ヤマサギソウ

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ヤマサギソウ
福島県尾瀬 2018年7月上旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: キジカクシ目 Asparagales
: ラン科 Orchidaceae
: ツレサギソウ属 Platanthera
: ハシナガヤマサギソウ
Platanthera mandarinorum
変種 : ヤマサギソウ
P. m. subsp. m. var. oreades
学名
Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. mandarinorum var. oreades (Franch. et Sav.) Koidz.[1]
シノニム
  • Platanthera oreades Franch. et Sav.[2]
  • Platanthera mandarinorum Rchb.f. var. brachycentron (Franch. et Sav.) Koidz. ex K.Inoue[3]
  • Platanthera mandarinorum Rchb.f. f. brachycentron (Franch. et Sav.) M.Hiroe[4]
和名
ヤマサギソウ(山鷺草)[5]

ヤマサギソウ(山鷺草、学名Platanthera mandarinorum subsp. mandarinorum var. oreades)は、ラン科ツレサギソウ属の地生の多年草[5][6][7][8]

特徴[編集]

の一部は紡錘状に肥厚する。は直立し、高さは20-40cmになり、やや縦の稜がある。は最下部の1個が大きく、狭長楕円形から線状長楕円形で、長さ5-11cm、幅1-1.5cmになる。その上に2-5個の鱗片葉があり、披針形になる[5][7][8]

花期は5-7月。総状花序に淡黄緑色のを5-15個つける。は披針形。背萼片は卵形から広卵形で長さ3-5mm、幅2.5-4mm。側萼片は披針形で背萼片より長い。側花弁は鎌形で背萼片より少し長く、上方に伸びる。唇弁はやや肉質、舌状で長さ10-15mmになり、先細となって下垂する。は長さ7-12mmになり、後方に水平またはやや下方に伸びる。蕊柱は平らで葯隔は広く、葯室は左右に平行する。花粉塊は広倒卵形で、淡黄色をしている[5][7][8]

ヤガ科のミツモンキンウワバが訪花し、花粉を運ぶ[8]。基本種のハシナガヤマサギソウは距が25-35mmと長く、後方に水平に伸び、互いに変種関係にあるマイサギソウは距が11-18mmとやや長く、上方に舞い上がることから区別できる。ただし、変異が連続的で同定が難しい個体もあるという[7][8]

分布と生育環境[編集]

日本では、北海道、本州、四国、九州に分布し、冷温帯から暖温帯の日当たりのよい草地や湿地に生育する[5][6][7][8]。国外では、朝鮮半島に分布する[8]

名前の由来[編集]

和名ヤマサギソウは「山鷺草」の意で、花をサギに見立てて山地に生えることによる[8]

ギャラリー[編集]

種内分類[編集]

種内変異が多く、変異が連続的で同定が困難な個体もあるという[7][8]

  • ハシナガヤマサギソウ(嘴長山鷺草)Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. mandarinorum var. mandarinorum[9] - 学名のとおり、本種の基準亜種であり、基準変種である。茎の高さは20-50cm。背萼片は広卵形で長さ4.5-7.5mm。距は長さ25-35mmと長く、後方に水平に伸びる。本州(西部)、四国、九州に分布し、暖温帯のやや乾いた草地、しばしば石灰岩地に生育する。国外では朝鮮半島、中国大陸に分布する[7][8]
  • マイサギソウ(舞鷺草)Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. mandarinorum var. neglecta (Schltr.) F.Maek. ex K.Inoue[8][10] - 茎の高さは20-50cm。背萼片は広卵形から円形で長さ3.5-5.5mm。距は長さ11-18mmとやや長く、上方に伸びる。北海道、本州、四国、九州に分布し、冷温帯から暖温帯の明るい草原や湿原に生育する。国外では朝鮮半島、中国大陸に分布する[7][8]
  • マンシュウヤマサギソウ(満州山鷺草) Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. maximowicziana (Schltr.) K.Inoue var. cornu-bovis (Nevski) Kitag.[11]
  • アマミトンボ(奄美蜻蛉)Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. hachijoensis (Honda) Murata var. amamiana (Ohwi) K.Inoue[12] - ハチジョウチドリに似るが、苞の長さが花柄子房と同長か短い。奄美大島固有種 [7][8]。絶滅危惧II類(VU)(2017年、環境省)。
  • ヤクシマトンボ(屋久島蜻蛉)Platanthera mandarinorum Rchb.f. subsp. hachijoensis (Honda) Murata var. masamunei K.Inoue[13] - 別名、アマミトンボモドキ[8][13]。絶滅危惧IA類(CR)(2017年、環境省)。

脚注[編集]

  1. ^ ヤマサギソウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ ヤマサギソウ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ ヤマサギソウ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  4. ^ ヤマサギソウ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  5. ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.118
  6. ^ a b 『日本ラン科植物図譜』p.53, p.311
  7. ^ a b c d e f g h i 『改訂新版 日本の野生植物1』p.224
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『日本のランハンドブック1 低地・低山編』pp.29-32
  9. ^ ハシナガヤマサギソウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  10. ^ マイサギソウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  11. ^ マンシュウヤマサギソウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  12. ^ アマミトンボ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  13. ^ a b ヤクシマトンボ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

参考文献[編集]