蚊帳吊り狸

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蚊帳吊り狸(かやつりたぬき、かやつりだぬき)は、徳島県美馬市(旧美馬郡三島村舞中島)に伝わる妖怪

概要[編集]

寂しい夜道を人が歩いていると、道の真ん中に蚊帳が吊ってある。室内に吊る筈の蚊帳がなぜこんな野外に、と奇異に思いつつも通り抜けないと先へ進めないので、蚊帳をまくり上げてみると、その中にはまた蚊帳が吊ってある[1]。その蚊帳をまくると中にはさらに蚊帳が……と繰り返している内に、前にも後ろにも蚊帳がある状態となり、先へ進むどころかもとの場所へ戻ることもできず、一晩中その場で右往左往する羽目になってしまう[1]

この怪異に遭遇した際には決して慌てることなく、心を平静に保ち、丹田に力を込めて蚊帳をまくっていくと、36枚目の蚊帳をまくったときに外に出られるという[1]

正体は名前の通り、の仕業とされているが世が開けた現代となっては出現せず、過去の出来事として忘れ去られつつある[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 笠井新也 著「阿波の狸の話」、池田彌三郎他 編『日本民俗誌大系』 第3巻、角川書店、1974年、261頁。ISBN 978-4-04-530303-6