テフラ
テフラ(古代ギリシア語: τέφρα、英: tephra、ギリシャ語で「灰」の意)とは、アイスランドの地質学者シグルズール・ソラリンソンによって定義された語で、火山灰・軽石・スコリア・火砕流堆積物・火砕サージ堆積物などの総称。火山砕屑物とほぼ同義であるが、ある程度広く分布するものに用いられることが多い。狭義には降下したものを指す。
テフラの成因と呼称
火山が噴火して噴煙が上がった場合、その噴煙の中にはいろいろな大きさの粒子が含まれている。通常、噴煙は噴出の勢いで広がったり風に流されたりするので、その中の粒子は広い範囲に降下するが、大きい(重い)粒子は火口の近くに、小さい(軽い)粒子ほど遠くに落ちることになる。粒子の大きさと距離の変化は連続的で、しかも同一の噴火でできたものであるため、粒子の大きさだけで分類することには本質的な意味がない。また、噴煙柱の一部が崩壊して火砕流を発生することがあるが、その場合は同一の噴煙から火砕流堆積物と降下物の両方ができることになる(例:シラスと姶良Tn火山灰)。このように同時にできたいろいろな火山砕屑物はひとまとめに扱った方が火山噴火史や周辺の地質一般を調べる上で合理的であるため、総称してテフラと呼ばれるようになった。
広域テフラ
特に大規模な噴火が起こった場合、日本全国を覆うほどの規模で火山灰~軽石が降下し堆積する。このような降下テフラを広域テフラという。広域テフラは1回の噴火で形成されるため、地質年代の基準として重要である。
広域テフラを形成する噴火には大別して2種類あると考えられている。
- 陥没カルデラを形成する大噴火
- カルデラ周辺に広く火砕流堆積物が形成されると同時に、細粒物質が上空に吹き上げられ広い範囲に降り積もる。
- 大規模なプリニー式噴火
- カルデラを形成しない場合であっても、噴出物の量が多く上空まで吹き上げられると、偏西風に運ばれて広い範囲に降り積もる。火砕流を伴わないこともある。
日本上空では偏西風が吹いているため、広域テフラは噴出源から東に分布する傾向がある。
日本の代表的な広域テフラ
テフラ名:記号:噴出源:同時噴出の火砕流:年代の順に示す。
- 白頭山-苫小牧:B-Tm:白頭山:10世紀前半(941年頃)
- アカホヤ:K-Ah,AK:鬼界カルデラ:幸屋火砕流:7,300年
- 姶良Tn:AT:姶良カルデラ:入戸火砕流:25,000年
- 支笏第1:支笏カルデラ:支笏火砕流:4万年
- 大山倉吉軽石:DKP:大山:5万年
- 阿蘇カルデラ:Aso-4:阿蘇4火砕流:9万年
- 鬼界カルデラ:喜界葛原(きかいとづらはら)火山灰:KTz:9.5万年
- 御岳第1:Pm-1:御嶽山:なし:約10万年
- 阿多カルデラ:Ata:阿多火砕流:約10万年
- 洞爺カルデラ:Toya:洞爺火砕流:約11万年
- 白尾(びゃくび)層:77万2700年前、御嶽山の元になった古御嶽[1]。
- アズキ:猪牟田カルデラ:今市火砕流:約90万年
- ピンク:猪牟田カルデラ:耶馬渓火砕流:約100万年
脚注
- ^ “地球史に「千葉時代」命名なるか “金の杭”候補地視察”. TBS系(JNN). (2015年8月4日) 2015年8月5日閲覧。 [リンク切れ]。同サイトによれば、地球磁場反転の目印となる層。
参考文献
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関連項目