「ホイールベース」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
鉄道に関するホイールベースについて追記
1行目: 1行目:
[[画像:Wheelbase001.png|thumb|220px|範囲「A」がホイールベース]]
[[画像:Wheelbase001.png|thumb|220px|範囲「A」がホイールベース]]
'''ホイールベース'''([[英語|英]]: wheelbase)とは、車両において、前輪軸と後輪軸との距離を表すもので、日本語で「最遠軸距」と表記される。また、その値は自動車ではmm単位で表示されることが多い。
'''ホイールベース'''([[英語|英]]: wheelbase)とは、車両において、前輪軸と後輪軸との距離を表すもので、日本語で「最遠軸距」と表記される。ホイールベースの値はmm単位で表示されることが多い。


== 自動車 ==
この数値を大きくすると車体の前後方向の揺れ、すなわちピッチングが抑えられるのと、居住空間が拡大できるという利点がある反面、小回りが効かなくなる傾向が出る。この数値を小さくすると小回りに優れるものの、ピッチングが大きくなる傾向が出る。誤解を招きやすいが、'''ホイールベース'''が長い=コーナーリングが苦手となる訳ではない。
自動車ではホイールベースを大きくすると車体の前後方向の揺れ、すなわちピッチングが抑えられるのと、居住空間が拡大できるという利点がある反面、小回りが効かなくなる傾向が出る。この数値を小さくすると小回りに優れるものの、ピッチングが大きくなる傾向が出る。誤解を招きやすいが、'''ホイールベース'''が長い=コーナーリングが苦手となる訳ではない。


ホイールベースの外側、つまり車輪軸から車両端部までの距離を'''オーバーハング'''といい、前輪軸から前端部までの距離を'''フロントオーバーハング'''、後輪軸から後端部までの距離を'''リアオーバーハング'''という。この3つの寸法は自動車の走行性能を左右する要素となる。乗用車においては、最近は、ホイールベースをなるべく大きく設定してピッチングを抑える、乗り心地優先の設計が主流となっている(キャビンも大きく取れるため、実用面でも歓迎されている)。
ホイールベースの外側、つまり車輪軸から車両端部までの距離を'''オーバーハング'''といい、前輪軸から前端部までの距離を'''フロントオーバーハング'''、後輪軸から後端部までの距離を'''リアオーバーハング'''という。この3つの寸法は自動車の走行性能を左右する要素となる。乗用車においては、最近は、ホイールベースをなるべく大きく設定してピッチングを抑える、乗り心地優先の設計が主流となっている(キャビンも大きく取れるため、実用面でも歓迎されている)。


==関連項目==
== 鉄道 ==
鉄道でも車輪の間隔をホイールベースと呼ぶ。ただし軸距、あるいは固定軸距という表現の方がよく用いられる。[[二軸車 (鉄道)|二軸車]]では自動車と同様に車軸の間隔が軸距である。一方[[ボギー台車]]を装備した車両(ボギー車)では、1つの[[鉄道車両の台車|台車]]に装備されている車軸の間隔を軸距と呼び、その台車同士の間隔を台車間隔あるいはボギーセンターと呼ぶ。
*[[トレッド (自動車)|トレッド]](左右車軸の距離を表す)

二軸車でもボギー台車でも、通常は同一車両(同一台車)の車軸は向きが固定されており、自動車のようにカーブの内側を向けることはできないため、軸距が長くなると線路に掛かる圧力(横圧)が大きくなり、線路の歪みを引き起こして保線作業に手間が掛かるなどの悪影響が出てくる。横圧が大きくなりすぎると脱線をもたらす事もあるため、軸距を大きく取りすぎることはできない。一方、軸距を小さくしすぎると蛇行動を引き起こす要因となる。脱線と蛇行動を抑止して高速走行を実現するためには、軸距と台車や車軸に取り付けられたバネの定数、台車の設計などの間に適切な関係を見つける必要がある。日本の在来線では、軸距は3.5m以上4.57m以下と定められている<ref name = "railway_engineering_handbook">[[久保田博|久保田 博]]「鉄道工学ハンドブック」グランプリ出版 1995年 p.149 ISBN 4-87687-163-9</ref>。

ボギー車では、台車の間隔を長くすることで、軸距を長くすることなく車体長を長くできる。しかしながら、鉄道では[[軌道回路]]を利用して列車の現在位置を検知していることがあり、その場合車輪の間隔があまり大きくなりすぎると検知に失敗してしまう(1つの軌道回路の長さより車輪間隔が大きくなってしまう)ことがあるため、ボギーセンターの長さも規制されている。日本の在来線では、ボギーセンターは13m以下と定められている<ref name = "railway_engineering_handbook" />。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references />

== 関連項目 ==
* [[トレッド (自動車)|トレッド]](左右車軸の距離を表す)
* [[車両限界]]


{{car-stub}}
{{car-stub}}
{{tech-stub}}
{{tech-stub}}
[[Category:自動車工学|ほいるへす]]
{{DEFAULTSORT:ほいるへ}}
[[Category:自動車工学]]
[[Category:鉄道車両工学]]


[[de:Radstand]]
[[de:Radstand]]

2008年7月2日 (水) 16:55時点における版

範囲「A」がホイールベース

ホイールベース: wheelbase)とは、車両において、前輪軸と後輪軸との距離を表すもので、日本語で「最遠軸距」と表記される。ホイールベースの値はmm単位で表示されることが多い。

自動車

自動車ではホイールベースを大きくすると車体の前後方向の揺れ、すなわちピッチングが抑えられるのと、居住空間が拡大できるという利点がある反面、小回りが効かなくなる傾向が出る。この数値を小さくすると小回りに優れるものの、ピッチングが大きくなる傾向が出る。誤解を招きやすいが、ホイールベースが長い=コーナーリングが苦手となる訳ではない。

ホイールベースの外側、つまり車輪軸から車両端部までの距離をオーバーハングといい、前輪軸から前端部までの距離をフロントオーバーハング、後輪軸から後端部までの距離をリアオーバーハングという。この3つの寸法は自動車の走行性能を左右する要素となる。乗用車においては、最近は、ホイールベースをなるべく大きく設定してピッチングを抑える、乗り心地優先の設計が主流となっている(キャビンも大きく取れるため、実用面でも歓迎されている)。

鉄道

鉄道でも車輪の間隔をホイールベースと呼ぶ。ただし軸距、あるいは固定軸距という表現の方がよく用いられる。二軸車では自動車と同様に車軸の間隔が軸距である。一方ボギー台車を装備した車両(ボギー車)では、1つの台車に装備されている車軸の間隔を軸距と呼び、その台車同士の間隔を台車間隔あるいはボギーセンターと呼ぶ。

二軸車でもボギー台車でも、通常は同一車両(同一台車)の車軸は向きが固定されており、自動車のようにカーブの内側を向けることはできないため、軸距が長くなると線路に掛かる圧力(横圧)が大きくなり、線路の歪みを引き起こして保線作業に手間が掛かるなどの悪影響が出てくる。横圧が大きくなりすぎると脱線をもたらす事もあるため、軸距を大きく取りすぎることはできない。一方、軸距を小さくしすぎると蛇行動を引き起こす要因となる。脱線と蛇行動を抑止して高速走行を実現するためには、軸距と台車や車軸に取り付けられたバネの定数、台車の設計などの間に適切な関係を見つける必要がある。日本の在来線では、軸距は3.5m以上4.57m以下と定められている[1]

ボギー車では、台車の間隔を長くすることで、軸距を長くすることなく車体長を長くできる。しかしながら、鉄道では軌道回路を利用して列車の現在位置を検知していることがあり、その場合車輪の間隔があまり大きくなりすぎると検知に失敗してしまう(1つの軌道回路の長さより車輪間隔が大きくなってしまう)ことがあるため、ボギーセンターの長さも規制されている。日本の在来線では、ボギーセンターは13m以下と定められている[1]

脚注

  1. ^ a b 久保田 博「鉄道工学ハンドブック」グランプリ出版 1995年 p.149 ISBN 4-87687-163-9

関連項目