ウァレリウス・マクシムス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『著名言行録』15世紀ドイツのペーター・シェッファー英語版が出版したインキュナブラ
14世紀シャルル5世に『著名言行録』フランス語訳を献上するシモン・ド・エスダン英語版

ウァレリウス・マクシムス[1]ワレリウス・マクシムス[2]とも、: Valerius Maximus1世紀前半ごろ)は、帝政ローマラテン語著述家。古代ギリシア・ローマの様々な逸話をまとめた『著名言行録[2][3](『有名言行録[1]記憶に値する行為と言葉[4]とも、: Facta et Dicta Memorabilia)の作者。

生涯[編集]

生涯は不詳である。『著名言行録』がティベリウス献呈されており、ティベリウスへの阿諛追従やセイヤヌスへの非難文が含まれることから、セイヤヌス失脚後のティベリウス在位末期、すなわち31年から37年に本書を公刊したと考えられる[3]

『著名言行録』[編集]

全9巻(10巻とする場合もある)からなる[3]。古代ギリシア・ローマの逸話を、勇気・慈愛・節度・残忍・悪行・前兆・好運といった主題別に集めている[3]

本書は修辞学者弁論家)のための範例集英語版として書かれた[3][4]ラテン文学白銀期への過渡期を示す修辞的文体で書かれている[3]

リウィウスキケロを原資料としている[3]。不正確な逸話もあるが、本書にしか伝わらない逸話もある[3]

中世ラテン世界では、プリスキアヌス『文法学教程』などと並んで受容され、多くの写本が作られた。例えば、カロリング・ルネサンスフェリエールのルプス英語版校訂した写本が現存している[5]。中世には古代史の歴史書としても読まれた[4]

関連書籍[編集]

  • 吉田俊一郎『ワレリウス・マクシムス『著名言行録』の修辞学的側面の研究』東海大学出版部、2017年。ISBN 978-4486021308 

脚注[編集]

  1. ^ a b ウァレリウス・マクシムス』 - コトバンク
  2. ^ a b 吉田 2017.
  3. ^ a b c d e f g h 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年、270頁。ISBN 9784876989256 
  4. ^ a b c 吉田俊一郎「ワレリウス・マクシムスの執筆目的」『東京大学西洋古典学研究室紀要』第3号、東京大学大学院人文社会系研究科西洋古典学研究室、35-37頁、2007年。 NAID 120000870352https://doi.org/10.15083/00027575 
  5. ^ L.D.レイノルズ英語版 ; N.G.ウィルソン英語版 著、西村賀子 ; 吉武純夫 訳『古典の継承者たち ギリシア・ラテン語テクストの伝承にみる文化史』国文社、1996年、164頁。ISBN 9784772004190