カルチノイド
カルチノイド(英: carcinoid)とは、神経内分泌細胞への分化を示す腫瘍のひとつである。小腸や大腸などの消化管や肺の気管支などの神経内分泌細胞が常在している粘膜内に発生することが多いが、膵臓、肝臓、腎臓、精巣、卵巣、胸腺、乳腺、前立腺など腺細胞が分布する臓器にもまれに発生する。
カルチノイド腫瘍は英語ではcarcinoidまたはcarcinoid tumorと表記され、まさに「癌もどき」(=carcinoma-like)な病理組織像や生物学的振る舞い(浸潤や転移能)を示すことがある。従って良性腫瘍とは言えず、境界悪性腫瘍(borderline malignancy)または転移が明らかな例では悪性腫瘍と同等の扱いとなる。セロトニン、ブラジキニン、ヒスタミン、プロスタグランジン、カテコールアミンなどのホルモン様物質・神経伝達物質を産生する。肺・気管支、胸腺、膵臓などのカルチノイドは副腎皮質刺激ホルモン、抗利尿ホルモン、ガストリンなどを分泌する。 診断のためには生検や切除材料の病理学的検査が必須で、腫瘍を構成する細胞の嗜銀性や好銀性を染色で確認したり、神経内分泌顆粒の構成分子であるクロモグラニンAやシナプトフィジンを免疫組織化学的に染色し陽性像を確認することで診断が確定する。
消化管カルチノイド
粘膜深層にあるKulchitzky嗜銀細胞が由来とされる。我が国では直腸、胃、十二指腸の順に多い。1cmを超えると転移巣がみられることが多い。