コヤブタバコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コヤブタバコ
福島県中通り地方 2020年8月中旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : キキョウ類 Campanulids
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
亜科 : キク亜科 Asteroideae
: ガンクビソウ属 Carpesium
: コヤブタバコ
C. cernum
学名
Carpesium cernuum L.[1]
和名
コヤブタバコ(小藪煙草)[2]

コヤブタバコ(小藪煙草、学名:Carpesium cernuum)は、キク科ガンクビソウ属越年草[2][3]

特徴[編集]

は太く直立して、高さ50-100cmになり、まばらに多くのを出し、全体に軟毛が密生する。根出葉は花時には枯れている。茎につくは互生し、下部の葉はさじ状長楕円形で、長さ9-25cm、幅4-5cmになり、先端は鋭くとがり、基部はくさび形で翼のある葉柄に流れ、縁には不ぞろいな微凸な鋸歯があり、葉質はやわらかく軟毛におおわれる。茎葉は上部にいくにしたがって次第に小さくなり、鋸歯が低くなり、葉柄も短くなる[2][3][4]

花期は7-9月。枝の先端に下向きに開く頭状花序をつける。頭花の基部には、長さ2-5cmの緑色をした線状倒披針形の葉状苞が多数つく。総苞は半球形で長さ7-8mm、径15-18mmになり、すべて筒状花からなる。総苞片はほぼすべて同じ長さ、外片は葉状で先はやや反曲し、内片は乾膜質で白い。花冠は緑白色で黄色にはならない。果実痩果で、長さ4.5-5mmの円柱形になり、腺があって粘り、冠毛はない。染色体数は2n=40[2][3][4]

オオガンクビソウ C. macrocephalum に似るが、同種よりも葉や頭花が小さく、暖温帯に広く分布する[4]

分布と生育環境[編集]

日本では、北海道、本州、四国、九州、琉球に分布し、山野の疎林内や林縁にふつうに生育する[2][3][4]。国外では東アジアからインド北西部、東ヨーロッパまで、また東南アジアからマレーシアまで広く分布する[4]

名前の由来[編集]

和名コヤブタバコは「小藪煙草」の意[2]で、小型のヤブタバコ C. abrotanoides の意味である[3]。しかし、名前とは逆に、頭花はヤブタバコより大きい[2]

種小名(種形容語)cernuum は「点頭した」「前かがみの」の意味[5]

和名の混乱[編集]

牧野富太郎は、本種「コヤブタバコ」こそが本来の「ガンクビソウ(雁首草)」と考え、ガンクビソウ C. divaricatum var. divaricatum に「キバナガンクビソウ」の和名を与え、コヤブタバコをガンクビソウとした[3]。しかし、「キバナガンクビソウ」の名前は、ガンクビソウ C. divaricatum var. divaricatum の別名として扱われているか[4]、別名としての記載がないものがある[6][7]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ コヤブタバコ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e f g 『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花(増補改訂新版)』p.561
  3. ^ a b c d e f 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1199
  4. ^ a b c d e f 米倉浩司 (2017)、キク科オグルマ連『改訂新版 日本の野生植物 5』pp.352-353
  5. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1487
  6. ^ 『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花(増補改訂新版)』p.563
  7. ^ ガンクビソウ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

参考文献[編集]