ヴィーナスの誕生 (ブグロー)

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『ヴィーナスの誕生』
フランス語: La Naissance de Vénus
英語: The Birth of Venus
作者ウィリアム・アドルフ・ブグロー
製作年1879年
種類カンバス油彩
寸法300 cm × 217 cm (120 in × 85 in)
所蔵オルセー美術館パリ

ヴィーナスの誕生』(: La Naissance de Vénus, : The Birth of Venus)は、19世紀のフランスの画家ウィリアム・アドルフ・ブグローの有名な絵画作品のひとつである。

概要

これはギリシア神話の女神アプロディテヴィーナス)の誕生を主題としており、女神の海からの実際の誕生をではなく、完熟した女性として、海からキプロスパフォスまで貝殻に乗って移動する場面を描いている。彼女はミロのヴィーナスと同様に古代ギリシア・ローマの女性の姿と美の最も精妙な表現であると見なされている。

ブグローにとってこれは「力業」(tour de force)と見なされている。キャンバスのサイズは高さは300cm、幅は217cmである。

構図のみならず題材もまた、ラファエロ・サンツィオの『ガラテイアの勝利』や、この先行する解釈である、サンドロ・ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』と似ている。

沿革

『ヴィーナスの誕生』は1879年のサロンのために製作された。これはローマ大賞を受賞し[1]、国家によってリュクサンブール美術館のために購入された[2]。現在はパリオルセー美術館に所蔵されている。

記述

絵の中央では、ヴィーナスがホタテガイの貝殻のなかで裸で立っているが[3]、その貝殻をヴィーナスの象徴のひとつであるイルカがひっぱっている。

クピードーおよびプシューケーをふくむ15人のプットと、いくたりかのニュンペーらとケンタウロスらが、ヴィーナスの到着を目撃するべく集まっている。大部分の人物は彼女を見つめていて、そしてケンタウロスのうち2頭は巻き貝とトリトンのほら貝を吹奏して彼女の到着を知らせている。

ヴィーナスは、女性の美とセクシュアリティーの具現化であると見なされていて、そしてこれらの特徴は絵の中に示されている。[3]ヴィーナスの頭部は片方に傾き、そして彼女の顔の表情は穏やかで、自分の裸に満足している。彼女は両腕を上に挙げ、[4]大腿部までの褐色の髪をととのえている。彼女は揺れて優雅にS字カーブのコントラポストをなし、自分の身体の女性らしい曲線を強調している。[5]

ヴィーナスのモデルは、リーニュ(Ligne)のプリンセスであるマリー・ジョルジーヌ(Marie Georgine, 1843年 - 1898年)であった。1861年に、彼女は双子の恋人(貴族ではない)とともにパリで短期休暇中であった。彼らは一緒に彼の『プシューケーの誘拐』(Abduction of Psyche)と『フローラとゼピュロス』(Flora and Zephyr)のモデルを務めた。

ブグローは彼女たちを自身が撮影した写真から晩年にほかのスケッチと絵を入念に仕上げた。『夜』のような、ブグローの他の作品のうちのいくつかも、彼女をモデルにしていた。

マリーもまたレオン・ボナによって描かれた。彼女はまたアントワーヌ=サミュエル・アダム=サロモン(Antoine Samuel Adam-Salomon、1802年 - 87年)によってド・ラ・ロシュフコー夫人(madame de la Rochefoucauld)として写真撮影された。

ヴィーナスの姿は(前年の)1878年に完成したブグローの『ニュンペーたち』のニュンペーから拡大された。このニュンペーはよりほっそりとしていて、そして彼女の乳房はより豊かにかつより丸くなっている。ヴィーナスのコントラポストはより強烈であり、そして彼女の髪もまたニュンペーのよりもより長くかつより軽いが、彼女がそれを整えている様子はほとんど同一人物であるようである。

絵の上左には、雲に影がある。それは、頭部、片方の肩、片腕、そしてどうやら絵筆を持っているらしい上に挙げられた握り拳のある画家のシルエットに見える。[3]

脚注

外部リンク