ヤコビ和

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。新規作成 (会話 | 投稿記録) による 2017年1月30日 (月) 05:43個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎参考文献)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

数学におけるヤコビ和(ヤコビわ、: Jacobi sum)とは、ディリクレ指標によって形成されるある種の指標和英語版のことを言う。簡単な例として、ある素数 p を法とする二つのディリクレ指標 に対するヤコビ和 は、次のように定義される。

ここで和は p を法とする全ての剰余 a = 2, 3, ..., p − 1 についてなされる(したがって a と 1 − a のいずれも 0 とならない)。ヤコビ和はベータ関数の有限体における類似物である。このような和は円分の理論との関連で19世紀初頭にヤコビによって導入された。ヤコビ和は一般に、ガウス和 の冪乗の積へと分解できる。例えば、指標 が非自明であるとき、 となるが、これはガンマ関数についてのベータ関数の公式と似たものである。非自明なガウス和 の絶対値は p1/2 であるため、指標 が非自明であるなら、 の絶対値もまた p1/2 となる。ヤコビ和 J は、非自明なガウス和 が属する円分体よりも小さい円分体に属する。例えば の被加数には 1の p 乗根は含まれないが、1 の (p − 1)-乗根の円分体に属する値が含まれる。ガウス和のように、ヤコビ和は円分体における素イデアル分解がわかっている。このことについてはシュティッケルベルガーの定理英語版を参照されたい。

ルジャンドル記号である時は、 となる。一般にヤコビ和の値は、対角形式英語版局所ゼータ関数との関連で現れる。ルジャンドル記号に関するヤコビ和の結果は、p 個の元からなる有限体上の射影直線である円錐断面上の点の数 p + 1 に対する公式を導く。1949年のアンドレ・ヴェイユの論文は、この議論に再び多くの注目を集めるものであった。実際、20世紀後半のハッセ=ダベンポートの関係により、ガウス和の冪の性質は再び現代的な話題となっている。

一般のヤコビ和による対角超曲面に対して局所ゼータ関数を記述できる可能性を指摘するとともに、Weil (1952) はヤコビ和のヘッケ指標としての性質を示した。 これはアーベル多様体の虚数乗法が確立されるとともに、重要な概念となった。問題におけるヘッケ指標は、例えばフェルマー曲線英語版ハッセ・ヴェイユのゼータ函数を表現する際に必要となるものであった。それらの指標の導手については、Weil によって未解決問題とされていたが、後の研究によってそれらは決定された。

参考文献

  • B. C. Berndt, R. J. Evans, K. S. Williams, Gauss and Jacobi Sums, Wiley, 1998.
  • S. Lang, Cyclotomic fields, Graduate texts in mathematics vol. 59, Springer Verlag 1978. ISBN 0-387-90307-0. See in particular chapter 1 (Character Sums).
  • André Weil, Numbers of solutions of equations in finite fields, Bull. Amer. Math. Soc. 55 (1949), 497–508.
  • André Weil, Jacobi sums as Grössencharaktere, Trans. Amer. Math. Soc. 73 (1952), 487–495.