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ペラギバクテル・ウビークウェ
分類
ドメイン : 細菌 Bacteria
: プロテオバクテリア門
Proteobacteria
: αプロテオバクテリア綱
Alphaproteobacteria
: リケッチア目 Rickettsiales
: "ペラギバクテル科"
"Pelagibacteraceae"
(=SAR11)
: "ペラギバクテル属"
"Ca. Pelagibacter"
: "Ca.P. ウビークウェ"
"Ca. P. ubique"
学名
"Ca. Pelagibacter ubique"
Rappé et al. 2002

ペラギバクテル・ウビークウェ("Candidatus Pelagibacter ubique")は、リケッチア目に属する細菌の未記載種。海洋に極めて大量に存在するSAR11系統の中で初めて培養・ゲノム解析が行われたもので、地球上で最も個体数の多い生物とされることがある。

海水中の溶存有機物を同化する主要な細菌と考えられており、存在量も莫大であることから(細胞数ベースで海水中の全微生物プランクトンの25%を占める)、地球炭素循環に大きな役割を持つ。

2018年時点では記載されておらず、"Pelagibacter ubique"は正式な学名ではない暫定的な呼称である。ラテン語としては、Pelagibacterが「海の細菌」を意味する名詞で、ubiqueが「どこでも」の意を持つ副詞であるが、種形容語は属名を修飾できる語でなければならないため、正式な学名として発表される際は改名される可能性がある。

性質など

最も研究されているHTCC1062株は、2002年オレゴン州ニューポートの沖合27.6km地点より採取された[1]

この細菌は、ピルビン酸グリシンメチオニン(硫黄源)、ビタミン類などを添加した人工海水で培養することができる[2]。プロテオロドプシンを恒常的に発現しているが、光照射の有無で増殖速度、最終収量ともに差が見られず、プロテオロドプシンは飢餓状態における生存性に関与すると考えられている[3]

細胞サイズは極めて小さく、対数期で長さ0.4〜1.3μm、直径0.19〜0.28μm程度の大きさしかない[4]。体積は0.037立方マイクロメートル程度で、これは大腸菌の1/30程度に過ぎない[4]。形態は桿菌または三日月形で、外膜と大きなペリプラズムを持ち、グラム陰性である。

全ゲノムはHTCC1062株について2005年に解読が報告された[5]。ゲノムサイズは1,308,759 bpORFは1354ヶ所と自由生活性の生物としてはかなり小型であるが、寄生性生物と異なり、多くのアミノ酸や補酵素の生合成経路を保持している。一方で、イントロントランスポゾン偽遺伝子などをほとんど含まず、遺伝子間スペーサー領域が短いなどコンパクトな構成をしている[5]

脚注

  1. ^ Rappé, M. S., et al. (2002). “Cultivation of the ubiquitous SAR11 marine bacterioplankton clade”. Nature 418 (6898): 630-3. doi:10.1038/nature00917. PMID 12167859. 
  2. ^ Carini, P., et al. (2013). “Nutrient requirements for growth of the extreme oligotroph 'Candidatus Pelagibacter ubique' HTCC1062 on a defined medium”. ISME J. 7 (3): 592-602. doi:10.1038/ismej.2012.122. PMID 23096402. 
  3. ^ Steindler, L., et al. (2011). “Energy starved Candidatus Pelagibacter ubique substitutes light-mediated ATP production for endogenous carbon respiration”. PLoS One. 6 (5). doi:10.1371/journal.pone.0019725. PMID 21573025. 
  4. ^ a b Zhao, X., et al. (2017). “Three-Dimensional Structure of the Ultraoligotrophic Marine Bacterium "Candidatus Pelagibacter ubique"”. Appl. Environ. Microbiol. 83 (3). doi:10.1128/AEM.02807-16. PMID 27836840. 
  5. ^ a b Giovannoni, S. J., et al. (2005). “Genome streamlining in a cosmopolitan oceanic bacterium”. Science 309 (5738): 1242-5. doi:10.1126/science.1114057. PMID 16109880.