幼虫

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幼虫(ようちゅう)は、昆虫において、から産まれて成虫になるまで(の期間がある場合はそれ以前)の間の成長過程のものを指す。動物全般の場合、幼生(ようせい)という言葉を使う。ただし、この言葉は一般には通りがよくないので、昆虫以外の動物、特に昆虫と混同しやすい陸の節足動物(クモ類、多足類など)にも「幼虫」を使う場合がある。

一般的特徴

一般的な幼虫と成虫の違いは、大きさが小さいこと、がないか又はごく小さいこと、生殖器が未発達であること、脱皮して大きくなることである。形や性質は成虫とほぼ同じものから全く異なるものまで様々である。

幼虫と成虫がほとんど同じ姿のものはコムシなど原始的な昆虫では普通で、バッタなども幼虫と成虫がかなり似た姿と生活をしている。しかし、はっきりと異なる姿のものも多く、完全変態をするものは大抵大きく異なる。不完全変態のものであっても、トンボのように幼虫が水棲の例やセミのように地中生活の例など、はっきりと異なった姿と生活を持つ例が少なくない。昆虫において、このように親と子が異なった生活をすることは、親子間での競争を避ける意味があるものともいわれている。

幼虫は脱皮しながら大きくなるが、成虫までの脱皮回数は種によって決まっている。幼虫の成長段階は脱皮回数によって表し、孵化直後の幼虫を一齢幼虫、一回目の脱皮後の幼虫を二齢幼虫などと言う。ただし成虫、あるいはになる直前の幼虫は終齢幼虫ともいう。また、成虫になる時の脱皮を特に羽化(うか)という。

完全変態と不完全変態

昆虫は一般に幼虫と成虫で形をかえる。これを変態という。

トビムシ目など原始的な昆虫では幼虫も成虫も翅を持たず、幼虫と成虫とはほとんど姿が変わらない。これを無変態や微変態という。

それ以外の昆虫では、幼虫はを持たないものの、成虫になると翅が現れる。この時、幼虫の体の表面に翅の芽が出ているものと、翅の芽が体内にあって外から見えないものがある。

前者では、例えばバッタのように、幼虫の胸部背面に小さな羽の形があり、成虫への脱皮の際に翅が大きく伸びる。また、このような昆虫では、幼虫は成虫の構造と比較的よく似ていることが多い。このような昆虫の変態を不完全変態という。

後者では、多くの場合、幼虫と成虫は形が大きく異なる。例えばチョウのように、幼虫の背中には全く翅の形は見えない。実際には体内に翅の芽があるが、それが外に出るのは、成虫になる脱皮のもう1つ前で、この時、成虫の体を小さくまとめたような形になり、しばらくは餌も取らず、ほとんど動かないで一定時間を過ごす。この時期のことを(さなぎ)といい、このような昆虫の変態を完全変態という。

不完全変態の場合

不完全変態の昆虫では、幼虫は成虫とほぼ同じ構造をもつ。したがって、例えばバッタのように、幼虫と成虫とが同じ生活をするものもある。しかし、不完全変態の昆虫のすべてで幼虫が成虫と同じ生活をするわけではなく、セミのように成虫は地上、幼虫は地中で生活するもの、トンボや、カゲロウのように成虫は陸生、幼虫は水中生活というものもある。幼虫が成虫とは異なる生活をする昆虫の幼虫は、成虫とは全く異なった生活をするために、例えばセミの幼虫の前足が強い鎌状になっていたり、トンボやカゲロウの幼虫が水中で呼吸するための仕組みを備えていたりと、幼虫が成虫にはない構造を持っているものもある。

不完全変態の昆虫における幼虫では、胸部背面に小さな翅の芽がある。この翅の芽は、幼虫の間は僅かずつ大きくなるだけで、成虫になる脱皮の時に急に大きくなる。例外はカゲロウ目のもので、水中生活の幼虫は羽化して空を飛ぶ姿になるが、もう一度脱皮して真の成虫になる。この、真の成虫になる前の姿を亜成虫という。

完全変態の場合

完全変態の昆虫では、幼虫は成虫の姿になるのが蛹の段階であり、この段階で体内の大改造を行うため、幼虫は、いわば成虫の形にこだわらない姿をしている。例えばチョウの幼虫であるイモムシなどは、摂食に特化し、それ以外の能力は最低限に削り落としたともいえる。あるいは、多くの昆虫では、細長く大きな腹部を幼虫が持っているので、この形態を昆虫の祖先の形質に近いものとみなす判断もある。また、その腹部を支えるために腹部やその末端に足のようなものを持つものも多い。

成虫にある、胸部の3対の付属肢は幼虫にもある場合が多いが、ハエウジハチの幼虫のように、それをも退化させているものもある。幼虫の運動性が低い種では、成虫が、産卵を幼虫の生活する場へ行うなど、一定程度、幼虫の保護に関与する行動をとるものが多い。

特殊なものとしては、幼虫の間にその姿を何度か大きく変えるものがある。例えばツチハンミョウは、ハナバチの巣に寄生する。ハチの巣にたどり着くのは一齢幼虫で、ハチの背に乗って餌にたどり着くためにしっかりした足を持っているが、たどり着いた後は足を失ってイモムシ状になる。このように、幼虫の中でも段階によって大きく姿を変えるものを過変態(かへんたい)ということがある。

特に名を持つ幼虫

次のようなものは、成虫とは別にその名で呼ばれるものである。

画像

完全変態

不完全変態

関連項目