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ヒアルロン酸

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ヒアルロナンの構造。2種類のが交互に連結している。

ヒアルロン酸(ヒアルロンさん、hyaluronic acid)は、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種。学術上はヒアルロナン (hyaluronan) と呼ぶ。

物性

N-アセチルグルコサミングルクロン酸 (GlcNAcβ1-4GlcAβ1-3) の二糖単位が連結した構造をしている。極めて高分子量であり、分子量は100万以上になると言われている。コンドロイチン硫酸など他のグリコサミノグリカンと異なり、硫酸基の結合が見られず、またコアタンパク質と呼ばれる核となるタンパク質にも結合していない。

生体内では、関節硝子体皮膚など広く生体内の細胞外マトリックスに見られる。とりわけ関節軟骨では、アグリカン、リンクタンパク質と非共有結合し、超高分子複合体を作って、軟骨の機能維持に極めて重要な役割をしている。ある種の細菌も同様な構造を持つ糖鎖を合成している。

ヒアルロン酸は、悪性胸膜中皮腫腫瘍マーカーであり、胸水でのヒアルロン酸の検出はこれを示唆する。早老症において尿中ヒアルロン酸濃度が高くなる。

生産

鶏冠(とさか)、臍帯などから良質のヒアルロン酸が単離されるが、最近では乳酸菌連鎖球菌により大量生産される。

利用

関節炎や角結膜上皮障害の治療薬、白内障・角膜移植手術時における前房保持剤として利用するほか、過酸化水素水と混ぜ合わせたものをがん放射線治療増感剤として用いたり、化粧品などに保湿成分として添加する。

また、ヒアルロン酸入り化粧水を利用したシャボン玉液がある[1]。これはヒアルロン酸の保水力や粘性の大きさに着目したもので、割れにくいシャボン玉になる。毛糸の手袋や軍手を使用すると、弾ませることができる。

経口摂取

人体の水分維持に貢献しているヒアルロン酸だが、それを補うとして、健康食品サプリメントとしてヒアルロン酸の経口摂取を謳った商品(いわゆる「飲むヒアルロン酸」)が存在する。ヒアルロン酸の経口摂取によるヒトでの有効性については、皮膚の水分量増加[2]および膝関節痛改善効果[3]とそのメカニズム[4]が報告されている。

ヒアルロン酸の基本構造はグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの2糖が直鎖上に交互に結合した繰り返し構造であり、その結合はβ-1,3グリコシド結合およびβ-1,4グリコシド結合で、ヒアルロニダーゼによって加水分解されることが知られている[5]

経口摂取されたヒアルロン酸は腸管から吸収される。吸収されたヒアルロン酸及びヒアルロン酸の代謝物の一部は皮膚や関節の結合組織に移行して、各組織で利用された後、肝臓で代謝され排出される[6][7]。 また、健康食品に配合されることもある。但し経口で摂取した場合は、関節疾患改善作用は無いものと医学的には考えられている。これは関節軟骨には血管が存在せず、消化管から吸収された成分が関節内に移行することが原理的に不可能なため。

また、ヒアルロン酸は、既存添加物として厚生労働省に認められている[8]。安全性についてはLD50 2400 mg/kg/day以上 (マウス、経口投与)[9] 、変異原性試験の陰性[10]が確認されている。

脚注

  1. ^ 吉田のりまき「シャボン玉を弾ませよう」『RikaTan』2007年4月号、28-29頁、星の環会
  2. ^ 「乾燥肌に対するヒアルロン酸含有食品の臨床効果」梶本修身ら, 新薬と臨牀, 50(5), p548 (2001)
  3. ^ 「経口ヒアルロン酸[ヒアベスト(J)]による変形性膝関節症に対する有効性の検討」佐藤稔秀ら, 新薬と臨牀, 57(2), p260 (2008)
  4. ^ Akira A, et Al,Oral Administration of High Molecular Weight Hyaluronan (900 kDa) Controls Immune System via Toll-like Receptor 4 in the Intestinal Epithelium, J. Biol. Chem., 285, 24751-24758 (2010)
  5. ^ 南山堂、医学大辞典、第19版、p.2040「ヒアルロン酸」(2006)
  6. ^ 平成19年9月20日付、府食第903号、内閣府食品安全委員会
  7. ^ Balogh L, et Al, Absorption, uptake and tissue affinity of high molecular weight hyaluronan after oral administration in rats and dogs, J. Agric. Food Chem., 56(22),10582-93 (2008)
  8. ^ 既存添加物の安全性評価に関する調査研究, 林裕造, 平成8年厚生科学研究報告書, p82 (1996)
  9. ^ United States National Library of MedicineHyaluronate Sodium
  10. ^ 「ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の変異原性試験」,大西瑞男ら, 薬理と治療, 20(3),p767 (1992)