軍務車

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軍務車(ぐんむしゃ)は、太平洋戦争後の連合国軍占領時代に存在した、日本国有鉄道(国鉄)[注釈 1]客車の車種の一つ。特別軍用客車に用いられる特殊形式[注釈 2]用途記号は「ミリタリー」の頭文字。ただし車両称号規程に正式に存在するものではなく、1946年6月14日運輸公報達第327号で、運輸大臣名で「連合軍用のラジオ車、通信車、事務車、酒保車等特殊目的の客車に対して当分の間、名称「軍務車」記号「ミ」を使用する」とされ、この当分の間が1950年代後半まで続いた[1]。すべて改造車である[注釈 3]

スハ32系に属するもの[編集]

スハ32系に属するものは、次のとおりである。車両の詳細は、各系列の項目に譲る[注釈 4]

→のあるものは1949年6月11日の車両換算法改正で、重量記号が変更されたもの。左が以前、右が以後。→のないものはその改正を受けなかったもの。×→ の右はその改正以後に改造されたもの。形式名後の + は他系列にも同形式があるもの。

  • スミ30形→オミ30形(ラジオ車)
  • スミ31形→オミ31形(ラジオ車)
  • スミ32形(軍務車)
  • スミ33形→オミ33形(衛生車)
  • スミ34形→オミ34形 (特別車)+
  • オミ35形(酒保車・販売車)+
  • スミ40形(酒保車・販売車)
  • スミ41形(酒保車・販売車)
  • オミ42形(酒保車・販売車)
  • オミ43形(雑務車)
  • スミ43形(ラジオ車)
  • スミ44形→オミ44形(特別車)
  • ×→オミ45形(衛生車)+
  • スミ45形(衛生車)

オハ35系に属するもの[編集]

オハ35系に属するものは、次のとおりである[注釈 5]。形式名後の + は他系列にも同形式があるもの。

  • オミ34形(クラブ車) +
  • オミ35形(酒保車)+
  • スミ36形(酒保車)
  • オミ45形(衛生車) +
  • オミ46形(酒保車)

鋼製雑形に属するもの[編集]

鋼製雑形客車に属するものは次の通りである[注釈 6]。形式変更が激しいため、下記の要領で記述する。

  1. 形式変更履歴は左から右へ進む。()内は一時的形式。
  2. /のあるものは1948年12月9日の改番[注釈 7]で変更されたもの。
  3. →のあるものは1949年の車両換算法改正で、重量記号が変更されたもの。
  4. …のあるものは1953年6月1日の改正で変更されたもの。
  5. 〈〉内は改造種車の形式。
  • ホミ80形/ホミ800形…ホミ1800形 〈ワキ1〉 - 部隊料理車 (Troop Mess Car)
  • ホミ81形/ホミ810形…ホミ1810形 〈ワキ1〉 - 荷物車 (Baggage Car)
  • ホミ81形/ホミ815形…ホミ1820形 〈ワキ1〉 - 販売車 (Commissary Car)
  • (ホミ41形)ホミ82形/ホミ820形→ナミ820形…ナミ1830形 〈ワキ700〉 - 衛生車 (Laboratory Car)
    • ナミ1830は旧海軍省の所有で、国鉄が買い取るまで、継承した大蔵省私有車の扱いであったため、1958年度までワキに戻すのが遅れて最後に残った軍務車であった[2]。同年10月1日の配置表では品川区に所属。
  • ホミ83形/ホミ825形→ナミ825形 〈ワキ700〉 - 酒保車 (P.X. Car)
  • ホミ83形/ホミ830形→ナミ830形…ナミ1840形 〈ワキ1〉 - 荷物車
  • ホミ84形/ホミ840形…ホミ1840形 〈ワキ1〉 - 酒保車
  • ホミ85形/ホミ845形 〈ワキ1〉 - 酒保車
  • ホミ86形/ホミ850形 〈ワキ1〉 - 酒保車
  • ナミ870形…ナミ1870形 〈ワキ1〉 - 酒保車(電源・冷蔵車)
  • ナミ880形…ナミ1880形 〈ワキ1〉 - 酒保車(電源・冷蔵車)

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 前身は運輸省
  2. ^ 「特別軍用客車」には軍務車以外も含まれる。中村光司2006を参照。
  3. ^ 参考文献」の資料で見る範囲においてはすべて改造車と考えられる。
  4. ^ 本節の記述は原則としてRP778特集による。それ以外は特記する。
  5. ^ 本節の記述は原則としてRP750特集による。それ以外は特記する。
  6. ^ 本節の記述は原則として『鋼製雑形客車のすべて』により、それ以外は特記する。
  7. ^ 鋼製形式が付けられていたものを、雑形形式とした。

出典[編集]

  1. ^ 国鉄客車開発記 1950』、p.8。
  2. ^ 国鉄客車開発記 1950』、p.13。

参考文献[編集]

  • 藤田吾郎『鋼製雑形客車のすべて』ネコ・パブリッシング、2007年。 
  • 『国鉄鋼製客車史 第2編 スハ32(スハ32600)形の一族』 上、車両史編さん会。 
  • 『国鉄鋼製客車史 第2編 スハ32(スハ32600)形の一族』 下、車両史編さん会。 
  • 『国鉄鋼製客車史 第3編 スハ32(スハ32800)形の一族』 上、車両史編さん会。 
  • 『国鉄鋼製客車史 第3編 スハ32(スハ32800)形の一族』 下、車両史編さん会。 
  • 「特集・スハ32系 I」『鉄道ピクトリアル』、電気車研究会。 (No.777、2006年7月号)
  • 「特集・スハ32系 II」『鉄道ピクトリアル』、電気車研究会。 (No.776、2006年8月号)
  • 「特集・オハ35系 I」『鉄道ピクトリアル』、電気車研究会。 (No.748、2004年7月号)
  • 「特集・オハ35系 II」『鉄道ピクトリアル』、電気車研究会。 (No.750、2004年8月号)
  • 『国鉄客車開発記 1950』電気車研究会〈鉄道ピクトリアル アーカイブス セレクション (10)〉、2006年。 
    • 中村光司「鉄道公報に見る1950年代客車の興味」p.6-16。
    • 星晃「車両称号規定の改正に伴う客車の改番について」(初出:『鉄道ピクトリアル』1953年5-6月号 No.22-23) p.74-79。

関連項目[編集]