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汝平和を欲さば、戦への備えをせよ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」(なんじへいわをほっさば、いくさへのそなえをせよ、Si vis pacem, para bellum)は、ラテン語の警句である。通常、「peace through strength」、すなわち「敵に攻撃される可能性の少ない強い社会」を意味すると解釈される。

出典

この格言の出典は明らかになってはいない[1]。 しかし一般的には、ローマ帝国軍事学者ウェゲティウスIgitur qui desiderat pacem, praeparet bellum. から引用されたものだとみなされている[2]。 390年ごろに書かれたとされる彼の論文「軍の問題に関して( Epitoma rei militaris )」に基づく数多くの格言の1つだと言われる。 この句が書かれているのは、軍事行動において準備を万全にしておくことの重要性を強調し、単なる偶然や数の優勢に頼ることをいましめた一節である。

「したがって、平和を願う者は、戦争の準備をせねばならない。勝利を望む者は、兵士を厳しく訓練しなければならない。結果を出したい者は、技量に依って戦うべきであり、偶然に依って戦うべきではない[3]。」

現代における解釈

ナポレオン神格化アンドレア・アッピアーニ画、1807年。
1901年に開発された9mmパラベラム弾。「パラベラム」(Parabellum)という名は、この拳銃実包を開発したドイツの兵器企業DWM(ドイツ武器弾薬工業)が、「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」(Si vis pacem, para bellum)を社のモットーとしていたことによる

いずれにしろ、格言はそれ自体が独立して活用されるようになり、いくつかの言語に翻訳されて、さまざまな考えを表すのに使われるようになった。ウェゲティウスの実際の言葉を、多くの著作家は認めてさえおらず、彼らは、格言は直接彼のものであると考えている。

Si vis bellum para pacem

例えば、ナポレオン・ボナパルト外交政策に関して、歴史家ブーリエンヌは次のように述べている[4]

「誰しもが格言を知っている……ボナパルトはラテン語学者であり、おそらく格言を逆さにして……Si vis bellum para pacem. と言ったのであろう。」

戦争をしようというのであれば、平和をはぐくむことで他国を油断させねばならない、という意図であろう。 逆に言えば、平和に備えることは戦への道につながるとも言えるのである。

Si vis pacem para pactum

軍備によって軍事力を阻止し、平和を確保しようという考え方は、20世紀に不吉な転機を迎えた。 おそらく単に準備するだけでは充分ではなかったのだろう。 戦争を阻止するためには、戦争をすることが必要になったのである。 アンドリュー・カーネギーに統轄された1907年の National Arbitration and Peace Congress では、この問題について取り上げている。

「これら陸海の巨大な軍備は、戦争を行う手段ではなく、戦争を防ぐ手段である……より安全な道もある……必要なのは政府の承認と親善だけだ。昨今、平和を望むなら軍備を、と言う。この議会は、人々のために言う、Si vis pacem, para pactum、平和を望むなら、平和維持に賛同してください[5]。」

脚注

  1. ^ 例えばダフ(Duff ,1899 )は、起源が明らかでないからと「それらしい」古典の著書を羅列し、「もっともふさわしいのはウェゲティウスだ」と記述している。
  2. ^ Book III, prologue, end.
  3. ^ "Igitur qui desiderat pacem, praeparet bellum; qui uictoriam cupit, milites inbuat diligenter; qui secundos optat euentus, dimicet arte, non casu." The Latin Library
  4. ^ De Bourrienne, p.418.
  5. ^ Bertholdt,p.333

外部リンク