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==背景==
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ドット絵は、主に黎明期から80年代にかけてのPCもしくはコンシューマー向け[[ゲーム機]]で、もっともよく用いられた表現形態である。
ドット絵は、主に黎明期から[[1980年代]]にかけての[[パソコン]]もしくはコンシューマー向け[[ゲーム機]]で、もっともよく用いられた表現形態である。


当時は、ハードウェアにおける画面の[[解像度]]やメモリ容量、[[CPU]]速度などの制約、およびそれを受けたソフトウェア的な制約から、[[ベクトル]]画像や大規模なビットマップ画像を使用できなかったため、やむなく限られた解像度・色数などでグラフィックを表現する必要性があった。その中で、いかに美しさや視認性の良さを追求するかが、当時のグラフィック作成における肝であった。
当時は、ハードウェアにおける画面の[[解像度]]や[[記憶装置|メモリ]]容量、[[CPU]]速度などの制約、およびそれを受けた[[ソフトウェア]]的な制約から、[[ベクトル]]画像や大規模なビットマップ画像を使用できなかったため、やむなく限られた解像度・色数などでグラフィックを表現する必要性があった。その中で、いかに美しさや視認性の良さを追求するかが、当時のグラフィック作成における肝であった。


特に、移動するオブジェクトについては[[スプライト]]という小さな画像単位で扱う必要があり、したがって、ゲームのキャラクターなどは総じてこのスプライト内に収めるために、何らかのデフォルメを施されて表現されることとなった。また、キャラクターのデザインにおいて、ドット絵で表現されることを前提とした特徴を備えさせることも珍しくない。[[マリオ (ゲームキャラクター)|マリオ]]の口ひげが、最たる例である。
特に、移動するオブジェクトについては[[スプライト]]という小さな画像単位で扱う必要があり、したがって、ゲームのキャラクターなどは総じてこのスプライト内に収めるために、何らかのデフォルメを施されて表現されることとなった。また、キャラクターのデザインにおいて、ドット絵で表現されることを前提とした特徴を備えさせることも珍しくない。[[マリオ (ゲームキャラクター)|マリオ]]の口ひげが、最たる例である。

2008年9月18日 (木) 09:01時点における版

ドット絵で描かれたウィキペたん。これは4倍に拡大したもの。
実寸

ドット絵とは、主としてコンピュータ上における画像の表現方法・作成方法の一形態であり、表層的には通常の目視でピクセルが判別できる程度に解像度が低いビットマップ画像と捉えることができる。

しかし実際には、限られたピクセル数の中で表現し切るという制約やピクセルを手作業で1つずつ配置するという作成プロセス等も含めてドット絵であると認識されていることが多く、それゆえに単に写真などのビットマップ画像を拡大したものは、一般にドット絵とは認識されない。

背景

ドット絵は、主に黎明期から1980年代にかけてのパソコンもしくはコンシューマー向けゲーム機で、もっともよく用いられた表現形態である。

当時は、ハードウェアにおける画面の解像度メモリ容量、CPU速度などの制約、およびそれを受けたソフトウェア的な制約から、ベクトル画像や大規模なビットマップ画像を使用できなかったため、やむなく限られた解像度・色数などでグラフィックを表現する必要性があった。その中で、いかに美しさや視認性の良さを追求するかが、当時のグラフィック作成における肝であった。

特に、移動するオブジェクトについてはスプライトという小さな画像単位で扱う必要があり、したがって、ゲームのキャラクターなどは総じてこのスプライト内に収めるために、何らかのデフォルメを施されて表現されることとなった。また、キャラクターのデザインにおいて、ドット絵で表現されることを前提とした特徴を備えさせることも珍しくない。マリオの口ひげが、最たる例である。

現在のドット絵

ドット絵という表現技法は、スーパーファミコンが家庭用ゲーム機のメインプラットフォームだった時代に、一つの頂点を迎えた。しかし、続くプレイステーションセガサターンといったポリゴンを利用したハードウェアが主流になると、ドット絵による表現はむしろ衰退していった。

現在ではハードウェア・ソフトウェアともに格段の進歩を遂げ、ドット絵によって表現せざるを得ない状況は少なくなってきている。しかし、携帯ゲーム機などの低価格なハードウェアや、携帯電話アプリゲームなどでは、少ないピクセル数・色数での表現が依然として求められるほか、ポリゴンモデルの表面に施されるテクスチャマッピングなどでも、処理能力の都合から低解像度のビットマップ画像を用いる必要があるなど、ドット絵の需要は現在でも存在する。一方、そうした必然性とは別に、近年のレトロゲームを見直す動きに付随して、限られた表現力から生まれるデフォルメ感や、俳句にも似たミニマリズムといったドット絵ならではの「味わい」に再び注目が集まり、積極的な表現形態として、意図的な部分も含めて用いられる例も徐々に増えてきている。

現在でも、ドット絵は(2Dに限られるものの)ポリゴンより細密な描写が可能である、と評価するユーザーは多い。にもかかわらず、ドット絵が急速に廃れた背景には、ドット絵の製作には膨大な手間と時間がかかる一方、ポリゴンでの表現方法のほうが結局は安くつく、という作り手側の事情も存在した。

ポリゴンによるアートワークの製作は、3Dモデルを構成する最初こそ手間がかかるものの、モデルさえ完成してしまえばあとはそれに骨組みを埋め込み、簡単な操作を行う事で様々なアニメーションを作ることができるという点で優位であった。これをドット絵で表現しようとした場合、必要なだけの枚数のドット絵をひとつひとつ描かなくてはならないうえ、キャラクターデザイン等の修正が入った場合に、3Dモデルならば多少の修正を施せば済む一方、ドット絵ではそのキャラクターの絵を丸ごと修正する必要があり、場合によってはせっかく描いたデータをすべて廃棄しなくてはならないというリスクも伴っていた。

この為、近年SFC時代以前の2D的な名作がリメイクされる場合などでも、ドット絵は利用されないケースが多い。こうした現状を嘆く声もあるが、ドット絵全盛期の頃のような緻密なドット配置が可能な人材は現在では大変少なくなっており、大規模な開発の際に等しく高い技術を持つスタッフを大勢揃えるのは現実には難しいのが実情である。

関連項目

外部リンク