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'''エクリチュール'''とは
'''エクリチュール'''(仏:écriture、文字・書かれたもの、書法、書く行為、の意)とは[[パロール]](話し言葉)に対して用いられる、言語学的・哲学的用語の一つ。現代に入ってエクリチュールとパロールの二項対立とその差異に注目したのはフランス現代思想家の[[ジャック・デリダ]]である。

#[[フランス語]]:écriture、文字・書かれたもの、書法、書く行為、の意
#哲学用語。本稿の哲学用語にて詳述
#音楽用語。本稿の音楽用語にて詳述

==哲学用語==

[[パロール]](話し言葉)に対して用いられる、言語学的・哲学的用語の一つ。現代に入ってエクリチュールとパロールの二項対立とその差異に注目したのはフランス現代思想家の[[ジャック・デリダ]]である。


しかし、エクリチュールは思想家の数だけ、その言葉の意義が存在すると言っても過言ではない。例えば[[ジャック・デリダ]]においては西欧社会の[[パロール]]本位主義に対するアンチテーゼのシステムとして(「[[脱構築]]」を参照)、[[モーリス・ブランショ]]においては本質的に死を含む言語活動として、また[[ロラン・バルト]]においては快楽の知的媒介として。エクリチュールは話し言葉に対して、書き言葉の特質に注目したさいに用いられるタームなのである。
しかし、エクリチュールは思想家の数だけ、その言葉の意義が存在すると言っても過言ではない。例えば[[ジャック・デリダ]]においては西欧社会の[[パロール]]本位主義に対するアンチテーゼのシステムとして(「[[脱構築]]」を参照)、[[モーリス・ブランショ]]においては本質的に死を含む言語活動として、また[[ロラン・バルト]]においては快楽の知的媒介として。エクリチュールは話し言葉に対して、書き言葉の特質に注目したさいに用いられるタームなのである。


==音楽用語==
[[音楽]]用語としては、[[作曲]]に用いられる[[和声]]や[[対位法]]、[[管弦楽法]]、[[楽式]]などの書法上の技術をまとめてエクリチュールと呼ぶ。日本では[[東京藝術大学]]で教えた[[池内友次郎]]の影響により特にこのフランス語が定着している。

[[音楽]]用語としては、[[作曲]]に用いられる[[和声]]や[[対位法]]、[[管弦楽法]]、[[楽式]]などの書法上の技術をまとめて[[作曲法]]またはエクリチュールと呼ぶ。日本では[[東京藝術大学]]で教えた[[池内友次郎]]の影響により特にこのフランス語が定着している。'''書法'''という日本語も用いられる。

これらは作曲を学ぶ際別々の項目として、なおかつ同時並行して学ぶべきであり、音楽大学等の作曲専攻ではこれらの各項目が一つずつの単位として数えられるのが普通である。

作曲においてはこれらの書法が特にすぐれた音楽というものも多く存在するが、必ずしもその作品が作曲上革新的になるとは限らない。むしろ書法が優れるということは従来の様式においての技術の習得を示すものであり、保守的と見なされるのが常である。大学や音楽院などの音楽教育の場においては、この書法の習熟がまず評価の対象とされやすく、これは多くの作曲コンクールにおいても同じことが言える。ただし一部のコンクールでは書法の習熟よりも作品としての斬新さが優先して評価されるものもあり、こうしたコンクールおよびその審査員は好評を持って迎えられることが多く、また国際コンクールであれば世界的にその人気は高くなる傾向がある。


[[Category:言語学|えくりちゆる]]
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2006年7月2日 (日) 19:21時点における版

エクリチュールとは

  1. フランス語:écriture、文字・書かれたもの、書法、書く行為、の意
  2. 哲学用語。本稿の哲学用語にて詳述
  3. 音楽用語。本稿の音楽用語にて詳述

哲学用語

パロール(話し言葉)に対して用いられる、言語学的・哲学的用語の一つ。現代に入ってエクリチュールとパロールの二項対立とその差異に注目したのはフランス現代思想家のジャック・デリダである。

しかし、エクリチュールは思想家の数だけ、その言葉の意義が存在すると言っても過言ではない。例えばジャック・デリダにおいては西欧社会のパロール本位主義に対するアンチテーゼのシステムとして(「脱構築」を参照)、モーリス・ブランショにおいては本質的に死を含む言語活動として、またロラン・バルトにおいては快楽の知的媒介として。エクリチュールは話し言葉に対して、書き言葉の特質に注目したさいに用いられるタームなのである。

音楽用語

音楽用語としては、作曲に用いられる和声対位法管弦楽法楽式などの書法上の技術をまとめて作曲法またはエクリチュールと呼ぶ。日本では東京藝術大学で教えた池内友次郎の影響により特にこのフランス語が定着している。書法という日本語も用いられる。

これらは作曲を学ぶ際別々の項目として、なおかつ同時並行して学ぶべきであり、音楽大学等の作曲専攻ではこれらの各項目が一つずつの単位として数えられるのが普通である。

作曲においてはこれらの書法が特にすぐれた音楽というものも多く存在するが、必ずしもその作品が作曲上革新的になるとは限らない。むしろ書法が優れるということは従来の様式においての技術の習得を示すものであり、保守的と見なされるのが常である。大学や音楽院などの音楽教育の場においては、この書法の習熟がまず評価の対象とされやすく、これは多くの作曲コンクールにおいても同じことが言える。ただし一部のコンクールでは書法の習熟よりも作品としての斬新さが優先して評価されるものもあり、こうしたコンクールおよびその審査員は好評を持って迎えられることが多く、また国際コンクールであれば世界的にその人気は高くなる傾向がある。