シャチー

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アイラーヴァタの上に乗る左がシャチー、右がインドラ

シャチーサンスクリット: Śacī)は、インド神話に登場する女神。アスラ阿修羅)の娘でインドラ帝釈天)の妻であるため、ヒンドゥー教における別名を「インドラーニー」という。

漢訳仏典では舎脂(しゃし)または舎支と音写されている。また仏教における帝釈天の人間時代における名前は憍尸迦(きょうしか)というので[1]「憍尸迦夫人」とも称される。逆に、帝釈天を舎脂鉢低(Śacīpati、シャチーの夫)とも呼ぶ[2]

慧苑慧琳は「舎支」を「設施」に改めた上で月の別名とするが、月を意味するŚaśinは別語であるから、これは誤りであるとされる。

概要

仏典では、舎脂は阿修羅族の王の娘であった。阿修羅王は帝釈天に舎脂を嫁がせたいと思っていた。が、帝釈天は待ちきれずとうとう舎脂を力ずくで奪い、凌辱した。それを怒った阿修羅王が帝釈天に戦いを挑むことになった。凌辱された後の舎脂は戦の最中であっても逆に帝釈天を愛してしまったことに阿修羅はさらに怒り(阿修羅神族に対する事実上の裏切りである)、争いは天界全部をも巻き込んでしまった。阿修羅は復讐に燃える悪鬼となってしまった。力の神である帝釈天に勝てる筈もなく敗れた阿修羅族はこれをきっかけに天界である忉利天と善見城から追放されてしまう(詳細は阿修羅の項を参照)。

ヒンドゥー教では、シャチーはアスラ神族ダーナヴァ族プローマンの娘である。やはりインドラに凌辱されるもののインドラを愛してしまう。プローマンはインドラとの戦いで敗れ戦死し、アスラ神族は追放される。そしてシャチーは天帝となったインドラ王の神妃となった。インドラとの間にジャヤンタを産んだ。シャチーはサプタ・マートリカー(七福神)で黄金の体を持つという。手には雷またはインドラ同様ヴァジュラを持つ。インドラ王不在の際に代理の王として就いたナフシャから邪心を抱かれるが貞淑を貫いたという。また怒りと嫉妬の女神ともされる。

脚注

  1. ^ 『涅槃経』巻33や『大智度論』巻56には、帝釈天が人間だった頃の名前は憍尸迦(きょうしか、Kauśika)であると説かれている。しかし、これはあくまで仏教上の説話であってヒンドゥー教の説話ではないことに留意願いたい。
  2. ^ 『雑阿含経』巻40

参考文献

  • 松村一男、平藤喜久子、山田仁史 編「神の文化史事典」白水社、2013、p262「シャチー」

関連項目