尾崎巌

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尾崎 巌
人物情報
生誕 日本の旗 日本1927年
死没 日本の旗 日本2008年5月11日 80歳
神奈川県
出身校 慶応義塾大学
配偶者 尾崎左永子
学問
研究分野 計量経済学
研究機関 慶応義塾大学
学位 経済学博士
称号 慶応義塾大学名誉教授
影響を受けた人物 ワシリー・レオンチェフ, 寺尾琢磨
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尾崎 巌(おざき いわお)(1927年-2008年)は日本の経済学者慶応義塾大学経済学部名誉教授。専門は計量経済学環太平洋産業連関分析学会の初代会長(1998-1999年)を務めた[1]

学歴[編集]

職歴[編集]

出典:(三田学会雑誌.1993 #85(4))
慶応義塾大学経済学部副手・助手・助教授を経て、1968年慶応義塾大学経済学部教授。1965年-1966年にロックフェラー財団訪問研究員としてハーバード大学に滞在。慶応義塾大学産業研究所所長(1981-1987年)、日本経済データ開発センター研究所所長兼任(1970年-1972年)、早稲田大学大学院経済学研究科講師兼任(1972年-1989年)、京都大学経済研究所講師兼任(1980年-81年)、慶應義塾大学名誉教授(1992年-)。学外委員として経済企画庁経済審議会計量部会委員(1966年-1989年)、通商産業省産業構造審議会産業資金部会委員などを務めた。

主な学術業績とその影響[編集]

日本の基本分類産業連関表(1960年、1965年、450×350部門表)を用い、高成長経済に随伴する経済構造変化の基本的要因を計量的に解明すべく、素材別部門間投入経路を詳細に追跡し再配列することでブロック独立性と三角性[6]を同定した[7]。尾崎が精力的に取り組んでいたもう一つの課題が事業所個票データを用いた生産関数の計量経済学的同定である[8]。尾崎の研究を特徴付けたのが、教科書的な生産関数と異なり、価格代替効果を含まず相似性(生産量が変化しても投入物間の比率は変わらない)も仮定しない「尾崎型生産関数」の応用であった[9]。上の二つの研究成果を統合し、経済発展の実証モデルを構築するのが尾崎のライフワークであった[10][11][12][13]ワシリー・レオンチェフは尾崎に最も大なる影響を与えた経済学者である[14][15][16]。尾崎が指導した大学院門下生で研究者となった人物には、井原哲夫(慶応義塾大学名誉教授)、石田孝造(立正大学名誉教授)、清水雅彦(慶応義塾大学名誉教授)、赤林由雄(慶応義塾大学経済学部講師)、鷲津明由(早稲田大学社会科学部教授)等がある[17]

尾崎の著作・論文は殆どが和文であるので,その直接的な国際的認知度は限られている.然るに,中村は尾崎の名を冠した一般的費用関数形 The Generalized Ozaki Cost Function を国際学術誌に発表している[18].更に,尾崎が考案した「単位構造系[19]」に着目して,産業エコロジー分野で用いられている Materlla Flow Analysis (MFA)の手法としてUPIOM (Unit Physical Input-Output of Materials)をやはり国際学術誌に発表している[20]

研究論文・著作[編集]

  • 尾崎巌, 石田孝造「経済の基本的構造の決定(一) : 投入・産出分析の手法による」『三田学会雑誌』第63巻第6号、慶應義塾経済学会、1970年6月、433(15)-453(35)、CRID 1390572632983971840doi:10.14991/001.19700601-0015ISSN 0026-6760 
  • 尾崎巌. "経済発展の構造分析 (一): 構造変化を含むレオンティエフ動学体系." 三田学会雑誌 72.6 (1979): 746-84.
  • 尾崎巌; 清水雅彦. 経済発展の構造分析 (二): 規模の経済性と設備の不分割性の測定. 三田学会雑誌, 1980, 73.1: 1-30.
  • 尾崎巌. 経済発展の構造分析 (三): 経済の基本的構造の決定. 三田学会雑誌, 1980, 73.5: 720 (66)-748 (94).
  • 尾崎巌. "規模の経済性とレオンティエフ投入係数の変化." 三田学会雑誌 59.9 (1966): 952-42.
  • 尾崎巌; 池田明由. 規模の経済性と構造変化 (一). 三田学会雑誌, 1989, 81.4: 541 (1)-561 (21).
  • 尾崎巌. 産業構造の変化と技術構造. 三田学会雑誌, 1968, 61.3: 263 (1)-283 (21).
  • OZAKI, Iwao. Industrial structure and employment. Dev. Econ, 1976, 14.4: 341-365.
  • OZAKI, Iwao. Recent Changes in the Structure of Japanese Production and Trade. Japanese Economic Studies, 1973, 1.4: 3-32.
  • OZAKI, Iwao. 14 Economies of plant scale and structural change. Wassily Leontief and Input-Output Economics, 2004, 232.
  • OZAKI, Iwao. The effects of technological changes on the economic growth of Japan, 1955-1970. Advances in Input-Output Analysis, Cambridge, Ballinger, 1976, 93-111.
  • 尾崎巌; 産業連関分析とは何か, 産業連関, 1989年 1巻 1号 p.107-114

脚注[編集]

  1. ^ 宍戸駿太郎「尾崎巌先生を偲ぶ」『産業連関』第16巻第2号、環太平洋産業連関分析学会、2008年、3-4頁、doi:10.11107/papaios.16.2_3 
  2. ^ a b https://www2b.biglobe.ne.jp/~yorozu/sub2-17.html
  3. ^ a b c (三田学会雑誌.1993 #85(4))
  4. ^ 岩田暁一・西川俊作編 「KEO実証経済学」慶應義塾大学産業研究所 1995年、序文
  5. ^ 尾崎巌『経済構造の変化と技術構造 : 産業連関分析における投入構造の変化に関する実証的研究』慶應義塾大学〈経済学博士 乙第313号〉、1968年。 NAID 500000413967https://id.ndl.go.jp/bib/000009175299 
  6. ^ Simpson, David; Tsukui, Jinkichi (1965). “The Fundamental Structure of Input-Output Tables, An International Comparison”. The Review of Economics and Statistics 47 (4): 434-446. doi:10.2307/1927773. ISSN 0034-6535. https://www.jstor.org/stable/1927773. 
  7. ^ 尾崎巌, 石田孝造「経済の基本的構造の決定(一) : 投入・産出分析の手法による」『三田学会雑誌』第63巻第6号、慶應義塾経済学会、1970年6月、433(15)-453(35)、CRID 1390572632983971840doi:10.14991/001.19700601-0015ISSN 0026-6760 
  8. ^ Ozaki, Iwao (1970). “Economies of scale and input-output coefficients”. Application of input-output analysis 2: 280-302. 
  9. ^ 辻村江太郎 「計量経済学」岩波書店, 1981。同書の中で辻村は尾崎の研究を紹介する中で「1980年代の生産に関する実証研究はJorgenson的方向と尾崎的方向とに2分されるであろう」(p. 196)と述べている。一方、中村慎一郎は1990年に発表した(Nakamura(1990))で「伸縮的新古典派生産関数」である一般形Leontief生産関数と「尾崎型生産関数」を内包するより一般的な関数型 Generalized Ozaki cost function 示している。
  10. ^ 鷲津明由 2008a.
  11. ^ 鷲津明由 2008b.
  12. ^ 岩田暁一・西川俊作編「KEO実証経済学」、慶應義塾大学産業研究所、1995年、序文「今日、慶応義塾大学の実証経済学が世に知られるようになったことにおいて、小尾・尾崎両先生が果たした役割は極めて大きい」.
  13. ^ 蓑谷千凰彦. "慶應計量経済学派の胎動, 確立および発展." 三田学会雑誌 100.1 (2007): 79-140.
  14. ^ 尾崎巌. ワシリー W. レオンチェフ教授の逝去を悼む. 産業連関, 8(4), 4-5. 1999年
  15. ^ 特集「レオンチェフ博士追悼座談会」産業連関 Vol.9, No. 1, 1999年
  16. ^ 岩田暁一・西川俊作編「小尾恵一郎教授・尾崎巌教授退任記念 KEO実証経済学」慶應義塾大学産業研究所 1996年、の序文で岩田暁一は次のように書いた「お二人のお仕事に最も影響を与えた書物を私の推測で 1冊ずつ挙げるとすれば、小尾先生の場合はRagnar Frischの New Methods of Measuring Marginal Utility 1932)であり、また尾崎先生の場合は WassilyLeontiefの The Structure of American Economy, 1919-1929 (1940)であろう. FrischとLeontiefの分析対象や方法の違いは小尾・尾崎両先生のお仕事に色濃く反映されているように思われる。そして小尾・尾崎両先生はいずれも経済現象や構造の測定に精根を傾けている点で、 FrischとLeontiefと同じか或いはむしろ彼らを凌駕していると思わざるをえない。」
  17. ^ 尾崎.石田 1970.
  18. ^ Nakamura, Shinichiro (1990). “A Nonhomothetic Generalized Leontief Cost Function Based on Pooled Data”. The Review of Economics and Statistics 72 (4): 649–656. doi:10.2307/2109605. ISSN 0034-6535. https://www.jstor.org/stable/2109605. 
  19. ^ 尾崎巌. "経済発展の構造分析 (三): 経済の基本的構造の決定." 三田学会雑誌 73.5 (1980): 720-66.
  20. ^ Nakamura, Shinichiro; Kondo, Yasushi; Matsubae, Kazuyo; Nakajima, Kenichi; Nagasaka, Tetsuya (2011-02-01). “UPIOM: A New Tool of MFA and Its Application to the Flow of Iron and Steel Associated with Car Production” (英語). Environmental Science & Technology 45 (3): 1114–1120. doi:10.1021/es1024299. ISSN 0013-936X. https://pubs.acs.org/doi/10.1021/es1024299. 

参考文献[編集]

関連項目[編集]