マルカム・カウリー

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マルカム・カウリー

マルカム・カウリー(Malcolm Cowley, 1898年8月28日 - 1989年3月27日)はアメリカ詩人批評家

ハーヴァード大学在学中に第一次世界大戦に従軍。戦後はこの時代の多くのアメリカの若い芸術家・文学者たちと同様にニューヨークやパリでボヘミアン生活を送った。代表作である『亡命者の帰還』(1934; 改訂版1951)は「狂騒の1920年代」とも呼ばれたこの時代の克明な記録であり、いわゆる「失われた世代」の精神的彷徨を生き生きと描いたエッセイとして名高い。

1930年代以降はマルキシズムに傾倒、多くの政治的エッセイも残しているが、後世に彼が与えた影響は圧倒的に「文学的」なものである。1929年から1944年まで『ニュー・リパブリック』の編集に携わり、第二次大戦後は旺盛な批評活動によってアメリカの文芸ジャーナリズムに絶大な影響を及ぼした。とりわけアカデミズムの外の文学批評において、エドマンド・ウィルソンと共にこの時代の双璧をなす人物と目されている。

雑誌や選集の編者としても良く知られており、なかでも有名なのが1946年の『ポータブル・フォークナー』である。この選集において、カウリーはウィリアム・フォークナーの多元的で混沌とした小説世界をきわめてリーダブルに「編集」し、さらにそのサーガの豊かさを存分に伝える「イントロダクション」を付すことで、それまでほとんど無名であった──というより、ほとんどの作品がすでに絶版になっていた──この作家の魅力を広く世に知らしめた。

サルトルやコアンドローらによるフランスでのローカルな評価を別とすれば、このカウリー版「フォークナー」こそが、彼を「世界文学」の作家たらしめた最初のきっかけだったとも言えるだろう。当時のフォークナーの知名度を考えればほとんど突然のようにも思われる1949年ノーベル文学賞受賞の背景に、この優れた選集の存在があったことは疑いを得ない。カウリーの批評家としての本質は、知られざる「才能」を見出すこうした直感的明察にこそあったとも言えよう。

主要著書[編集]