デヴィッド・アール・ニコルズ

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デヴィッド・アール・ニコルズ
生誕 (1944-12-23) 1944年12月23日(79歳)
ケンタッキー州コビントン
居住 アメリカ合衆国
市民権 アメリカ合衆国
研究分野 医薬化学、薬理学
研究機関 パデュー大学インディアナ大学医学部英語版
主な業績 5-HT2A受容体英語版ドーパミン受容体幻覚剤構造活性相関英語版の広い研究、MDMAの神経毒性やMDMA類縁体の研究
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デヴィッド・アール・ニコルズ(David Earl Nichols、1944年12月23日 - )は、アメリカ合衆国医薬化学者薬理学者である[1]

1969年以来、向精神薬の分野に取り組んできた。元パデュー大学・薬理学 Robert C. & Charlotte P. Anderson 著名学長[2]。 大学院生の頃、幻覚性アンフェタミン類英語版の光学異性体の生成に使う方法の特許を取得した。エスカリンLSZ英語版6-APB英語版2C-I-NBOMe英語版や他のNBOMeシリーズ(NBOMe-2C-B英語版NBOMe-2C-CNBOMe-2C-D英語版)の合成と報告に貢献したほか、エンタクトゲン英語版という言葉を造語した。

ニコルズは、ヘフター調査研究所の創設所長である[3]。研究所の名前は、ペヨーテ・サボテン中から活性成分のメスカリンを初めて発見した薬理学者のアーサー・ヘフター英語版に由来する。

2004年には、国際セロトニンクラブよりアーウィン・H・ページ講師に任命されたし、ポルトガルでは「35年の幻覚剤の研究:長く奇妙なトリップ」と題された講演を行った。薬理学者の間で、世界的に有数の幻覚剤の専門家とみなされている。ニコルズの他の専門的な活動は、インディアナ州ウェストラファイエットのパデュー大学にて医薬化学と分子薬理学の教授であったことや[4]インディアナ大学医学部英語版で医学生に講義することであった。

教育[編集]

研究分野[編集]

ニコルズは今なお幻覚剤の学術的な研究を行っている。彼がこれまでに執筆した分子構造と生物学的な効果の関係(よく構造活性相関英語版と呼ばれる)に関する科学論文や書籍の章は約250におよび出版されている。幻覚剤の薬物弁別にはラットモデルを用いて広く実施してきた[6]。ラットは薬物に効果があれば反応を示した[3]。彼は研究に主にラットを使い、シュルギンのPiHKALにて挙げられる多くの化合物は、実際にはニコルズの研究室で初めて合成された。この研究室では、放射性リガンドとして、[125I]-(R)-DOI英語版もまた初めて合成されている。21世紀初頭において、ニコルズは、LSDの化学と薬理学に関する正当な研究を発表してきた、稀有な人物の1人であり、ETH-LAD英語版PRO-LAD英語版AL-LAD英語版など、いくつかのLSDよりも強いLSDの類縁体(アナログ)を初めて報告した。それらの人での効果についてはTiHKALに記されている。

また、いくつかの最近の臨床研究で利用できるようにシロシビンの合成法を改良して合成し、またMDMAやDMTを合成し、サイケデリック・ルネサンスと呼ばれる現在の研究状況において、誰も引き受けたがらなかった合成を行った[7]

その他、注目に値する研究としては、MDAMDMAの構造活性相関と作用機序についての広範な研究が実行されるのを手助けしたことが挙げられ、同時に、5-メチル-MDA英語版4-MTA英語版MDAI英語版のような多くの新規の類縁体を発見するのを手伝った。1986年にはギリシャ語とラテン語に起源し「内部に触れる」という意味のエンタクトゲン英語版という言葉を作り、MDMAの作用を説明しようとした[3]。ニコルズが言うには、灰色市場の化学者たちは、ニコルズが1990年代に発表した4-メチルチオアンフェタミン英語版 (MTA) に関する論文の情報を用いて薬物を合成し、フラットライナーという俗称の錠剤をエクスタシーの代用品として売っていたという[8]

より最近では、ニコルズはドーパミンの研究における世界的指導者となり、彼のチームは、いくつかの注目されるドーパミン受容体リガンドを開発した。それは選択的D1英語版完全作動薬のジヒドレキシジン英語版や、パーキンソン病の治療にて研究されているジナプソリン英語版ジノキシリン英語版から誘導される他の何種類かのサブタイプ選択的ドーパミン作動薬である。ニコルズはDarPharma社の共同創設者となり、自身のドーパミン化合物を商業化している。彼のチームが開発した化合物のいくつかは、パーキンソン病や、統合失調症における認知と記憶の障害の治療のために臨床試験が行われている。[7]

デザイナードラッグ市場への影響[編集]

デザイナードラッグの生産者は、グレーマーケットで潜在的に価値のある化合物の情報についての科学文献を調べており、ニコルズの出版物は、新しいデザイナードラッグを生み出すのに「特に有用な」手引きだと形容している[9]。死亡例のいくつかはニコルズの研究室で発見された化合物に起因しているとされたこともあり、それを知ったニコルズは動揺し、しばらく落ち込んだ[10]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ The Heffter Review of Psychedelic Research, Volume 1, 1998 - 5. The Medicinal Chemistry of Phenethylamine Psychedelics by David E. Nichols, Ph.D.”. 2008年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月6日閲覧。
  2. ^ ニコルズのための出典ではなく、パデュー大学に他の人物の名前を冠した「著名教授」のような役職があるという出典。Distinguished and named professors, medal recipient honored in ceremony (Purdue University)
  3. ^ a b c ジョン・ホーガン 著、竹内薫 訳『科学を捨て、神秘へと向かう理性』徳間書店、2004年、207-208頁。ISBN 4-19-861950-6  Rational mysticism, 2003.
  4. ^ Department of Medicinal Chemistry and Molecular Pharmacology Personnel - David E. Nichols (Purdue University、2016年6月17日11:50更新) 2017年3月9日閲覧。
  5. ^ David E. Nichols, Ph.D., Robert C. and Charlotte P. Anderson Distinguished Chair in Pharmacology”. 2010年4月9日閲覧。
  6. ^ Renaud Jardri; Arnaud Cachia; Pierre Thomas; Delphine Pins (2012). The Neuroscience of Hallucinations. Springer. pp. 262–263. ISBN 9781461441205 
  7. ^ a b 2012-11. “The End of a Chemistry Era: Dave Nichols Closes Shop”. Erowid Extracts 23. https://erowid.org/culture/characters/nichols_david/nichols_david_interview1.shtml.  ドーパミン受容体リガンドについては、完全な出典ではないが大枠が合致している。
  8. ^ Sullum, Jacob (2011-01-06) If Only There Were Some Way to Discourage the Marketing of Dangerous Substitutes for Banned Drugs..., Reason
  9. ^ Whalen, Jeanne (2010年10月30日). “In Quest for 'Legal High,' Chemists Outfox Law”. The Wall Street Journal. 2013年9月10日閲覧。
  10. ^ Nichols, David (5 January 2011). “Legal highs: the dark side of medicinal chemistry”. Nature 469 (7). doi:10.1038/469007a. PMID 21209630. http://www.nature.com/news/2011/110105/full/469007a.html 2014年5月29日閲覧。. 

さらに読む[編集]

外部リンク[編集]