村野井均

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村野井 均(むらのい ひとし 1953年 - )は、日本心理学者茨城大学名誉教授(特任教授)。専門は、発達心理学メディア・リテラシー。子どものテレビ映像理解について研究し、映像メディアの果たす役割を考察した著作がある。

経歴[編集]

1953年(昭和28年)、岩手県盛岡市生まれ。1978年(昭和53年)、東京教育大学教育学部心理学科を卒業。その後、筑波大学心理学研究科を経て、1984年(昭和59年)から弘前学院大学一般教育部講師。1988年(昭和63年)から福井大学教育地域科学部助教授となり、2005年(平成17年)に茨城大学教育学部教授に就任した。2019年(平成31年/令和1年)、いわき短期大学幼児教育学科長を経て、茨城大学名誉教授。2021年(令和3年)から茨城大学教育学部特任教授を務める。

テレビ番組やCMが、乳幼児の心理に与える影響に関心を持ち、初語の研究調査に取り組んだ[1]。その後、子供が映像(テレビ)を読み取るためには、国語の読み取りと同じ能力が必要なことを示した。具体的には、1、映像と音声を正しく組み合わせることで、誰が何を話しているか理解する[2]。2、段落に気づくことで、場面や話者の変化がわかり、ストーリーをつなげることができる[3]。3、時制(回想シーンや想像シーン)が変わるときに、映像や音の手がかりに気づき、ストーリーをつなげることができる[4][5]等である。

日本には子供向け番組が豊富にあり、制作者が段落分けや時制にワイプやフレームなど見て分かる手がかりをつけ続けてきた。番組制作者が子供のテレビ理解を助けてきた、つまりメディア・リテラシー教育の役割を果たしてきたという理論を提唱した[6]

音と光しか出さないテレビだが、視聴者に味や香りの感覚を引き起こすこともできるとし、暗示(suggestion)の効果や使い方の解説を心理学の立場から行っている[7]。また、ザッピング(Zapping)、フリッピング(Flipping)などの視聴行動の解説も行っている。

著作[編集]

単著[編集]

  • 村野井均『子どもの発達とテレビ』かもがわ出版、2002年、140頁。ISBN 9784876996759 
  • 村野井均『子どもはテレビをどう見るか-テレビ理解の心理学』勁草書房、2016年、207頁。ISBN 9784326299126 

共著[編集]

  • 青山征彦・茂呂雄二編 『スタンダード 学習心理学』サイエンス社、2018年
  • 茨城大学教育学部学校教育教室『教育の最新事情と研究の最前線』福村出版、2018年
  • 小川哲哉・村野井均・生越徹・杉本憲子編著『ICT教育の理論と実践』青簡舎、2015年
  • 乾昭治監修、田代光一、宇野秀夫、村野井均、大野木裕明編著『学校で拓くメディアリテラシー』日本文教出版、2002年

論文[編集]

  • 村野井均 (2018). “児童の時制理解にNHK教育テレビが果たした役割-「さわやか3組」の時制表現の分析-”. 茨城大学教育学部紀要(教育科学) (茨城大学教育学部) 67: 605 - 617. NAID 120006395496. 
  • 村野井均; 藤井とし子 (2016). “幼児向け番組におけるテレビを3次元に見る手がかりの分析”. 茨城大学教育実践研究 (茨城大学教育学部附属教育実践総合センター) 35: 279 - 287. NAID 40021017291. 
  • 「高齢者のテレビ理解から映像の受け手について考える」『視聴覚教育』、財団法人日本視聴覚教育協会、2016年
  • 「視聴覚メディアを問い直す―「わかる」のために(第8回)子どものテレビ理解と視聴覚メディア」『視聴覚教育』、財団法人日本視聴覚教育協会、2010年
  • 「子どものテレビ理解と視聴覚メディア」『視聴覚教育』、財団法人日本視聴覚教育協会、2010年
  • 「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)における人間関係の形成」、平成20年度文教協会助成研究報告書
  • 「みんなテレビディレクター -「発信マイスクール」放送100校記念報告書- 」、福井大学教育地域科学部附属教育実践総合センター、福井県視聴覚教育研究会、福井県教育工学研究会、NHK福井放送局編、福井大学教育地域科学部附属教育実践総合センター・福井大学教育地域科学部、2005年
  • 村野井均; 高橋孝幸; 佐藤美希  (2001). “学校と放送局が協力して児童・生徒の映像作品を放送する試み -NHK福井放送局「発信マイスクール」-”. 茨城大学教育実践研究 (福井大学教育地域科学部附属教育実践総合センター) 26: 171 - 179. NAID 40005568986. 
  • 「オンライン授業の心理学 -児童が就学前に獲得している視聴能力-」、『茨城大学全学教育機構論集』、5号、73-84頁、2022年

脚注[編集]

  1. ^ 「初語のころ―乳幼児のテレビ視聴の特徴とそばにいる人間の関係」『発達』通巻第19号、ミネルヴァ書房、1984年7月25日発行、ISBN 4-623-01550-5 、79-87頁
  2. ^ 村野井均; 宮川祐一 (1995). “NHK教育『できるかな』におけるナレーターの認識”. 教育メディア研究 (日本教育メディア学会) 2 (1): 28 - 38. NAID 110000074818. 
  3. ^ 村野井均「10章 『ドラえもん』の段落分けの3大道具」『子どもはテレビをどう見るか-テレビ理解の心理学』勁草書房、2016年、175‐184頁。 
  4. ^ 村野井均「9章 アニメ『サザエさん』の理解」『子どもはテレビをどう見るか-テレビ理解の心理学』勁草書房、2016年、141‐174頁。 
  5. ^ 村野井均「児童の時制理解にNHK教育テレビが果たした役割-「さわやか3組」の時制表現の分析-」『茨城大学教育学部紀要(教育科学)』第67巻、茨城大学教育学部、2018年、605 - 617頁、NAID 120006395496 
  6. ^ 村野井均『子どもはテレビをどう見るか-テレビ理解の心理学』勁草書房、2016年10月初版発行、ISBN 978-4-326-29912-6
  7. ^ 村野井均「睡眠がかかる仕組みとその誘導法」『茨城大学教育学部紀要』(教育学科)、67号、2018年、619-631頁 

外部リンク[編集]