ピクトリアリスム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ピクトリアリスム(ピクトリアリズム、pictorialism, pictorialisme)とは、絵画的な写真のことである。ピクトリアル・フォトグラフィと呼ばれることもある。日本の写真においては、芸術写真とほぼ同義といってよい。

その発生は、19世紀にさかのぼる。英国の王立アカデミーでは、もともと写真は写真技術の科学者と、写真家そのものが同じくくりで扱われていたが、このことに芸術としての写真を目指すものたちが不満をもったのがそもそもの動機であった。やがてHenry Peach RobinsonやHorslay Hintonらが創立したグループ、リンクトリングLinked Ring が生まれ、自分たちの写真を「サロン」と称する展示会で展示するなどして活動し始めた。芸術上の反リアリズムを、アーツ・アンド・クラフト運動などとも連動しつつ、意図的に打ち出した写真運動である。

 1.空気遠近法を意識し、実際に肉眼に見えるように、近景にコントラストのはっきりしたものを置き、遠景を曖昧にする。2.地平線の位置などを厳密に合わせたうえで、表現のために風景写真に雲などを合成する。3.過剰な細部を省略して、表現したいモティーフや感情を表そうとする、などの手法を用いた。画面をぼかし、絵画の構図を模倣したものであるとのちに批判されたが、例えばその理論家であるHorslay Hintonは、写真がリアルなものを写している、という考えへの異議申し立てとして勃興した印象派絵画の理論を導入して、逆に写真そのものを本来の事物に近づけるためにそれらの手法を用いようとしたのであり、単に古典名画から構図を借りたという類のものではない。またそもそもただ写真をぼかしたからといって絵画に近くなるはずもなく、いわゆるストレートフォトグラフィがピクトリアリスムに対して行った批判は今日から見ると全くの言いがかりであった。

1910年ごろのストレートフォトグラフィの普及に伴い、厳しい批判の対象とされ(絵画を模倣するような作品は、写真の本来の姿ではないなど)、それ以前の勢力は失ったが、以降も、ストレートフォトグラフィの手法も取り入れつつ(例えば、ソフトフォ-カスを用いずに、画面構成だけを意図的に作り出したものとするような方向)、ある程度の勢力を保っている。現在においても、一般的な、写真作品のタイプの1つであるといえる。

[編集] 関連項目