物質量

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物質量
amount of substance
量記号 n
次元 N
種類 スカラー
SI単位 モル (mol)
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物質量(ぶっしつりょう)は、1971年に国際単位系の7番目の基本量に定められた量で、アボガドロ定数 (6.022 141 29(27)x1023) を単位とした物質の量である。物質、すなわち原子、分子、イオン、電子などあるいはこれらの集合体からなる不連続構造をもつ単位粒子から構成されるが、物質量はそれら単位粒子の数を非常に大きな数を単位として示したものを意味する[1]。物質量の単位はモル(mol)である。表記する場合は、量記号はイタリック体のn 、量の次元の記号はサンセリフローマン体の N が推奨されている[2]

つまり、単位粒子Xの個数をN(X)、アボガドロ定数をNAとすれば、物質量n(X)は次の式となる。

N(X)は個数という無次元量であり、n(X)は物質量の次元[N]を持つので、アボガドロ定数の次元は物質量の逆数[N-1]となり、その単位はモルの逆数(mol-1)となる。

アボガドロ定数の値や、その詳細は「アボガドロ定数」の記事を参照のこと。また、物質量の歴史および単位の定義については「モル」の記事を参照のこと。

要素粒子について

物質量(ぶっしつりょう)は不連続構造をもつ単位粒子を指定しないと意味がないため、物質名の指定だけでは曖昧となることが多い。たとえば窒素分子〈二窒素, dinitrogene〉は分子を単位粒子とみなすと1個であっても、原子を単位粒子とすると2個の原子として識別される。したがって常温〈273.15K〉、常圧〈101,325Pa〉で22.41410(19)x10-3m3〈約22.4リットル〉の窒素ガスには二窒素分子であれば1molが、窒素原子であれば2mol含まれる。

また二塩基酸である硫酸が一酸塩基である水酸化ナトリウム中和する場合には硫酸の2個の水素はそれぞれ1分子の水酸化ナトリウムと反応するのて1molの硫酸は水素イオンの物質量としては2molとなる。

あるいはモノマーユニットの繰り返しからなる高分子化合物では、モノマーユニットを単位粒子とした物質量の場合と高分子の分子自体を単位粒子とした物質量が共に使われるので、両者は正しく識別する必要がある。

単位粒子を明示しない場合は、多くの場合分子が単位粒子とされる。しかし金属など不連続構造を持たない物質では原子やイオン対が単位粒子として扱う場合もある。このように単位粒子を誤解される余地がある場合は、分子式〈例えば分子式:H2O、イオン式:H+など〉を示すなどして単位粒子を明示する必要がある。

この様に単位粒子の識別には幾分かの任意性がある。詳細はモルの記事を参照のこと。

歴史的な単位

物質量を表す歴史的な単位として以下に挙げるようなものがあるが、計量法ではモルのみの使用しか認めていないことから、MSDSのような公示文書や商品の計量表示ではモル以外の表記は推奨されない。

  • グラム原子:単体の物質量を表す単位で、原子1molを含む単体が1グラム原子である。例えば窒素14.01gは1グラム原子になる。
  • グラム分子:分子を形成する物質の物質量を表す単位で、分子1molを含む物質が1グラム分子である。例えば窒素14.01gは0.5グラム分子になる。
  • グラムイオン:イオンの物質量を表す単位で、イオン1molが1グラムイオンである。例えば塩化ナトリウム58.44gにはナトリウムイオン1グラムイオンと塩化物イオン1グラムイオンが含まれる。
  • グラム式量:分子を形成しないような物質の物質量を表す単位で、その物質の組成式1molを含む物質が1グラム式量である。例えば塩化ナトリウム58.44gは1グラム式量になる。
  • グラム当量:中和反応や酸化還元反応に関与する物質の物質量を表す単位で、水素イオンあるいは電子1molを放出あるいは受容する物質量が1グラム当量である。例えば硫酸98.08gは2molの水素イオンを放出するから2グラム当量である。1グラム当量の物質を含む1Lの溶液の濃度が1規定である。

理想気体の場合、1molの占める体積は1気圧、0℃下において22.4Lである。

参考文献

  1. ^ 物質量, 『理化学辞典』、第5版、岩波書店
  2. ^ 国際単位系(SI)国際文書第8版(2006) 1.3

外部リンク

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