ブラストサイジンS

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ブラストサイジンS
Blasticidin S
識別情報
CAS登録番号 2079-00-7
PubChem 258
KEGG C02010
特性
化学式 C17H26N8O5
モル質量 422.44 g mol−1
外観 白色の固体
融点

235℃

への溶解度 30000 ppm (20℃)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ブラストサイジンS: Blasticidin S)は抗生物質の一種で、主に農業用殺菌剤として使われた。

概要[編集]

稲のいもち病に対しては従来水銀系の農薬が使われてきたが、毒性が強いためこれに代わる殺菌剤の研究がすすめられた。1958年理化学研究所住木諭介主任研究員、東京大学米原弘教授らにより、放線菌の生成物であるブラストサイジンSが発見された。タンパク質生合成を阻害することにより作用し[1]1961年に世界初[2]の農業用抗生物質として実用化された。日本では1961年4月11日にラウリル硫酸塩(1964年4月11日失効)、1962年4月21日にベンジルアミノベンゼンスルホン酸塩(2004年3月16日失効)が登録された。商品名には「ブラエス」などがあった[3]1965年には、これに続く農業用抗生物質としてカスガマイシンが実用化された。

安全性[編集]

日本の毒物及び劇物取締法では劇物に分類されている。半数致死量(LD50)はラットへの経口投与で55.9~16.0mg/kg、ラットへの経皮投与で3,100mg/kg[4]。ヒトの皮膚や目に対し刺激性がある。残留基準はないが、食品衛生法では「食品は抗生物質を含んではならない」としている。

脚注[編集]

  1. ^ 殺菌剤の作用メカニズム農薬工業会
  2. ^ 亜鉛が鍵握る抗生物質分解酵素の構造・機構解明(財団法人高輝度光科学研究センター
  3. ^ 植村振作・河村宏・辻万千子・冨田重行・前田静夫著『農薬毒性の事典 改訂版』三省堂、2002年。ISBN 978-4385356044 
  4. ^ 製品安全データシート(安全衛生情報センター)