904年-1910年 *
- サー・アーサー・ニヴェット・ウィルソン 1910年-1911年
- サー・フランシス・ブリッジマン 1911年-1912年
- プリンス・ルイス・バッテンバーグ 1912年-1914年 *
- フィッシャー卿 1914年-1915年 *
- サー・ヘンリー・ジャクソン 1915年-1916年
- サー・ジョン・ジェリコー 1916年-1917年
- サー・ロスリン・ウェミス 1917年-1919年
- デヴィッド・ビーティ (ビーティ伯爵) 1919年-1927年
- サー・チャールズ・マッデン 1927年-1930年
- サー・フレデリック・フィールド 1930年-1933年
- チャットフィールド卿 1933年-1938年
- サー・ロジャー・バックハウス 1938年-1939年
- サー・ダドリー・パウンド 1939年-1943年 *
- アンドリュー・カニンガム (カニンガム・オブ・ハインドホープ子爵) 1943年-1946年
- サー・ジョン・カニンガム 1946年-1948年
- ブルース・フレーザー (フレーザー・オブ・ノース・ケープ男爵) 1948年-1951年 *
- サー・ロードリック・マグリガー 1951年-1955年
- ルイス・マウントバッテン (マウントバッテン・オブ・バーマ伯爵) 1955年-1959年 *
- サー・チャールズ・ラム 1959年-1960年
- サー・キャスパー・ジョン 1960年-1963年
- サー・デヴィッド・ルース 1963年-1964年
ファースト・シー・ロード(First Sea Lord) 1964年-
- サー・デヴィッド・ルース 1964年-1966年
- サー・ヴァリル・ベグ 1966年-1968年
- サー・マイケル・ル・ファヌ 1968年-1970年
- サー・ピーター・ヒル=ノートン 1970年-1971年
- サー・マイケル・ポロック 1971年-1974年
- サー・エドワード・アシュモア 1974年-1977年
- サー・テレンス・レウィン 1977年-1979年
- サー・ヘンリー・リーチ 1979年-1982年
- サー・ジョン・フィールドハウス 1982年-1985年
- サー・ウィリアム・ステイヴリー 1985年-1989年
- サー・ジュリアン・オズワルド 1989年-1993年
- サー・ベンジャミン・バサースト 1993年-1995年
- サー・ジョック・スレイター 1995年-1998年
- サー・マイケル・ボイス 1998年-2001年
- サー・ナイジェル・エッセナイ 2001年-2002年
- サー・アラン・ウェスト 2002年-2006年
- サー・ジョナソン・バンド 2006年-2009年
- サー・マーク・スタンホープ 2009年-[1]
脚注
- ^ “First Sea Lord and Chief of Naval Staff”. イギリス国防省. 2012年4月8日閲覧。
関連文献
- 小林幸雄『図説イングランド海軍の歴史』原書房、2007年。