シン (メソポタミア神話)
シン(Sin)は、古代メソポタミアで信仰された月の神(男神)。シンはアッカド語の名前でありシュメール語ではナンナ(Nanna)と呼ばれる。シュメール人の都市ウルの主神でもあり、アッカド時代になるとメソポタミア諸王の王女がウルのナンナ女祭司に任じられるようになり(その初期の例としてサルゴン王の王女であり詩人でもあったエンヘドゥアンナが挙げられる)、また人名の一部としても用いられることが多くなっていった(アッシリア王センナケリブがよく知られる)。またウルと並んで、メソポタミア北部のハランも祭儀の中心であった。
エンリルの最初の子であり、母はエンリルの配偶神ニンリル。配偶神はニンガルで、子は太陽神シャマシュと金星神イシュタル。シンボルは三日月で、三日月に似た角を持つ雄牛と深い結びつきを持つとされた。
メソポタミアにおいてシンは月を司り、大地と大気の神としても信仰されていた。その性質から「暦を司る神」とされ、同時に月に由来する神に多い農耕神としての側面を持ち合わせていたと考えられる。
また、「暦の神」としてのシンは「遠い日々の運命を決める」力を持っていたとされ、彼の練る計画を知った神はいないとされる。
参考文献
- 『西洋神名事典』 新紀元社、1999年、113頁。
- 中田一郎 「シン」『世界大百科事典』第14巻、下中弘、平凡社、1988年 ISBN 4-582-02200-6。
- 前川和也 「ウル」『世界大百科事典』第3巻、下中弘、平凡社、1988年 ISBN 4-582-02200-6。