超選択的気管支動脈塞栓術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
| ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。免責事項もお読みください。 |
超選択的気管支動脈塞栓術(ちょうせんたくてききかんしどうみゃくそくせんじゅつ)は、喀血に対する治療法である。カテーテルを用いて出血源である気管支動脈などを塞栓(コイルやゲル状物質などによって詰める)することにより止血するカテーテルインターベンションの1種である。
目次 |
[編集] 基本原理
気管支動脈が肺動脈に異常吻合(気管支動脈ー肺動脈シャント)を形成していることにより喀血が起こるとされており、出血源である気管支動脈を詰めてしまえば喀血は起きなくなるというのがこの治療法の基本コンセプトである。 実際には気管支動脈以外の動脈も、肺動脈とシャントを形成して出血責任血管となっていることも多く、これらをすべて同定し塞栓対象とすることが近年行われるようになっており、超選択的気管支動脈塞栓術という治療名称と乖離が生じてきてはいる。 こうした気管支動脈以外への動脈に治療対象を広げていることが治療成績の飛躍的改善につながっている。 なお脳や心臓においては血管が詰まると脳梗塞や心筋梗塞を発症することになるが、気管支動脈を塞栓しても気管支粘膜壊死や肺梗塞を起こさない理由は、肺循環が気管支動脈と肺動脈の二重支配になっており、気管支動脈の血流がなくなっても肺動脈からわずかな血流が保たれるためであると考えられている。 なお肺動脈から直接出血する場合もまれにあり、これに対してはこの治療法は無効であり肺動脈の塞栓が必要である。
[編集] 治療対象
気管支拡張症・特発性喀血症・肺結核後遺症・肺アスペルギルス症など、ほとんどの疾患の喀血治療に有効である。
[編集] 治療手技詳細
2ミリ弱の太さのカテーテルを、足の付け根または手首の動脈から挿入し、気管支動脈(通常は1mm程度であるが、喀血患者では拡張していることがほとんどである)にその先端を挿入する。造影剤を注入し、喀血に関与した血管である所見(拡張・蛇行・肺動脈へのシャントなど)が確認されれば、カテーテルの中に、さらに細いマイクロカテーテル(0.8mm程度)を通し、気管支動脈の中に進め、適切な部位で金属コイルやゲル状物質を気管支動脈内に留置し塞栓する。出血の原因となっている血管を詰めてしまうことにより止血をする方法である。
局所麻酔で実施され、所要時間は1時間から3時間程度である。
[編集] 有効性
かつては再喀血率が高いと考えられていたが、治療技術や治療デバイスの向上により、一時的止血のみならず永久的な止血が可能となってきている。
実施可能施設が少なく、また症例数や治療成績などについての施設間格差が大きい。呼吸器科と放射線科が共にある施設で実施されていることが多い。 有効率が高い疾患は特発性喀血症と気管支拡張症であり、最先端の施設では90数パーセントの治療成績が示されている。肺結核後遺症や肺アスペルギルス症は超選択的気管支動脈塞栓術の有効性が低く、かつてはこの治療法の対象外(適応外)とも考えられていたが、近年60%以上の止血率が報告されている。
再喀血があれば基本的には何度でも再施行が可能である。
[編集] 合併症
かつては前脊髄動脈を塞栓してしまうことによる脊髄虚血に起因する下半身麻痺が知られていたが、これはマイクロカテーテルを使用せずにカテーテルから直接塞栓物質を留置する旧来の方法によるものであり、マイクロカテーテルを使用した超選択的方法が普及することにより激減している。 この他にカテーテルによる血管損傷(内膜損傷・大動脈解離・気管支動脈穿孔・縦隔血腫など)や、脳梗塞などが報告されているが、基本的には安全な治療手技であると考えられている。

