居初津奈女

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

居初 津奈女(いそめ つなじょ、生没年不詳)は、江戸時代の女性著述家画家

来歴[編集]

居初氏、名は津奈。「津音」とも記す。貞享から元禄の頃にかけて、京都で女性向けの仮名往来物を多く著し刊行している。その奥付には「居初女津奈」、「居初氏女津奈」などとある。これらは単に仮名の手本としてだけではなく、当時の女性が守るべき教訓や消息文の書き方、言葉遣いなどについても触れており、津奈女自身が描いた挿絵が入るものもある。その著『女書翰初学抄』の序文によればもともと京都の人ではなく、「壮年」の時に京に上って移り住んだ。そして20年ほど経った頃、ある人から「女文章のしるべ」となるものを書くよう勧められ、辞退したが「望める事数多度」だったので著したのが『女文章鑑』だったという。生没年は不明だが、延享4年(1747年)刊行の『女文章都織』はそれまでの津奈女の著作とは体裁などが違うことから、これは遺稿を出版したものであり、それ以前に死去していたといわれている。なお奈良県立美術館には「雛形絵巻」一巻(紙本着色)を所蔵し、これが津奈女の筆であると伝わるが落款や印章は無く、画風は吉田半兵衛風とされる。

著作[編集]

  • 『女文章鑑』 ※貞享5年(1688年)3月刊行
  • 『女百人一首』 ※貞享5年3月刊行
  • 『女書翰初学抄』 ※元禄3年(1690年)1月刊行
  • 『絵入女教訓文章』 ※元禄7年(1694年)3月刊行、津奈女筆の挿絵入り
  • 『女誡絵入女実語教』・『女誡絵入女童子教』 ※元禄8年3月刊行、津奈女筆の挿絵入り。書名は違うが『女実語教』を上巻、『女童子教』を下巻とし上下2巻としている。

参考文献[編集]

  • 日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』(第2巻) 大修館書店、1982年 ※123頁
  • 小林忠編 『肉筆浮世絵大観(9) 奈良県立美術館/京都府立総合資料館』 講談社、1996年
  • 小泉吉永 「居初津奈の女用文章」 『江戸期おんな考』第8号 知る史の会、1997年
  • 小泉吉永編 『江戸時代女性文庫・補遺「女筆手本類」』(第2巻) 大宝社、1999年 ※『絵入女教訓文章』、『女誡絵入女実語教』・『女誡絵入女童子教』所収

関連項目[編集]