隅田川物

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隅田川物(すみだがわもの)とは、人形浄瑠璃歌舞伎における世界のひとつ。の『隅田川』を原点とする梅若伝説を扱ったものをいう。

歌川広重「小倉擬百人一首 素性法師 信夫惣太・梅若丸」(『豊国国芳東錦絵』)

解説[編集]

おもな登場人物としては、京の公家吉田家の息子梅若丸、それを探しついには物狂いとなってしまう母の班女の前(ただし作品によって名前が違う)、梅若丸をさらうが殺してしまう人買いの忍ぶの惣太。忍ぶの惣太は実は吉田家のもと家臣で、それが主筋と知らずに梅若丸を殺してしまうというパターンが多い。また梅若丸の兄弟として松若丸も登場するが、班女の前や梅若丸よりもこの松若丸のほうが出番が多くなっている。他には吉田家の中間軍助など。

物語は悪人たちに吉田家を乗っ取られいったんはその家族は離散するが、やがては善人方の家臣たちの活躍によってお家再興を遂げる、というのが骨子となっている。

主な作品に近松門左衛門の『雙生隅田川』、奈河七五三助作の『隅田川続俤』、大南北の『桜姫東文章』や『隅田川花御所染』、河竹黙阿弥の『都鳥廓白浪』(忍の惣太)などがあり、今日では清元の舞踊『隅田川』がよく上演される。

月岡芳年「東名所隅田川梅若之古事」1883年

関連項目[編集]