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2008年4月19日 (土) 00:46時点における版

異界(いかい)とは、本来は彼岸浄土黄泉来世あの世などと同じく、人が死後に行くとされているころの意味である。しがし、フィクション作品においては、普通の人間には行くことが出来ない世界、あるいは同じ世界の中にあるにもかかわらず、普通の人が暮らしている社会とは、視点、価値観、環境などが著しく異なっている場所のことを異界と呼ぶことがある。

さまざまな異界

現実社会の中の異界

刑務所

やくざのあいだでは、刑務所の中に対して、外の社会を娑婆という。娑婆とは普通の人が暮らしている「この世」のことであるから、刑務所の塀の中を「あの世」つまり異界と見なしているわけである。実際、服役囚たちは、携帯電話もパソコンもつかえず、手紙のやりとりも検閲があるなど、一般社会からは著しく隔離されている。

やくざ

そうした意味では、やくざ社会もまた異界の一つである。国民が社会生活を営むよりどころとしている法に対し、全く遵守する意思を持たず、独自の掟を持っている。また、一種の符牒である独特のやくざ言葉が使われている。東映のヤクザ映画や、やくざをテーマにしたエンターテインメント小説に人気があるのは、こうした違った価値観を持つ人たちの視点で社会を見るおもしろさがあるからだろう。

隔離施設

異界ものの小説として有名なものに、まず北條民雄いのちの初夜を初めとする一連の作品がある。らい(ハンセン病)の隔離施設は、刑務所以上の異界である。囚人は刑期が開ければ出所できるが、重症のハンセン病患者は、死ぬまで外へ出られないからである。しかし、この作品群は、究極の状態に追いつめられた人間の心理を、鋭いタッチで描いている。

被差別部落

中上健次の「岬」や「枯木灘」など、関西などでは今でもしばしば問題になっている部落も異界といえる。

盲人の社会

障害者、とくに視覚障害者知的障害者は、一般の人たちとのふれあいも少なく、また、ほとんどの人が就業できない「異界」の生活者である。谷崎潤一郎の「春琴抄」や「盲目物語」など、盲人が主人公になっている作品はあるが、さすがの文豪も、本当の盲人の視点というのはわからないようである。

盲人による、盲人をテーマとした優れた文芸作品はほとんどない。盲人が使っている点字は、オールひらがなであり、大半の盲人は漢字の知識がないからである。2006年に文芸社から出版された「虹の輪」は、さほど優れた作品ではないが、視覚障害者が自分の視点で書いたもので、山梨日日新聞の読書欄に、「障害を持つ人にしかわからない心の機微を誠実に描いている」という書評が掲載された。

学校

ビジネスマンから公立高校の校長になった大島謙は、民間企業の常識が通用しない教育現場を「異界」と表現している。これは教師の立場から見たものだが、フィクションにおいても学校が一般社会から隔離された独自の秩序を持つ世界として(もっぱら生徒の立場から)描写されることが多い。作品によっては、現実にはありえないほど巨大な学校(蓬莱学園が代表例)や、全寮制などで一般社会との接点が限りなく少ない学校が舞台になることもある。

宇宙

無重力・真空の宇宙空間や、地球とは環境が全く違う別の惑星など。

電脳空間

サイバースペースとも呼ばれる、コンピュータネットワークの中に存在する世界。

過去または未来

現代とは社会体制や文化が異なる別の時代。過去の場合、主人公たちがその時代についての知識を持っていればある程度対処できる一方、不用意な行動によってタイムパラドックスを発生させてしまう危険も伴う。

異次元の世界

現実世界と大きくかけ離れた(しかし、往々にして現実世界と密接な関係にある)世界。いわゆる「魔法の国」などがこれにあたる。

並行世界

パラレルワールドとも呼ばれる、似ているけど何かが違う世界。理論的には無数に存在し、主人公たちにとっての本来の世界もその一つに過ぎない。

精神世界

特定の個人の心や夢の中の世界。当人の意思、または無意識にイメージしたものがそのまま現実化するといった描写をされることが多い。

霊界

死後の世界(すなわち本来の意味での異界)や、神々の世界など。

関連項目