足もとに流れる深い川

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足もとに流れる深い川』(あしもとにながれるふかいかわ、原題:So Much Water So Close to Home)は、アメリカ小説家レイモンド・カーヴァー短編小説

概要[編集]

スペクトラム』1975年秋号に掲載された。短編集『怒りの季節』(キャプラ・プレス、1977年11月)に収録。

編集者のゴードン・リッシュによって、本作品は「70パーセント」の削除を受け[1]、短編集『愛について語るときに我々の語ること』(クノップフ社、1981年4月20日)に収録された。

短編集『愛について語るときに我々の語ること』の成功によりカーヴァーは一躍名声を得たが、オリジナルに戻すことを望んだ彼は、エッセイや詩や小説を集めた次の単行本『ファイアズ (炎)』(キャプラ・プレス、1983年4月14日)に削除前のバージョンを再収録した。『ファイアズ』バージョンは、生前に出版された精選作品集『Where I'm Calling From: New and Selected Stories』(アトランティック・マンスリー・プレス、1988年5月)にも収録された。

オリジナル原稿は2009年刊行の短編集『ビギナーズ』(ジョナサン・ケープ社)に収録された。

映画監督のロバート・アルトマンはカーヴァーの9つの短編と1編の詩をもとに『ショート・カッツ』(1993年)を作るが、本作品もその中のひとつに選ばれている。

翻訳者との関係および日本語版[編集]

翻訳者の村上春樹にとって、「足もとに流れる深い川」はカーヴァーと出会った最初の作品であり、また最初に訳した作品であった。村上は言う。

「僕がカーヴァーを最初に見つけたのは、たまたま The West Coast Fictions というアンソロジーを読んでまして、カーヴァーのところにきたら、もうそこのページだけが光り輝いているんです。ビリビリくるのね。そのときに読んだのは "So Much Water So Close to Home"、『足もとに流れる深い川』と訳したっけ。僕は読んでもう本当に胸が震えるぐらいびっくりしたんです。『これだ!』と思った」[2]

日本語版は『』1983年5月号が初出。ほどなくして村上が独自に編纂した短編集『ぼくが電話をかけている場所』(中央公論社、1983年7月25日)に収録される。

そのほか、『THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER 2 愛について語るときに我々の語ること』(同社、1990年8月10日)、『THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER 4 ファイアズ(炎)』 (同社、1992年9月10日)、『Carver's Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選』(同社、1994年12月7日)、『ビギナーズ』(中央公論新社、2010年3月30日)等に収録された。 

あらすじ[編集]

脚注[編集]

  1. ^ レイモンド・カーヴァー『ビギナーズ』中央公論新社、2010年3月30日、496頁。同書収録の「『ビギナーズ』のためのノート」(ウィリアム・L・スタル、モーリーン・P・キャロル)より。
  2. ^ 村上春樹・柴田元幸翻訳夜話文藝春秋、2000年10月、196-197頁。