生命存在指標

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生命存在指標英語: biosignature)は生命の兆候を観測するために用いられる各種の指標のことである。

名称

英語のbiosignatureは「生命存在指標」と訳される。しかし、日本においてbiosignatureの定着した音写が存在しないため、日本天文学会の天文学辞典においては「バイオシグチャー」[1]アストロアーツのニュース記事内では「バイオシグチャー」[2]小学館が刊行する大辞泉においては「バイオシグチャー」[3]などと多数の表記ゆれが存在する。また「バイオマーカー」という表記が使用されることもあるが、疾病の存在やその進行度を予測するために使用されるタンパク質の濃度などのこともバイオマーカーと表現されるため、注意が必要である。[1]

本記事内では混乱を回避するため、天文学辞典に示された日本語訳の「生命存在指標」を使用する。

生命存在指標とされるもの

レッドエッジ

植物の多くは緑色に見える

植物の多くは緑色に見えるが、これは可視光領域において植物は光合成に必要な赤や青色の光を反射せず、不要な緑色の光を多く反射するためである。すなわち700nmの波長で急激に反射率が上昇したことが観測されたのならば、植物が存在する可能性が高くなる。

生物起源の物質

電子顕微鏡で観察された深海掘削計画において採集された微化石

過去に生命が存在したか、またどのような生物が存在したかを調査する際に、生物由来の物質や形状を観測することによって目的を達しようと試みられることがあり、これも生命存在指標の一つとして扱われる。

一つの例としては微化石ストロマトライトの存在が挙げられる。[4]その他にも核酸、脂質、タンパク質、アミノ酸、ケロゲンのような物質、岩石や堆積物で検出可能な様々な特徴など、様々な生命存在指標を生物は作り出すため、これらを観測することで生命の存在及び種類を同定することが可能となる。これらの例として、炭酸塩岩中のバクテリアが形成する細孔は、生物によらない形成と比較してサイズ、形状、パターンが異なることが挙げられる。[5]

隕石の一部にもこれらの特徴がみられることがあり、火星由来のALH84001隕石内に存在する磁鉄鉱は生物由来なのではないかと議論された。[6][7]しかしながら、2019年にこの磁鉄鉱は生物由来と考えると小さすぎるという意見が出され[8]、現在では単なる形状だけでは生命発見のツールとして利用できないというコンセンサスがとられている。[9][10][11]

脚注

  1. ^ a b バイオシグナチャー”. 天文学辞典. 日本天文学会. 2020年7月12日閲覧。
  2. ^ “地球大気の歴史を紐解いて系外惑星の生命を探す”. アストロアーツ. (2018年2月26日). https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/9742_biosignature 2020年7月12日閲覧。 
  3. ^ デジタル大辞泉. バイオシグニチャー. コトバンクより2020年7月12日閲覧
  4. ^ Reading Archaean Biosignatures”. NASA (2008年7月30日). 2014年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月23日閲覧。
  5. ^ Bosak, Tanja; Souza-Egipsy, Virginia; Corsetti, Frank A.; Newman, Dianne K. (2004). “Micrometer-scale porosity as a biosignature in carbonate crusts”. Geology 32 (9): 781. Bibcode2004Geo....32..781B. doi:10.1130/G20681.1. 
  6. ^ “Chains of magnetite crystals in the meteorite ALH84001: evidence of biological origin”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 98 (5): 2176–81. (2001-02). doi:10.1073/pnas.051514698. PMC 30112. PMID 11226212. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC30112/. 
  7. ^ “Truncated hexa-octahedral magnetite crystals in ALH84001: presumptive biosignatures”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 98 (5): 2164–9. (2001-02). doi:10.1073/pnas.051500898. PMC 30110. PMID 11226210. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC30110/. 
  8. ^ McSween, Harry Y. (2019), “The Search for Biosignatures in Martian Meteorite Allan Hills 84001”, in Cavalazzi, Barbara; Westall, Frances, Biosignatures for Astrobiology, Advances in Astrobiology and Biogeophysics, Springer International Publishing, pp. 167–182, doi:10.1007/978-3-319-96175-0_8, ISBN 9783319961750 
  9. ^ Garcia-Ruiz, Juan-Manuel Garcia-Ruiz (199-12-30). “Morphological behavior of inorganic precipitation systems – Instruments, Methods, and Missions for Astrobiology II”. SPIE Proceedings. Instruments, Methods, and Missions for Astrobiology II Proc. SPIE 3755: 74. doi:10.1117/12.375088. "It is concluded that "morphology cannot be used unambiguously as a tool for primitive life detection."" 
  10. ^ Agresti; House; Jögi; Kudryavstev; McKeegan; Runnegar; Schopf; Wdowiak (2008年12月3日). “Detection and geochemical characterization of Earth's earliest life”. NASA Astrobiology Institute (NASA). オリジナルの2013年1月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130123132429/http://astrobiology.ucla.edu/pages/res3e.html 2013年1月15日閲覧。 
  11. ^ “Evidence of Archean life: Stromatolites and microfossils”. Precambrian Research 158 (3–4): 141–155. (2007-04-28). Bibcode2007PreR..158..141S. doi:10.1016/j.precamres.2007.04.009. http://www.cornellcollege.edu/geology/courses/greenstein/paleo/schopf_07.pdf 2013年1月15日閲覧。. 

関連項目

外部リンク