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「銅欠乏症」の版間の差分

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銅の欠乏は、[[貧血]]・[[汎血球減少]]・[[神経変性疾患]]を引き起こすことがある。影響を受けた動物は[[失調#運動失調|運動失調]]や[[痙縮|痙性]]を呈するようになる。
銅の欠乏は、[[貧血]]・[[汎血球減少]]・[[神経変性疾患]]を引き起こすことがある。影響を受けた動物は[[失調#運動失調|運動失調]]や[[痙縮|痙性]]を呈するようになる。


銅欠乏がヒトに貧血を起こす事例は稀であるが、長年にわたり知られている。
銅欠乏がヒトに貧血を起こす事例は稀であるが、長年にわたり知られている。逆に、銅過剰状態([[ウィルソン病]]など)を治療するため、亜鉛製剤を用いることがある。


銅欠乏による神経変性は、[[ウシ亜目|反芻類]]において[[脊柱湾曲症]]をもたらす。近年、ヒトにおいても、反芻類に類似した症状、すなわち、進行性の痙性・運動失調・[[ニューロパチー]]が生じることが分かってきた。貧血を伴うこともある。
銅欠乏による神経変性は、[[ウシ亜目|反芻類]]において[[脊柱湾曲症]]をもたらす。近年、ヒトにおいても、反芻類に類似した症状、すなわち、進行性の痙性・運動失調・[[ニューロパチー]]が生じることが分かってきた。貧血を伴うこともある。
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ヒトでは、銅を十分に含まない[[高カロリー輸液]]や[[胃バイパス手術]]が原因となることがある。銅の推奨摂取量は0.9mg/日だが、典型的なアメリカ人の食生活ではこれに達しないことがある。亜鉛は消化管からの吸収において銅と競合するため、亜鉛を長期に渡って摂りすぎると銅欠乏が生じることがある。
ヒトでは、銅を十分に含まない[[高カロリー輸液]]や[[胃バイパス手術]]が原因となることがある。銅の推奨摂取量は0.9mg/日だが、典型的なアメリカ人の食生活ではこれに達しないことがある。亜鉛は消化管からの吸収において銅と競合するため、亜鉛を長期に渡って摂りすぎると銅欠乏が生じることがある。
; 例
# 長期[[経腸栄養]]患者</ref>{{Cite journal|和書 |author=栗山とよ子, 近藤亜希, 森川渚, 多田悦子, 菜畑麻香, 前野晃利, 玉木圭一, 多賀智治, 斎藤直毅, 西田聡 |title=症例報告 亜鉛含有量の多い経腸栄養剤投与により銅欠乏性貧血を発症し,栄養剤の変更で改善した1例 |journal=メディカルニュートリショニストオブペンリーダーズ |issn=2432-5678 |publisher=フジメディカル出版|year=2019 |volume=3 |issue=2 |pages=129-134naid=40022036114}}</ref><ref>{{Cite journal|和書 |author=湧上聖, 末永英文, 江頭有朋, 平敏裕, 渡嘉敷崇, 山崎富浩, 前原愛和, 上地和美 |title=長期経腸栄養患者の銅欠乏に対する,ココアによる銅補充及び維持療法の検討|journal=日本老年医学会雑誌 |issn=0300-9173 |publisher=日本老年医学会|year=2000 |volume=37 |issue=4 |pages=304-308 |naid=130003444428|doi=10.3143/geriatrics.37.304|url=https://doi.org/10.3143/geriatrics.37.304}}<ref># [[透析]]患者<ref>{{Cite journal|和書 |author=池田弘, 櫻間教文, 黒住順子, 大森一慶, 荒木俊江, 真鍋康二, 福島正樹 |title=銅欠乏症による種々の血球減少症を併発した透析患者の5例 |journal=日本透析医学会雑誌|issn=1340-3451 |publisher=日本透析医学会 |year=2019 |volume=52 |issue=2|pages=115-122 |naid=130007605374 |doi=10.4009/jsdt.52.115|url=https://doi.org/10.4009/jsdt.52.115}}</ref>
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逆に、銅過剰状態([[ウィルソン病]]など)を治療するため、亜鉛製剤を用いることがある。


==参考文献==
==参考文献==
* {{cite journal | author = Pang Y, MacIntosh DL, Ryan PB |title = A longitudinal investigation of aggregate oral intake of copper. | year=2001 | journal = Journal of Nutrition | pmid = 11481413}}
* {{cite journal | author = Pang Y, MacIntosh DL, Ryan PB |title = A longitudinal investigation of aggregate oral intake of copper. |year=2001 | journal = Journal of Nutrition | pmid = 11481413}}
* {{cite journal | author = Kumar N |title = Copper deficiency myelopathy (human swayback). | year=2006 | journal = Mayo Clinic Proceedings | pmid = 17036563}}
* {{cite journal | author = Kumar N |title = Copper deficiency myelopathy (human swayback). | year=2006 | journal = Mayo Clinic Proceedings | pmid = 17036563}}



2021年4月6日 (火) 13:58時点における版

銅欠乏症(どうけつぼうしょう、: copper deficiency)とは、ヒトやその他の動物に不可欠な微量元素のうち、の欠乏によってもたらされる諸症状のこと。

症状

銅の欠乏は、貧血汎血球減少神経変性疾患を引き起こすことがある。影響を受けた動物は運動失調痙性を呈するようになる。

銅欠乏がヒトに貧血を起こす事例は稀であるが、長年にわたり知られている。逆に、銅過剰状態(ウィルソン病など)を治療するため、亜鉛製剤を用いることがある。

銅欠乏による神経変性は、反芻類において脊柱湾曲症をもたらす。近年、ヒトにおいても、反芻類に類似した症状、すなわち、進行性の痙性・運動失調・ニューロパチーが生じることが分かってきた。貧血を伴うこともある。

臨床症状は、古くから知られており、ビタミンB12欠乏によって生じ、頻度も比較的多い亜急性連合性脊髄変性症とほぼ同じである。

原因

反芻類の銅欠乏の原因としては、牧草地や飼料の銅不足が挙げられる。

ヒトでは、銅を十分に含まない高カロリー輸液胃バイパス手術が原因となることがある。銅の推奨摂取量は0.9mg/日だが、典型的なアメリカ人の食生活ではこれに達しないことがある。亜鉛は消化管からの吸収において銅と競合するため、亜鉛を長期に渡って摂りすぎると銅欠乏が生じることがある。

  1. 長期経腸栄養患者</ref>栗山とよ子, 近藤亜希, 森川渚, 多田悦子, 菜畑麻香, 前野晃利, 玉木圭一, 多賀智治, 斎藤直毅, 西田聡「症例報告 亜鉛含有量の多い経腸栄養剤投与により銅欠乏性貧血を発症し,栄養剤の変更で改善した1例」『メディカルニュートリショニストオブペンリーダーズ』第3巻第2号、フジメディカル出版、2019年、129-134naid=40022036114、ISSN 2432-5678 </ref>引用エラー: <ref> タグに対応する </ref> タグが不足しています

植物では成長障害を呈することがある[2][3]

参考文献

  • Pang Y, MacIntosh DL, Ryan PB (2001). “A longitudinal investigation of aggregate oral intake of copper.”. Journal of Nutrition. PMID 11481413. 
  • Kumar N (2006). “Copper deficiency myelopathy (human swayback).”. Mayo Clinic Proceedings. PMID 17036563. 
  1. ^ 本岡里英子,山本真士「偏食による亜鉛過剰摂取が原因と考えられた銅欠乏性ミエロパチーの1例」『臨床神経学』第56巻第10号、日本神経学会、2016年、690-693頁、doi:10.5692/clinicalneurol.cn-000926ISSN 0009-918XNAID 130005250051 
  2. ^ 石原正義, 下迫勇助, 坂口生, 柳瀬騰, 渋谷久治, 寺岡義一, 横溝久, 金野三治「カンキツの銅欠乏症に関する研究-1-欠乏症状,樹体および土壌分析による銅欠乏診断法」『園芸試験場報告 A 平塚』第11号、農林省園芸試験場、1972年3月、41-76頁、ISSN 0424995XNAID 40017512234 
  3. ^ 白島孝治「千葉県の塩成干拓田に発生する亜鉛欠乏症を中心とした水稲生育障害の発現機構とその改良対策」『千葉県農業試験場特別報告』第4号、千葉県農業試験場、1972年10月、1-49 naid=220000002732、ISSN 0386-4278