数理ファイナンス

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数理ファイナンス(すうりファイナンス、英語:mathematical finance)は、証券市場数理モデルを作り、その中で証券価格がいかに決定されるかというメカニズムを研究する学問。ブラックショールズらの理論により急速に発展した。証券価格はある確率微分方程式に従うという定式化をするため、理解するには高度な確率論の知識が必要であるとされる。

伝統的な経済学では価格需要供給によって決まるとしているのに対し、数理ファイナンスでは一物一価の法則(無裁定価格理論)を基本的仮定として用いる。しかしこれらは矛盾するものではない。例えばブラック-ショールズモデルにおいては、株価と債券価格がすでに与えられたものとして、デリバティブの価格を導く。ところがこの株価の水準がなぜその値なのかということは一切語っていないのであり、無裁定原理の枠組みでは決定できない。そこには伝統的な経済学やCAPMなどの理論が必要となるのである。

複製の概念

価格のわからない金融商品を、価格のわかっている金融商品で複製する。それによって元の金融商品の価格が無裁定原理によって求まる、というのが数理ファイナンスの基本的な考え方である。この意味で数理ファイナンスにおける「価格」という概念は極めて明瞭な意味を持つことになる。それゆえ数学的な解析が可能となるのである。

完備市場と非完備市場

数理ファイナンスにおいて最も基本となるブラック-ショールズモデルは、債券という2つの価格のわかっている証券を用いて、任意のデリバティブ(株に関するものに限る)の複製を行う。このように、すべてのデリバティブが複製可能なとき、市場は完備であるといわれる。一方で、複製できない商品が存在する市場を非完備市場と呼ぶ。完備なモデルにおいては、無裁定原理からすべてのデリバティブの適正価格が求められるが、非完備なモデルの場合は複製できない商品に関しては無裁定原理とは別の方法によらなくては価格を定義することができない。

関連項目