仁勢物語

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仁勢物語(にせものがたり)は、寛永17年(1640年)頃に成立した日本仮名草子柳亭種彦『好色本目録』では烏丸光広作と伝わるが、現在では否定されている[1]。大本、上下2冊[1]

概要[編集]

作者を烏丸光広とする説は、光広逝去が寛永15年であるため、明白な誤伝である[2]

「仁勢」は「似せ」の意味で[2]、『伊勢物語』流布本の全125段を忠実にもじり、王朝文学の雅を当世の俗に置き換えることで、読者に笑いをもたらす擬物語(パロディ)である[1]。近世初期、『伊勢物語』のパロディは数多く出版されたが、本書が最も古く、最も原書に忠実なパロディと位置づけられる[2]。なお、片桐洋一の研究によって、本書が寛永6年版『伊勢物語』に基づくことが明らかになっている[1]

枕草子』をもじった『尤草紙』や『犬枕』、『徒然草』をもじった『犬つれづれ』など、江戸時代前期には本書のような擬古典物が多く出版された[3]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 岡本勝雲英末雄編『新版 近世文学研究事典』おうふう、2006年2月、16頁。 
  2. ^ a b c 前田金五郎,森田武校注『仮名草子集』岩波書店、1965年5月、17頁。 
  3. ^ 日本国語大辞典. “仁勢物語とは”. コトバンク. 2020年11月16日閲覧。