密漁

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密漁(みつりょう)とは、国際間の協定や法令や漁業者間のルールを犯して魚介類をとること。陸上の動物を不法に採取することは密猟と書き分けて区分する。

主な密漁の形態

  • 免許または許可を得ずに漁業を行った場合
  • 禁漁や禁止漁法を定めた各種法令に違反した場合
  • 漁業権を侵害した場合

密漁の取締り

密漁の取締りを所掌とする官庁は、水産庁である。水産庁漁業監督官または、都道府県漁業監督吏員がその任を負っている。また水産資源の保護については、各都道府県の水産課などが担当している。海上保安庁や警察は、水産庁に協力する形で、密漁者の取締りを行う。 過去には地元漁師が自主的に密漁者を監視し、現行犯逮捕するケースも多かったが、暴力事案に発展する場合も多いため、行政機関の立会いのもとに取締る場合が増えている。

密漁で検挙された場合は、懲役3年以下または200万円以下の罰金が課せられる。

国外での密漁

国際法では、水産資源の排他的占有は国土から200海里以内で認められる。また各国政府の交渉により、中間線が設けられケースもある。これらの設定区域を越えての漁業は密漁となる。水産資源の争奪を巡っては、海軍が出動したケースもあり、外交問題にも成りえる。

国内での密漁

アワビサザエなどの稚貝を放流し養殖を行っている海域では、スキューバーダイビングや小型ボートを用いて密漁が行われる。密漁の規模こそ小さいが、被害額は一件につき数百万円から数千万円にのぼることも珍しくない。背景には、密漁した海産物を組織的に売りさばく暴力団や、密漁された魚介類であっても平気で仕入れるブラック企業の存在があるといわれる。また、密漁を行う実行犯は、漁業者、つまりプロの漁師が大半である。経済的に困窮した漁師が禁漁期間中に収入を得るため、密漁を行って暴力団に転売するケースが多い。しかし、密漁に手を染める漁師がいる一方では、密漁の情報を海上保安庁や警察に提供し、日本の海の護りに協力している善良な漁師も多い。密漁事件の多くは、善良な漁師からの情報提供によって検挙に結びついている。

日本国の国内での密漁取締りの法的根拠は漁業法海上保安庁法にある。水産庁や各都道府県の漁業取締船、海上保安庁の巡視船、巡視艇、各都道府県警察の警察用船舶が、第一義的に取締りを行っている。水産庁では、密漁が多発している特定の海域で操業する漁協に対する「外国漁船被害等救済事業」や、漁師に対する「外国漁船被害等救済マニュアル」の配布を通じて、密漁の摘発に努めている。

密漁の法的問題

密漁に対する法的解釈は漁業者、遊漁者、水産庁、各都道府県水産課、海上保安庁、警察、裁判所、漁具小売店によって異なっている。

漁業者の主張
漁業者が自己の保有する漁場で漁業権を侵害されたならば、あらゆる水産物の捕獲が密漁と解釈している。ただし、漁業権の侵害として密漁を検挙する場合には、漁獲したものを販売して収益を得て、本来漁業者が得るはずであった収入を横領したこと、もしくはその意思を持ってなされたことが立証されることが必要である。また、漁場は個人の不動産としての法的扱いがなされることはない。
遊漁者の主張
漁業権の適用範囲は、国際協定間ならびに漁業者間に限ってのことであり、漁獲によって収益を得るわけでもない一般人が、天然の水産物を収集し、自らの食に供することを日本国憲法で作成された法律では罰することはできない。日本国憲法は、法の下の平等を基本としており、所有権、占有権が認められていない天然資源に対する排他的独占は許されていないとしている。

また、密漁は水産資源についての所有権や物権が認められていないため窃盗には該当しない。

水産庁による密漁取締の目的は、水産資源の保護や自然環境の保護の観点にある。その観点では漁業者の漁業権の行使の場合であれ、遊漁者の遊漁であれ、資源の枯渇や自然破壊につながる行為に規制が設けられている。

関連項目

外部リンク