カズグリ

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カズクリの果実

カズグリ[1][2][3]、またカズクリ[4][5][6](数栗)とは、クリ(栗、Castanea crenata)の突然変異個体で、岩手県花巻市の1ヶ所にのみ生育する[2][6]。日本国の天然記念物に指定されている[4][5][7][8]

概要[編集]

クリは単性雌雄同株[注釈 1]で、花序[注釈 2]の頂端側に多数の雄花を長穂状につけ純雄花穂をつくり、その軸の基部に帯雌花穂として雌花を2–3個つけ[12]尾状花序を形成する[13]。しかし、カズクリにおいては、すべてが雌花であり、花序に多数の殻斗に包まれた果実)をつける特徴がある[7]。これは、突然変異を起こし、雄花がすべて雌花に変異したものと考えられている[7][6]。一本の花序に多数の毬を付けるが、結実するのは基部の1–3花である[7]1925年大正14年)には、すでに岩手県の調査が入ったように、存在が知られており[14]1927年昭和2年)4月8日カズクリ自生地として、国の天然記念物に指定され、同年11月30日以降花巻市が管理している[4][5]

自生地・現況[編集]

2010年平成22年)現在、カズクリは、岩手県花巻市東和町上小山田石鳩岡数栗稲荷神社境内にあるのみである[1][7]。原木は枯れ、現存するのは接木によって殖やした第2代である[1]。2013年当時7本のみであったが[3][8]2019年現在では11本現存する[6]。一時はクリタマバチ Dryocosmus kuriphilus による食害で枯死することが懸念されていたが、被害枝の伐採や施肥によって樹勢を回復している[6]。自生地には天然記念物カズクリ保存会がある[6]

かつては長野県にも同様の個体があったが、そちらの個体は枯死してしまった[2]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 雌雄異花同株とも呼ばれ、単性花のみを同じ個体につける[9]
  2. ^ 複数の花をまとめてつける枝[10][11]

出典[編集]

  1. ^ a b c カズグリ自生地”. いわての文化情報大事典. 岩手県 (2004年). 2023年4月18日閲覧。
  2. ^ a b c ■平成27年度市政懇談会記録』(レポート)花巻市、2015年https://www.city.hanamaki.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/763/27-11gatsubun.pdf2023年4月18日閲覧 
  3. ^ a b みちのく郷山保全隊 2013年8月号』(レポート)みちのく郷山保全隊 事務局、2013年8月、6頁http://i-sinrinsaisei.org/public_html/pdf/h25/mtnk1312.pdf2023年4月18日閲覧 
  4. ^ a b c カズクリ自生地”. 国指定文化財等データベース. 文化庁 (1997年). 2023年4月18日閲覧。
  5. ^ a b c カズクリ自生地”. 文化遺産オンライン. 文化庁. 2023年4月18日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 「カズクリ」のイガ 茶褐色に 花巻・東和”. Iwanichi Online. 岩手日日新聞社 (2019年10月24日). 2019年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月18日閲覧。
  7. ^ a b c d e 講談社 編『自然紀行・日本の天然記念物』花井正光、桂雄三、本間暁監修、講談社、2003年9月30日、54頁。ISBN 978-4-06-211899-6 
  8. ^ a b 『日本の天然記念物』加藤陸奥雄沼田眞、渡部景隆、畑正憲監修、講談社、1995年3月1日、310頁。ISBN 978-4061805897 
  9. ^ 清水 2001, p. 262.
  10. ^ 原襄『植物形態学』朝倉書店、1994年7月10日、148頁。ISBN 978-4-254-17086-3 
  11. ^ 清水 2001, p. 76.
  12. ^ 高嶋四郎・傍島善次・村上道夫『有用植物』保育社〈標準原色図鑑〉、1971年3月25日、109頁。 
  13. ^ 清水 2001, p. 82.
  14. ^ 岩手県教育委員会編集 編『岩手県史蹟名勝天然記念物調査』国書刊行会、1984年、691頁。 

参考文献[編集]

座標: 北緯39度24分41.8秒 東経141度16分36.1秒 / 北緯39.411611度 東経141.276694度 / 39.411611; 141.276694