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'''南関東地震活動期説'''(みなみかんとうじしんかつどうきせつ)は、[[日本]]の[[関東地方]]南部が、[[1980年代]]あるいは[[1990年代]]以降[[地震]]の活動期に入ったとする考え方、[[仮説]]である。 |
'''南関東地震活動期説'''(みなみかんとうじしんかつどうきせつ)は、[[日本]]の[[関東地方]]南部が、[[1980年代]]あるいは[[1990年代]]以降[[地震]]の活動期に入ったとする考え方、[[仮説]]である。 |
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== 解説 == |
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過去に日本の関東地方で起こった地震を時間を軸にして表にまとめると、その地域での最大規模([[マグニチュード]]8.0前後)の地震である[[関東地震]]が発生する前後の数年間~数十年間、地震の多い時期(活動期)が見られることがわかる。また、相対的に地震の少ない時期(静穏期)も見られる。このような傾向は[[西日本]]にも同様に見られる。 |
過去に日本の関東地方で起こった地震を時間を軸にして表にまとめると、その地域での最大規模([[マグニチュード]]8.0前後)の地震である[[関東地震]]が発生する前後の数年間~数十年間、地震の多い時期(活動期)が見られることがわかる。また、相対的に地震の少ない時期(静穏期)も見られる。このような傾向は[[西日本]]にも同様に見られる。 |
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関東地方が政治の中心となり人口も増えた[[江戸時代]]以降、この地域での災害研究や防災の必要性は増してきた。[[明治時代]]には[[地震学]]も発達した。こうした流れの中で、1923年に発生した[[関東大地震]]([[関東大震災]])の前後には盛んに地震予知に関する研究が行われた。その背景として、関東大地震前の数十年間に関東地方南部で被害を出すような大きな地震が相次いで発生し、地震が増えているとの認識が震災前からあったことが指摘されている。こうした理由から、南関東で地震の発生が周期的に変化しているとの説が早くから生まれていた。 |
関東地方が政治の中心となり人口も増えた[[江戸時代]]以降、この地域での災害研究や防災の必要性は増してきた。[[明治時代]]には[[地震学]]も発達した。こうした流れの中で、1923年に発生した[[関東大地震]]([[関東大震災]])の前後には盛んに地震予知に関する研究が行われた。その背景として、関東大地震前の数十年間に関東地方南部で被害を出すような大きな地震が相次いで発生し、地震が増えているとの認識が震災前からあったことが指摘されている。こうした理由から、南関東で地震の発生が周期的に変化しているとの説が早くから生まれていた。 |
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この後、 |
この後、[[河角広]]<ref>当時東大教授</ref>により「南関東大地震69年周説」というものが唱えられた<ref>河角広、[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography1889/79/3/79_3_115/_article/-char/ja 関東南部地震 69 年周期の証明とその発生の緊迫度ならびに対策の緊急性と問題点] 地学雑誌 79巻 (1970) 3号 p.115-138, {{doi|10.5026/jgeography.79.3_115}}</ref>。南関東では約69年(誤差十数年あり)周期で大地震が発生しており、次の大地震は1991年を中心とした前後数十年間に発生するのではないかという説である。主として鎌倉での被害地震の記録を元にたてられた説である<ref>[[フーリエ解析]]で卓越周期をみると、69年とその高調波がはっきりと現れた。</ref><ref>もっとも川角は証拠が弱いことを承知していたが、地震対策の遅れに警鐘を鳴らすためにあえて発表した。客観的には単なる学説ではあるが、人々の目を地震へむけるきっかけとなった。</ref>。これは[[1964年]]、国会の地震対策委員会でも取り上げられた。しかし、後になって周期的な地震には2種類あることが解明されたためにこれは否定され、新たな説が立てられた。 |
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これは[[1964年]]、国会の地震対策委員会でも取り上げられた。しかし、後になって周期的な地震には2種類あることが解明されたためにこれは否定され、新たな説が立てられた。 |
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南関東では、周期的に発生する地震が2種類ある。70年~80年に1回発生するM7クラスのプレート内(直下型)地震([[南関東直下地震]])と、約200年に1回発生するM8クラスのプレート間(海溝型)地震([[関東地震]])である。南関東の地震活動は、後者の約200年間隔の地震に合わせて変化しているとの説が有力であり、前回の活動期は関東大地震前の数十年間で、現在までの数十年間は静穏期ではないかとされている。 |
南関東では、周期的に発生する地震が2種類ある。70年~80年に1回発生するM7クラスのプレート内(直下型)地震([[南関東直下地震]])と、約200年に1回発生するM8クラスのプレート間(海溝型)地震([[関東地震]])である。南関東の地震活動は、後者の約200年間隔の地震に合わせて変化しているとの説が有力であり、前回の活動期は関東大地震前の数十年間で、現在までの数十年間は静穏期ではないかとされている。 |
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一方で、現在すでに活動期に入りつつあるとする考え方もある。1980年の[[伊豆半島東方沖地震]]、1987年の[[千葉県東方沖地震 (1987年)|千葉県東方沖地震]]、2005年の[[千葉県北東部地震]]や[[千葉県北西部地震]]など、中規模の地震の発生が増えていることを理由としている。また、1703年の[[元禄地震]] |
一方で、現在すでに活動期に入りつつあるとする考え方もある。1980年の[[伊豆半島東方沖地震]]、1987年の[[千葉県東方沖地震 (1987年)|千葉県東方沖地震]]、2005年の[[千葉県北東部地震]]や[[千葉県北西部地震]]など、中規模の地震の発生が増えていることを理由としている。また、1703年の[[元禄地震]](M8.2)に比べて1923年の[[関東大地震]](M7.9)は規模が小さく、エネルギーの解放が小さいため次の大地震の周期は短いのではないかという理由もある。 |
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また、南関東における地震の周期的変化の特徴として、静穏期から活動期へと地震活動が増えるとともに、毎回発生する地震の規模が次第に大きくなることが挙げられる。 |
また、南関東における地震の周期的変化の特徴として、静穏期から活動期へと地震活動が増えるとともに、毎回発生する地震の規模が次第に大きくなることが挙げられる。 |
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*1615年<ref>1615年6月26日(慶長20年6月1日)</ref>[[慶長江戸地震]] |
*1615年<ref>1615年6月26日(慶長20年6月1日)</ref>[[慶長江戸地震]](M6.4)→1649年<ref>1649年7月30日(慶安2年6月21日)</ref>[[慶安江戸地震]]([[武蔵・下野地震]])(M7.1)→1703年[[元禄大地震]](M8.2) |
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*1855年[[安政江戸地震]] |
*1855年[[安政江戸地震]](M6.9)→1894年[[明治東京地震]](M7.0)→1923年(大正12年)[[関東大地震]](M7.9) |
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これは西日本などとは異なる特徴である。また、関東大地震の後の1931年[[西埼玉地震]]などのように、200年周期の大地震の後は、大地震の発生地域が関東地方北部に移るとの考え方もある。 |
これは西日本などとは異なる特徴である。また、関東大地震の後の1931年[[西埼玉地震]]などのように、200年周期の大地震の後は、大地震の発生地域が関東地方北部に移るとの考え方もある。 |
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== 外部リンク == |
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* [http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/KOHO/HIGHLIGHT/jishin_yochi01.html 最近の異常地震活動とその評価] 溝上惠, 東京大学地震研究所, 地震予知, 1996年3月 |
* [http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/KOHO/HIGHLIGHT/jishin_yochi01.html 最近の異常地震活動とその評価] 溝上惠, 東京大学地震研究所, 地震予知, 1996年3月 |
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* [http://www.hinet.bosai.go.jp/about_earthquake/sec7.3. |
* [http://www.hinet.bosai.go.jp/about_earthquake/sec7.3.html 7.3 地震の周期性と活動期・静穏期] 地震の基礎知識, 防災科学技術研究所 |
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* [http://www.keiryu-bousai.jp/d2/m2122.html 2.1.2 どんな地震が発生する?(後編:迫りつつある首都直下型地震)] 厚田大祐, 働き盛り・忙しい方のための地震・洪水災害防災マニュアル東京近郊版(東京・神奈川・千葉・埼玉) |
* [http://www.keiryu-bousai.jp/d2/m2122.html 2.1.2 どんな地震が発生する?(後編:迫りつつある首都直下型地震)] 厚田大祐, 働き盛り・忙しい方のための地震・洪水災害防災マニュアル東京近郊版(東京・神奈川・千葉・埼玉) |
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* [http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/KOHO/KOHO/30/30-3.html 2000 年度地震研究所公開講義 |
* [http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/KOHO/KOHO/30/30-3.html 2000 年度地震研究所公開講義(1)元禄16年(1703年)の関東震災] 都司嘉宣, 東京大学地震研究所, 2000年10月18日 |
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* [http://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/report/78.htm 大震時における総合的被害予測モデルに関する研究] 独立行政法人建築研究所 研究報告 |
* [http://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/report/78.htm 大震時における総合的被害予測モデルに関する研究] 独立行政法人建築研究所 研究報告 |
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2018年3月12日 (月) 07:40時点における版
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南関東地震活動期説(みなみかんとうじしんかつどうきせつ)は、日本の関東地方南部が、1980年代あるいは1990年代以降地震の活動期に入ったとする考え方、仮説である。
解説
過去に日本の関東地方で起こった地震を時間を軸にして表にまとめると、その地域での最大規模(マグニチュード8.0前後)の地震である関東地震が発生する前後の数年間~数十年間、地震の多い時期(活動期)が見られることがわかる。また、相対的に地震の少ない時期(静穏期)も見られる。このような傾向は西日本にも同様に見られる。
関東地方が政治の中心となり人口も増えた江戸時代以降、この地域での災害研究や防災の必要性は増してきた。明治時代には地震学も発達した。こうした流れの中で、1923年に発生した関東大地震(関東大震災)の前後には盛んに地震予知に関する研究が行われた。その背景として、関東大地震前の数十年間に関東地方南部で被害を出すような大きな地震が相次いで発生し、地震が増えているとの認識が震災前からあったことが指摘されている。こうした理由から、南関東で地震の発生が周期的に変化しているとの説が早くから生まれていた。
この後、河角広[1]により「南関東大地震69年周説」というものが唱えられた[2]。南関東では約69年(誤差十数年あり)周期で大地震が発生しており、次の大地震は1991年を中心とした前後数十年間に発生するのではないかという説である。主として鎌倉での被害地震の記録を元にたてられた説である[3][4]。これは1964年、国会の地震対策委員会でも取り上げられた。しかし、後になって周期的な地震には2種類あることが解明されたためにこれは否定され、新たな説が立てられた。
南関東では、周期的に発生する地震が2種類ある。70年~80年に1回発生するM7クラスのプレート内(直下型)地震(南関東直下地震)と、約200年に1回発生するM8クラスのプレート間(海溝型)地震(関東地震)である。南関東の地震活動は、後者の約200年間隔の地震に合わせて変化しているとの説が有力であり、前回の活動期は関東大地震前の数十年間で、現在までの数十年間は静穏期ではないかとされている。
一方で、現在すでに活動期に入りつつあるとする考え方もある。1980年の伊豆半島東方沖地震、1987年の千葉県東方沖地震、2005年の千葉県北東部地震や千葉県北西部地震など、中規模の地震の発生が増えていることを理由としている。また、1703年の元禄地震(M8.2)に比べて1923年の関東大地震(M7.9)は規模が小さく、エネルギーの解放が小さいため次の大地震の周期は短いのではないかという理由もある。
また、南関東における地震の周期的変化の特徴として、静穏期から活動期へと地震活動が増えるとともに、毎回発生する地震の規模が次第に大きくなることが挙げられる。
- 1615年[5]慶長江戸地震(M6.4)→1649年[6]慶安江戸地震(武蔵・下野地震)(M7.1)→1703年元禄大地震(M8.2)
- 1855年安政江戸地震(M6.9)→1894年明治東京地震(M7.0)→1923年(大正12年)関東大地震(M7.9)
これは西日本などとは異なる特徴である。また、関東大地震の後の1931年西埼玉地震などのように、200年周期の大地震の後は、大地震の発生地域が関東地方北部に移るとの考え方もある。
ただし、現状では日本地震学会や気象庁などの公的研究機関がこの仮説を公に認めているわけではない。
こういった周期も考慮して、今後数十年以内に南関東で地震が発生する可能性はかなり高いと考えられており、政府の地震調査委員会の推定では南関東での直下型地震の発生確率(M7前後)は2007年~2036年の30年間で70%と非常に高い。
関連項目
脚注
- ^ 当時東大教授
- ^ 河角広、関東南部地震 69 年周期の証明とその発生の緊迫度ならびに対策の緊急性と問題点 地学雑誌 79巻 (1970) 3号 p.115-138, doi:10.5026/jgeography.79.3_115
- ^ フーリエ解析で卓越周期をみると、69年とその高調波がはっきりと現れた。
- ^ もっとも川角は証拠が弱いことを承知していたが、地震対策の遅れに警鐘を鳴らすためにあえて発表した。客観的には単なる学説ではあるが、人々の目を地震へむけるきっかけとなった。
- ^ 1615年6月26日(慶長20年6月1日)
- ^ 1649年7月30日(慶安2年6月21日)
参考文献
- 尾池和夫「21世紀前半は西日本の地震活動期」『なゐふる』第39号、日本地震学会、2003年9月、6-7頁。
外部リンク
- 最近の異常地震活動とその評価 溝上惠, 東京大学地震研究所, 地震予知, 1996年3月
- 7.3 地震の周期性と活動期・静穏期 地震の基礎知識, 防災科学技術研究所
- 2.1.2 どんな地震が発生する?(後編:迫りつつある首都直下型地震) 厚田大祐, 働き盛り・忙しい方のための地震・洪水災害防災マニュアル東京近郊版(東京・神奈川・千葉・埼玉)
- 2000 年度地震研究所公開講義(1)元禄16年(1703年)の関東震災 都司嘉宣, 東京大学地震研究所, 2000年10月18日
- 大震時における総合的被害予測モデルに関する研究 独立行政法人建築研究所 研究報告