肛門周囲腺腫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
肛門周囲腺腫の細胞診像

肛門周囲腺腫(: perianal gland tumor)とは高齢の去勢していない雄犬での発生が多い肛門周囲腺良性腫瘍

概要[編集]

肛門周囲腺は変形腺であり、主に肛門周囲、尾の基部に分布するが、大腿部包皮などにも認められる。ネコには肛門周囲腺は存在しない。肛門周囲腺腫はホルモン依存性であり、間質細胞腫を併発することが多い。適切な治療を行わなかった場合には、肥大した腫瘍の表面が破れて出血潰瘍、細菌感染を引き起こすことがある。肛門周囲腺腫の発生にはアンドロゲンが関与するため、雄犬では去勢により予防が可能であり、発生した肛門周囲腺腫も去勢により縮小することがある。治療は主として肛門周囲腺の外科的切除であり、未去勢であれば同時に去勢手術を行うことにより再発率を低下させることができる。外科的切除の他に化学療法凍結療法放射線療法などが有効である。雌犬での発生はほとんどないが、雄の肛門周囲腺腫の好発領域で認められる腫瘍はアポクリン腺癌などの悪性腫瘍が多い。肛門周囲腺癌はホルモン依存性ではなく、肛門周囲腺腫との鑑別は細胞診では困難であり、病理組織学的検査が必要である。肛門周囲腺腫と肛門周囲腺癌をまとめて肛門周囲腺腫瘍と呼ぶ。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 日本獣医内科学アカデミー編 『獣医内科学(小動物編)』 文永堂出版 2005年 ISBN 4830032006
  • 獣医学大辞典編集委員会編集 『新獣医学辞典』 チクサン出版社 2008年 ISBN 978-4885006548