啓孫

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啓孫(けいそん、生没年不詳)は、室町時代後期(16世紀)に活動した画僧。別号に休月斎。祥啓の弟子。現存作品数は同時期の画人と比べ群を抜いて多いが、謎が多い画人である。

概要[編集]

画名や画風から祥啓の弟子とするのが定説である。別号の「休月斎」落款を付した作例は「虎渓三笑図」(栃木県立博物館蔵)のみである。この「斎」の字は祥啓の書体と同様で、これを参照している事がわかる。しかしその一方で、非禅宗系の「法眼」の僧位を名乗っており、啓孫の特殊な立場を想像させる。

作域は、山水、人物、花鳥など多岐にわたる。画風は祥啓様を基本としながらも、その構図をより煩雑にし、描法もより煩瑣な線描を用い、よりマリエリスティックな印象を受ける。また行体の人物画や花鳥画には、一世代前の仲安真康に即した画が多い。この傾向は、他の祥啓系画人にも見られる傾向である。また、関東狩野派の絵師前島宗祐の作品を斟酌した作例もある。こうした作風により、祥啓画系の画人の中でもっとも個性的な画人と言える。

しかし、後世「啓」字を持つ画人の作品は「啓書記(祥啓)筆」として伝来することが多い。啓孫もその中に紛れ、作品には必ず「啓孫」印が押されているにもかかわらず、すべて祥啓の作品として扱われてしまい、近世の画譜類でも「啓孫」という個別の画人として扱われていない。しかし、狩野派の模本の中に「啓書記」と注記された作品の中には、啓孫風を示す作品も多い。

代表作[編集]

参考資料[編集]