「大会社」の版間の差分

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'''大会社'''(だいがいしゃ)とは、大きな[[会社]]を意味する語であるが、日本法上で、[[株式会社]]のうち資本金が5億円以上または負債額が200億円以上の条件を満たす特に規模の大きい会社をいう。[[b:会社法第2条]]6号において定義されている。
'''大会社'''(だいがいしゃ)とは、大きな[[会社]]を意味する語。又は[[日本]]の[[会社]]の概念で、[[株式会社]]の一種。[[b:会社法第2条|会社法2条]]6号により定義される。
*会社法について以下で条数のみ記載する。
*以下、日本の会社法については条数のみ記載する。


==概要==
==定義==
大会社とは、[[最終事業年度]]([[b:会社法第2条|2条24号]])にかかる[[貸借対照表]]上、以下のいずれかの要件を充たす株式会社をいう。
2006年5月の会社法施行前は[[株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律]]でその規律が定められていた。旧法で大会社のみに認められていたものが、現在は大会社以外でも可能になったものもある([[委員会設置会社]]など)。
#[[資本金]]として計上した額が5億円以上
#[[負債]]として計上した額の合計額が200億円以上


==成立経緯==
なお、会社は、会社につての制限を除いて機関設計が自由となり、小会社の特例規定なくなったので'''小会社の定義はない'''。下での小会社については「[[株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律]]」の記事を参照)
日本法上、初めて「大会社」の概念が用いられたのは、[[株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律]](商法特例法)においてである。2006年5月に施行された[[会社法]]においても、「大会社」概念は引き継がれており、その内容も基本的には変わらない。


ただし、資本金についても「最終事業年度に係る[[貸借対照表]]」における額とすることで、年度途中に資本金の額が変更した場合に大会社の要件を満たさなくなるのかという従来の疑義を解決している。
==定義==
最終事業年度に係る[[貸借対照表]]において、[[資本金]]として計上した額が5億円以上であるか、または負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であることが要件である。


また、会社法においては、同じ「大会社」であっても、公開会社(上場企業という意味ではない)であるか、公開会社でない会社であるかにより、規制内容が異なることとなった。
この要件は、基本的には旧商法特例法と同様であるが、資本金についても「最終事業年度に係る[[貸借対照表]]」における額とすることで、年度途中に資本金の額が変更した場合に大会社の要件を満たさなくなるのかという従来の疑義を解決している。


なお、特例法においては、規制の簡略化された「小会社」とう概念も用られいた。しかし会社法においては、小会社概念用いられていない(会社施行前における「小会社については「[[株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律]]」の項目を参照)
==主な規律==
大会社の場合は社会に与える影響が大きいので、その業務が適正に行われるように一定のかけられている。


==大会社に対する規律==
*[[会計監査人]]の設置義務([[公開会社]][[b:会社法第328条|328条]]1項、[[非公開会社]]:328条2項、[[委員会設置会社]][[b:会社法第327条|327条]]5項
大会社の場合は社会に与える影響が大きいので、その業務が適正に行われるよう、企業統治及び情報開示関する規制がある。以下、列挙する。
**委員会設置会社以外の[[会計監査人設置会社]]には、監査役設置義務(327条3項)

*公開会社(委員会設置会社除く)の[[監査役会]]設置義務(328条1項)
*[[会計監査人]]の設置義務
*[[取締役]]又は[[取締役会]]において[[業務の適正を確保するための体制]]の決定義務(取締役会非設置会社[[b:会社法第348条|348条]]4項、取締役会設置会社[[b:会社法第362条|362条]]5項
:[[公開会社]]については[[b:会社法第328条|328条]]1項、[[非公開会社]]については328条2項、[[委員会設置会社]]については[[b:会社法第327条|327条]]5項がそれぞれ規定する。
*大会社が公開会社でもある場合には、(委員会設置会社除く)の[[監査役会]]設置義務(328条1項)
:よって大会社は、監査役会か委員会のいずれかを設置する義務を負うことになる。
*[[取締役]]又は[[取締役会]]において[[業務の適正を確保するための体制]](内部統制システム)を決定する義務
:取締役会非設置会社については[[b:会社法第348条|348条]]4項、取締役会設置会社については[[b:会社法第362条|362条]]5項がそれぞれ規定する。
*損益計算書についての広告義務(440条1項)
*[[連結計算書類]]作成義務([[b:会社法第444条|444条]]3項)
*[[連結計算書類]]作成義務([[b:会社法第444条|444条]]3項)
:ただし、有価証券報告書提出会社に限られる。
*清算中の監査役設置義務([[b:会社法第477条|477条]]4項)
*清算中の監査役設置義務([[b:会社法第477条|477条]]4項)


上記の通り、大会社は全て[[会計監査人設置会社]]となるが、委員会設置会社でない大会社おいては、監査役設置する義務がある(327条3項)
会社法においては、[[株主総会]]・[[取締役]]以外の機関の設置は、定款に委ねられている(定款自治)が、大会社の場合は一定の制限がある点に注意(詳しくは、[[公開会社]]の項の表を参照)。

==参考文献==
*相澤哲ほか『論点解説 新・会社法』(商事法務、2006)277頁以下
*相澤哲ほか『一問一答 新・会社法』(商事法務、2005)113頁以下


==関連項目==
==関連項目==
*[[株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律]](旧における規律は、この項目詳載されている)
*[[株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律]]
:会社施行前における「大会社」ついて規定している
*[[株式会社]]
*[[株式会社]]
*[[委員会等設置会社]]
*[[委員会等設置会社]]

2008年8月19日 (火) 16:01時点における版

大会社(だいがいしゃ)とは、大きな会社を意味する語。又は、日本会社法上の概念で、株式会社の一種。会社法2条6号により定義される。

  • 以下、日本の会社法については条数のみを記載する。

定義

大会社とは、最終事業年度2条24号)にかかる貸借対照表上、以下のいずれかの要件を充たす株式会社をいう。

  1. 資本金として計上した額が5億円以上
  2. 負債として計上した額の合計額が200億円以上

成立経緯

日本法上、初めて「大会社」の概念が用いられたのは、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)においてである。2006年5月に施行された会社法においても、「大会社」概念は引き継がれており、その内容も基本的には変わらない。

ただし、資本金についても「最終事業年度に係る貸借対照表」における額とすることで、年度途中に資本金の額が変更した場合に大会社の要件を満たさなくなるのかという従来の疑義を解決している。

また、会社法においては、同じ「大会社」であっても、公開会社(上場企業という意味ではない)であるか、公開会社でない会社であるかにより、規制内容が異なることとなった。

なお、商法特例法においては、規制の簡略化された「小会社」という概念も用いられていた。しかし会社法においては、小会社概念は用いられていない(会社法施行前における「小会社」については「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」の項目を参照)。

大会社に対する規律

大会社の場合は社会に与える影響が大きいので、その業務が適正に行われるよう、企業統治及び情報開示に関する規制がある。以下、列挙する。

公開会社については328条1項が、非公開会社については328条2項が、委員会設置会社については327条5項がそれぞれ規定する。
  • 大会社が公開会社でもある場合には、(委員会設置会社除く)の監査役会設置義務(328条1項)
よって大会社は、監査役会か委員会のいずれかを設置する義務を負うことになる。
取締役会非設置会社については348条4項、取締役会設置会社については362条5項がそれぞれ規定する。
ただし、有価証券報告書提出会社に限られる。
  • 清算中の監査役設置義務(477条4項)

上記の通り、大会社は全て会計監査人設置会社となるが、委員会設置会社でない大会社においては、監査役を設置する義務がある(327条3項)。

参考文献

  • 相澤哲ほか『論点解説 新・会社法』(商事法務、2006)277頁以下
  • 相澤哲ほか『一問一答 新・会社法』(商事法務、2005)113頁以下

関連項目

会社法施行前における「大会社」について規定している。