海底宝探し

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海底宝探し
ジャンル アクションゲーム
対応機種 アーケード
開発元 長野文化機器
発売元 ナガノゲーム/ユニバーサル特機
ナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)
デザイナー 吉岡一栄
人数 1人
発売日 1980年2月
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海底宝探し』(かいていたからさがし)は、1980年に長野文化機器が開発したアーケードゲーム。キャッチコピーは「財宝か?死か?

概要[編集]

タイトーの『スペースインベーダー』(1978年6月リリース)の登場によってインベーダー系ゲームのブームが起き、ブロック崩し系の基板が市場にだぶつく形となっていた。特にナムコの『ジービー』(1978年10月リリース)の基板が市場に大量に存在した。そのため、ジービー基板の再利用を目的として、長野県でナムコのディストリビュータをしていた長野文化機器(通称:文化機器)と言うメーカーが開発した。基板の構成は、ナムコ純正のジービー基板に、文化機器側が制作したサブ基板を取り付けた形となる。

デザイナーは、文化機器の開発子会社で長野県でユニバーサルのディストリビュータをしていたユニバーサル特機(通称:K.K.特機)の吉岡一栄。ビデオゲームのデザイナーとしては同時期に『SOS』のデザインも手掛けたが、その後は遊技機および周辺機器の技術者としての仕事が主である。後に長野ローカルのベンチャー企業であるマイクロパック社の社長や、ユニバーサル(当時の社名はアルゼ)傘下時代のセタ取締役などを歴任した。

長野文化機器は、ビデオゲームのディストリビューターとなる以前は元々は長野県でジュークボックスのリースを主としていた会社で、ユニバーサルがまだ栃木県でジュークボックスのリースを主としていた時代からユニバーサルの岡田和生会長とは同じ業界の仲間のような近い関係にあり、ブロック崩し系ゲームが流行り始めた時期、ユニバーサルにビデオゲームをリリースさせるために文化機器の下に開発子会社としてK.K.特機を設立した。K.K.特機は、1977年にリリースされたユニバーサルのビデオゲーム処女作『スクラッチ』の時代から開発に関与してはいるが、ユニバーサルとの資本関係はなく、ユニバーサル本体から見た場合はあくまで社外のディストリビューターという位置づけである。ちなみにK.K.とは「Kabushiki Kaisha」の略。

長野文化機器の版は、長野文化機器の販売子会社であるナガノゲーム名義のものと、K.K特機名義のものが存在する。全国の販売はユニバーサル本体が行っていたようだ[1]。ユニバーサル本体から海外版として『Shark Treasure』というタイトルでリリースされる予定があったようだが、リリースが確認されていない(フライヤーのみ現存する[2]

『SOS』『ナバロン』とともに、『ジービー』再利用3部作の一つ。『SOS』と『海底宝探し』は文化機器の製作だが、『ナバロン』はナムコ謹製である。これとは別に、『ジービー』基板の改造として、『オジャマ虫』というゲームの存在も確認されている[3]。これも文化機器の製作らしい。

市場で安価に流通している基板を仕入れ、改造して高値でゲームセンターに卸すという、ある意味グレーな商売だったが、長野文化機器は長野県で最大手のナムコのディストリビュータだったということもあって、その辺は「なあなあ」で済まされ、事後でナムコに許諾を得ると同時に、ナムコにも逆ライセンスされた。そのため、ゲームにはナガノゲーム/K.K特機の版とナムコの版がある。文化機器で製作したサブ基板とは別に、ナムコ側で製作したサブ基板も存在し、ナムコ版(おそらくは深谷正一が再プログラムを手掛けた)はプログラムが若干手直しされている。『ドラゴンスピリット』のエンディングで表示される「THE HISTORY OF NAMCO GAMES」によると、『SOS』『ナバロン』とともに製作は1980年2月とのこと。もしゲームセンターで既に『ジービー』が稼働している場合、『海底宝探し』を新たに導入するより「改造屋」に頼んでコンバートしてもらうのが現実的である。(当時、インカムの落ちたゲームを改造して新鮮なゲームにしてくれる「改造屋」という商売が存在し、ゲームのディストリビュータまたはリース会社がこれを行っている場合があった。『インベーダー』の編隊の形が違う、『パックマン』の迷路の形が違うなど、元のゲームに毛が生えた程度の物が多く、「海賊版」として本家に訴えられた会社も多いが、『海底宝探し』はオリジナリティが高く、また『ジービー』基板の不良在庫を抱えたナムコと基板を買ってくれるディストリビュータとの力関係もあって、事後で許諾をもらえた上に「ナムコの歴史」にまで加えられた)

『ジービー』をデザインした岩谷徹によると、『ジービー』はリリース当初はインカムが高かったので、ナムコは基板を大量に製造したが、一般人には難易度が高すぎたようで、ゲーマーが飛びついた後はインカムが急激に落ち、そうなると誰も基板を買わなくなり、綱島のサービスセンターに基板の在庫が積みあがった。そのため、『ジービー』を救うために文化機器がナムコに持ち込んだということに公式の記録ではなっている[4]

なお、『ジービー』のインストが貼られた『ジービー』純正テーブル筐体に入った『海底宝探し』が(2017年現在)現存する。ゲームセンターに呼ばれた改造屋が、『ジービー』を筐体そのまま『海底宝探し』に改造したと想定される。パドルコントローラでの操作がとても難しい(頼めばレバーに交換してくれたが、もちろん別に料金がいるので、元の筐体をそのまま使ってるオペレーターもあった)。2017年現在、ゲームセンターの「ナツゲーミュージアム」で稼働している。

なお「文化機器」は2020年現在も現存し、長野県でユニバーサルのディストリビュータをしている。ちなみに1990年代に不良が多いことで長野で有名だった長野駅前地下のゲーセン「マカオ」を運営していたのも文化機器らしい(地上に移転後、「ドルフィン」(通称「駅ドル」)に名称を変更、ビデオゲーム全盛期から存続する長野駅前で最後のゲーセンだったが2022年に閉店)。

ゲーム内容[編集]

プレイヤーは潜水夫となり、2方向レバーで(『ジービー』筐体の流用版の場合はパドルコントローラで)左右の位置を決めて船から命綱を下ろす。命綱を下ろしながら、左右に行きかうサメを銛で倒すか(レバーまたはパドルコントローラの左右で打ち込む方向を決めるが、パドルは若干の「遊び」があるので操作が難しい)、ボタンを押すことで下降を一時停止してサメを避けるかしながら、海底に降り立つ。海底で左右に移動して埋まっている蛸壺の中に入って宝を回収する。

5つの蛸壺のうち、4つにはお宝が入っているが、1つはハズレで凶暴なウツボが入っている。アタリの壺に入ると、ボーナス得点をゲットした後にお宝を背負った潜水夫が現れ、命綱を引き上げて潜った時と同様の操作で船に帰還する。ハズレの壺に入るとミスとなり、ドクロのマークが表示され、船は空しく命綱だけを引き上げる。ハズレの位置は、文化機器版はランダムであるが、ナムコ版には電源パターンが存在している。電源パターンを見る限りでは、全25面である。100,000点でカウンタが一周して0点に戻る(電パさえ把握すれば運ゲーから実力になるので、カウンタ一周は難しくない)。

評価[編集]

運ゲーで100円吸われるため、「こんな理不尽な仕様が許されていいのか?いや、許されない」(見城こうじ・談[5])と、ゲーマーからの評価は低い。一方で、「ショッピングセンターのような小さな子供が多く集まる店の中では、その素朴でわかりやすいゲーム内容からか、末永く遊ばれる名機との評価を受けたところもあったという」と、見城は証言している。(ゲーマーがゲーセンで100円払ってプレイした場合と、小さい子供が駄菓子屋やショッピングセンターの50円・30円・10円筐体でプレイした場合では、評価が違ってくる例)

『ジービー』を救うという役目を果たしたので、ナムコおよび岩谷徹からは評価されている。

トリビア[編集]

デザイナーの吉岡一栄は、アルゼ時代に「バーコード偽造紙幣事件」に関連して『週刊ポスト』(2005年4月15日号)で「渦中の人」として取り上げられたことがある。

アルゼにヘッドハンティングされた理由は、近赤外線センサーを使った紙幣識別機(ビルバリ)を開発したことや、複数の特許を取得していたためであった。𠮷岡が「マースエンジニアリングの子会社ウインテックに組み立て製造を委託していたビルバリがパクられた」と主張していた頃である。

一方でマースエンジニアリングは「開発会社ウィンテックを通じてマイクロパックに特許料を支払った」と主張していたが、ウインテック側は「新規にビルバリの特許を取得したのでパクリではない」と主張、つまり「特許料を支払った」と主張した親会社マースエンジニアリングが嘘をついた結果となった。ウインテックの「新規のビルバリの特許」に関しては特許名称は確かに「紙幣識別機」となっているが、使っているセンサーのレベル補正であり、「紙幣識別機」の名称にそぐわないし新規性がないため特許庁から幾度も拒絶されていた。最終的にウインテックは特許庁に対して提訴して裁判によって権利を取得した。プロの特許審査官が拒絶し続けた特許を素人の裁判官に委ねたことになる。訴訟までして特許の権利化を進めた理由は、𠮷岡の「パックった」の主張を退けるのが目的と観える。

アルゼの岡田和生会長は、マースエンジニアリングとは保通協の絡みで関係を持っており、𠮷岡はそのため訴訟を断念した。

さらにセタ取締役となった後も𠮷岡はまだ遺恨が残っており、「マースの両替機は、パクったビルバリを使いながら、コストダウンの為に紙幣の透かしを検出する透過型センサーを取り外し、とても札とは言えない紙切れでも真券と認識してしまう低い品質である」と主張していた。

そして2004年にマースの両替機で、「バーコード偽造紙幣事件」が発生した。

𠮷岡はその事件に関連して『週刊ポスト』(2005年4月15日号)で「渦中の人」として取り上げられ、さらに警視庁は「偽造紙幣製造の容疑者」として𠮷岡の取り調べを長時間行なっている。

𠮷岡は「ビルバリの開発で一番重要なことは本物の紙幣ではない用紙は全て偽券としてはじくことである。そのためには本物の紙幣に近い偽券が必要となる。この偽券をはじくことによって紙幣の識別精度が高い言える。本物の紙幣をコピーすると犯罪になるので、センサー通過部分だけをコピーしてそれを広げて試験用紙を作った。バーコードに見えるのはそのためである。マースエンジニアリングの両替機で使用された偽券はこの試験用紙である。そもそもコストダウンの為に紙幣の透かし検出用透過型センサーを取り外したら、この試験用紙が本物の紙幣と認識しても仕方のないことかもしれない」と主張。

2005年1月、「バーコード偽造紙幣事件」で逮捕された容疑者は、使った用紙が偽造通貨とは言えない品質なので偽造通貨行使ではなく窃盗として逮捕された[6]

脚注[編集]

  1. ^ 『ゲームマシン』1980年5月1日第141号、p.17
  2. ^ The Arcade Flyer Archive - Video Game Flyers: Shark Treasure, Universal
  3. ^ [1]
  4. ^ RESEARCH LIBRARY リサーチ ライブラリ 一橋大学イノベーション研究センター
  5. ^ 『マイコンBASICマガジン』1994年6月、p.146
  6. ^ マースウインテックホームページの紙幣識別機の掲載について

関連項目[編集]

  • SOS (ゲーム)英語版 - この作品もジービー基板の再利用を目的として長野文化機器の吉岡一栄が開発したもので、ナムコにも逆ライセンスされた。
  • ナバロン - ジービー基板の再利用を目的として、ナムコ社内で制作された作品