メルー峰

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メルー峰
メルー峰の左から右の3つのピーク:南峰、中央峰、北峰。 シャークス・フィン(サメのひれ)は中央の広い雪斜面のすぐ左にある。
標高 6660 m
所在地 Gangotri国立公園, ウッタラーカンド州, インド
位置 北緯30度52分5秒 東経79度1分56秒 / 北緯30.86806度 東経79.03222度 / 30.86806; 79.03222
メルー峰の位置(インド内)
メルー峰
メルー峰
プロジェクト 山
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メルー峰(Meru Peak)は、インド ウッタラーカンド州にあるガルワール地方のヒマラヤ山脈の山である。タレイ・サガーとシブリン峰の間にあり、非常に難しいルートがいくつかある。「メルー」という名前は、タミール語の原始語である背骨を意味し、山の形を指していると考えられる。標高は、6,660メートル (21,850 ft) である。2006年6月に、グレン・シングルマンとヘザー・スワンは、メルー峰の6,604メートル (21,667 ft)地点から、当時の世界最高記録(Earthから)となるベース・ジャンピングをおこなった。しかし、その後、 2013年にヴァレリー・ロゾフが、エベレスト北壁からのジャンプを行い記録を更新した[1] [2] [3]

メルー峰には、3つのピークがある:南峰(6,660メートル (21,850 ft))、中央峰(6,310メートル (20,700 ft) )、北峰(6,450メートル (21,160 ft))。 2つの高いピークは、もっとも難しい中央峰よりも早く登頂されている、すなわち、2001年にヴァレリー・ババノフがソロ登山で最初に登り[4]、さらに2006年には他のチームで2回目の登頂[5]、そして2011年には「シャークス・フィン」ルート沿いで初めて登頂した。

シャークス・フィン・ルート[編集]

メルー中央峰への1400メートル[6]の直登ルートは、「シャークス・フィン(Shark's Fin、サメのヒレ)」を越え、北東の石柱 に続いている、この北東壁の巨大な特徴ある花崗岩[7]には、「船首(prow)」、「刀(blade)」、「鼻(nose)」といったように名前が付けられている[8] 。中央峰の頂上近くで最高度のロック・クライミング技術を要するという点が、その登頂難度を並外れたレベルに増大させている、つまり、重い登山用具類をすべて運び上げる必要があるということである。この登攀ルートは、「ヒマラヤ全体で最も登頂が試みられ、最も征服が望まれたルートの1つ」および「大岩壁登山の最後の残課題の1つ」と言われてきた[9]

このルートは、アプローチとして、700mの雪の斜面と岩の斜面を2日間かけ登った後に始まる[8]。次は、難度A4の登攀技術を要する「インド洋の壁(Indian Ocean Wall)」と呼ばれる急勾配のオーバーハングである 。これに続いて、「クリスタル・ピッチ(Crystal Pitch)」があり、このオーバーハングはエイド・クライミングを必要とする。最後のセクションでは、ミックス・クライミングとエイド・クライミングを組み合わせ登攀する。

ルート制覇の試み[編集]

1986年にアメリカ人のマグス・スタンプが挑戦したが、低斜面での雪崩により阻止された。1988年に彼は再び挑んだが、長い雪嵐に打ち負かされた[10]

1993年、ポール・プリチャード、ジョニー・ドーズ、ノエル・クレーン、デイブ・ケンダル、フィリップ・ロイドの英国チームが重大な挑戦を行った。このとき、ドーズが登山ブーツを紛失、その後に大きく滑落するトラブルが発生し失敗に終わった[6]

1990年代にも、さらに失敗は続いた、この中には米国有数の高山登山者の一人であるスコット・バックスが含まれる[10]。1997年、ニック・ブロック、ジュール・カートライト、ジェイミー・フィッシャーは、6,100mまでの高さの登攀を達成した[6]

ピート・タケダとデイブ・シェルドンは、1998年、1999年、2001年と3回試みたが、すべて失敗した[11]

2001年、ロシアのヴァレリー・ババノフは、ルート下部の5,800mまで登攀した。さらに、彼は別のルートを経由して、中央峰に登頂したが、同年に[7] そのルートは「シャングリラ(Shangri-La)」[6]として知られるようになった。メルー中央峰が、ルートにかかわらず、登頂されたのはこれが初めてであった[12]

2003年、アメリカ人のコンラッド・アンカー、ダグ・シャボット、ブルース・ミラーが壁の下部まで登攀した後、ルートをそれて氷壁の溝に変更しようとするも、最終的に引き返した[7]

2004年、日本の遠征は、事故によりチームメンバーの1人が負傷したため、失敗した。同じチームが2006年に再び試みたが、登頂するためにシャークス・フィン・ルートを回避した[10]

2006年10月、チェコの登山家マレック・ホレセクとヤン・クライシンガーはこのシャークス・フィン・ルートを試みたが、登頂を成功させるため、より簡単なルートを選び、尾根を途中で離れた[13]

2008年には、チームのコンラッド・アンカー、ジミー・チン、レナン・オズタークは、頂上まであと2ピッチ(150m)以内にまで迫ったが、引き返さざるを得なかった。彼らは激しい嵐に遭い、ポータレッジ(崖に吊るすテント)で4日間足止めされ、食料を使い果たした[8]

2009年、スロベニア人シルボ・カロ 、マルコ・ルキッチ、アンドレイ・グルモフセクは、岩壁の根元で方向転換し、ルート挑戦に失敗した、不十分なギア、順応性の低さ、アルパインスタイルのアプローチが要因であった[8]

初めての成功は、コンラッド・アンカー、ジミー・チン、レナン・オズタークにより、2011年10月に達成された[14]、このメンバーは、さきの2008年に登頂にあと少しまで迫ったチームと同じである。レナン・オズタークは、スキー事故で深刻な脊椎頭蓋骨の負傷を負ったが、そのわずか5か月後にこの登頂をおこなった[15] 。彼らは、ポータレッジの破損、オズタークのケガの後遺症である「軽度の発作」といったトラブルを克服した[16]、成功の主な要因として天気に恵まれたことが挙げられる[8]ギネス世界記録でもメルー中央峰のシャークス・フィン・ルートにおける最初の登頂と認められた[17]。彼らは8日目に山頂に到着し[10] 、それから下山に3日かかった[18]

2015年、長編ドキュメンタリー映画『MERU/メルー』が公開された、コンラッド・アンカーのチームによる2008年と2011年の2つの挑戦が記録されている。それは、元々あとに残すために、ジミー・チン、レナン・オズタークが撮影した映像を含んでいる[18]

参照[編集]

  • MERU/メルー 日本公式サイト、シャークス・フィン・ルート登攀の2015年のドキュメンタリー映画

参考文献[編集]

  1. ^ Reuters (2013年5月29日). “Everest: Valery Rozov records world’s highest base jump – video”. 2017年9月25日閲覧。
  2. ^ Leap from the top of the world”. The Sydney Morning Herald (2006年6月8日). 2011年10月20日閲覧。
  3. ^ Blog by one of the BASE Jump climbing team Archived copy”. 2011年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年1月22日閲覧。
  4. ^ Meru Peak: The Gate to the Sky”. The Himalayan Club (via Internet Archive) (2002年). 2011年10月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月20日閲覧。
  5. ^ Japanese Climb Meru Before Czechs”. alpinist.com (2006年11月20日). 2011年10月20日閲覧。
  6. ^ a b c d India's Shark's Fin finally climbed”. www.thebmc.co.uk. 2018年7月2日閲覧。
  7. ^ a b c Journal, The Outdoor (2015年8月6日). “Himalaya's Hardest Climb - The Shark's Fin on Meru Central” (英語). The Outdoor Journal. https://www.outdoorjournal.com/focus-2/himalayas-hardest-climb-the-sharks-fin-on-meru-central/ 2018年7月2日閲覧。 
  8. ^ a b c d e Shark's Fin Full Report - Alpinist.com”. www.alpinist.com. 2018年7月2日閲覧。
  9. ^ Bailey, Mark (2017年6月1日). “Jimmy Chin: why climbing Meru Peak is tougher than Everest” (英語). The Telegraph. ISSN 0307-1235. https://www.telegraph.co.uk/health-fitness/body/jimmy-chin-why-climbing-meru-peak-is-tougher-than-everest/ 2018年7月3日閲覧。 
  10. ^ a b c d “Conquering the Himalaya's Shark's Fin: The First to Climb Mount Impossible” (英語). Men's Journal. (2014年7月9日). https://www.mensjournal.com/features/conquering-sharks-fin-the-first-to-climb-mount-impossible-20140709/ 2018年7月2日閲覧。 
  11. ^ Marmot Athlete Pete Takeda | Marmot US” (英語). www.marmot.com. 2018年7月2日閲覧。
  12. ^ Meru Peak” (英語). The Armchair Mountaineer. 2018年7月2日閲覧。
  13. ^ MERU'S SHARK'S FIN REMAINS UNCLIMBED - Alpinist.com”. www.alpinist.com. 2018年7月2日閲覧。
  14. ^ Shark's Fin Full Report”. alpinist.com (2011年10月17日). 2011年10月20日閲覧。
  15. ^ Kurt, Alex (2015年11月13日). “Climber Renan Ozturk On Injury, Setbacks & Persistence” (英語). GearJunkie. https://gearjunkie.com/climber-renan-ozturk-injury 2018年7月2日閲覧。 
  16. ^ “Climbing Film ‘Meru’ Wins Audience Choice at Sundance”. (2015年2月1日). https://www.nationalgeographic.com/adventure/adventure-blog/2015/02/01/climbing-film-meru-wins-audience-choice-award-at-sundance-interview-with-filmmaker-renan-ozturk/ 2018年7月3日閲覧。 
  17. ^ American explorers recognised by Guinness World Records for completing the first ever ascent of Meru Peak Shark's Fin”. guinnessworldrecords.com (2016年10月6日). 2016年10月13日閲覧。
  18. ^ a b “9 Facts About Climbing Mount Meru—And Making a Documentary Out of It” (英語). (2015年8月14日). http://mentalfloss.com/article/67362/9-facts-about-climbing-mount-meru-and-making-documentary-out-it 2018年7月2日閲覧。