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'''航空工学''' (こうくうこうがく Aeronautic engineering, AE)とは[[航空機]]の設計製造、制御に関する[[工学]]である。優れた航空機を研究開発することを目的とする。
'''航空工学'''こうくうこうがく、aeronautical engineering)とは[[航空機]]の設計製造・運用・整備等に関する[[工学]]である。優れた航空機を研究開発することを目的とする。


== 概説 ==
== 概説 ==
航空工学とは航空機に関する工学的な研究を指すものであり、[[流体力学]][[制御工学]][[機械工学]]などを基礎とし、その領域は今日においては飛行力学、航空制御工学航空機構造力学、航空電子工学、航空安全工学などに分化してる学問である
航空工学とは航空機に関する工学的な研究を指すものであり、[[流体力学]][[材料力|材料]]/[[構造力学]]・[[熱力学]]・[[制御工学]]などを基礎とする問である。発展の歴史や扱う対象の類似から[[宇宙工学]]とまとめて'''[[航空宇宙工学]]'''と呼ばれることも多い。


航空機は大気中を航行する能力を持つ交通手段であり、物資や人員を航空能力よって輸送することが可能である。航空機はまず飛行する能力が求められるが、これには[[空力学]]的な原理に基づいた[[工学]]設計理論が必要となる。空力学は[[流体力学]]の一分野であり、[[空気]]の[[流れ]]によって[[翼]]や胴体にはたらく力を扱う。[[ベルヌーイの定理]]に示されるように非粘性の定常的な体中において流速度が上がれば負圧が生まれることが分かっており従って単一流線型ある[[]]に迎え角を与えて上面よりも下面の流遅くすることによりその翼には[[揚力]]が作用す。この揚力とさらに流いて常に進行方向とは逆の方向に作用する[[抗力]]との[[力]]によって航空機は飛行を行うこる。つまり水平飛行中の航空機は下方への[[重力]]方への揚力、前方への推力方への抗力の四つの力かかることが分かる。
航空機は大気中を航行する能力を持つ交通手段であり、物資や人員を迅速に輸送することが可能である。航空機はまず飛行する能力が求められるが、これには飛行する[[レイノルズ数]] (Re) や[[マッハ数]]に応じた力学理に基づ工学的設計指針が必要となる。空力学は[[流体力学]]の一分野であり、[[空気]]の[[流れ]]によって[[翼]]や胴体にはたらく力を扱う。人や物資を輸送するスケール(Re = 10<sup>6</sup>程度以上)の航空機には一般に定常ないし準定常の空気力学が適用される。[[ベルヌーイの定理]]に示されるように非粘性の定常流において流大きなところでは負圧が生ることが分かっているが現実航空機翼に適当な迎え角を与えて表面([[境界層]])から少し離れた上面の流加速させ、発生する負圧により揚力を得て飛行してい(負圧を表面全体にいて積分して得られる空気力ベクトルのうち、飛行方向と平行な成分を[[抗力]]、垂直な成分を[[力]]と呼んしたがって、水平定常飛行中の航空機向きの[[重力]]向きの揚力、前向きの推力向きの抗力それぞれ釣り合っていることになる。


また[[航空気象]]も航空機の飛行に大きな影響を与えることが分かっている。大気はその性質が地域、気候、局地的な天候により変化するため、[[国際民間航空機構]]により標準大気が定められている。これに基づけ亜海面高度の大気圧を水銀柱75.99センチメートル、温度を接し15度と仮定した上で、高度300メートルごとに温度が1.98度低下する、としている。また1万1000メートルを基準として、それより上空を[[成層圏]]、それより低空を対流圏と定めて成層圏の気温はマイナス56.5度で安定しており、酸素濃度や大気圧も高空になればなるほど低下していく。航空において雲や天候、突風は飛行の障害となりうる要素であり、また有視界距離は飛行方式左右する重大な条件である。
また[[航空気象]]も航空機の飛行に大きな影響を与えることが分かっている。大気はその性質が地域、気候、局地的な天候により変化するため、[[国際標準大気]]が定められている。1万1000メートルより上空を[[成層圏]]、それより低空を対流圏と定めて成層圏の気温はマイナス56.5度で安定しており、酸素濃度や大気圧も高空になればなるほど低下していく。航空において雲や天候、突風は飛行の障害となりうる要素であり、また有視界距離は飛行方式左右する重大な条件である。


以上のようなさまざまな航空力学的な制約の下で安全性、推進力、揚力、制御性などを確保した航空機は設計されなければならない。航空機は固定翼機回転翼機など分類されるが、固定翼機は基本的に胴体、その胴体の両側に位置する主翼、胴体の後部に置かれる尾翼、主翼または尾翼に取り付けられる推進機関のエンジン、胴体下部の降着装置などから構成されており、主翼の補助翼、尾翼には縦向きの方向舵と横向きの昇降舵が取り付けられている。エンジンにより推力を作り、流体中において主翼により揚力を生み出している。尾翼の方向舵は左右に動くことにより鉛直的に機首を左右、昇降舵は上下に動くことにより上下に機首を垂直的に上下させる機能がある。
さまざまな制約の下で安全性、推進力、揚力、制御性などを確保した航空機は設計されなければならない。航空機は[[固定翼機]]と[[回転翼機]]に分類されるが、固定翼機は基本的に胴体、その胴体の両側に位置する主翼、胴体の後部に置かれる尾翼、推進機関のエンジン、降着装置、その他のシステムから構成されており、主翼の補助翼、尾翼には縦向きの方向舵と横向きの昇降舵が取り付けられている。エンジンにより推力を作り、流体中において主翼により主な揚力を生み出している。尾翼の方向舵は左右に動くことにより機首を左右に振り、昇降舵は上下に動くことにより機首を上下させる機能がある。


航空機を制御する機能は通常胴体前部に位置する[[コクピット]]に集約されており、基本的な制御装置は操縦桿、ラダー、ストットルである。操縦桿を前に倒すと尾翼の昇降舵が下がるために機首を上げ、右に倒すと右補助翼が上がりかつ左補助翼が下がるために機体は右方向に傾斜する。ラダーは左右両足に対して二つあり、右の使用すると尾翼の方向舵が右へ傾くために機首は右方向へ向く。スロットルはエンジンの推力を操作するものであり、奥へ倒すと出力が上昇する。これらの機能を用いて航空機を操縦することになるため、航空機は基本的に左右の[[ロール]](横転)、[[ピッチ]](迎え角)の上下、[[ヨー]](鉛直軸に対する回転)の三つの運動を組み合わせて行わなければならない。
航空機を制御する機能は通常胴体前部に位置する[[コクピット]]に集約されており、基本的な入力装置は操縦桿、ラダーペダル、ストットルである。操縦桿を前に倒すと尾翼の昇降舵が下がるために機首を上げ、右に倒すと右補助翼が上がりかつ左補助翼が下がるために機体は右方向に傾斜する。ラダーペダルは左右両足に対して二つあり、右の踏み込むと尾翼の方向舵後縁が右へ傾くために機首は右方向へ向く。スロットルはエンジンの推力を操作するものであり、奥へ倒すと出力が上昇する。これらの機能を用いて航空機を操縦することになるため、航空機は基本的に左右の[[ロール]](横転)、[[ピッチ]](上下の首振り)の上下、[[ヨー]](左右の首振り)の三つの運動を組み合わせて行わなければならない。


<!--これはどちらかというと[[飛行力学]]では
*安定性 vs 操縦性
**縦短周期モード
**縦長周期モード
**ダッチロール・モード
**ロール・モード
**上反角効果
**スピン
-->
==関連項目==
==関連項目==
*[[流体力学]] : [[風洞]]を用いた実験や実機を使った飛行試験に加え、コンピュータ・シミュレーションである[[数値流体力学]] (CFD) が重要性を増してきている。
*[[構造力学]] : 航空機の各部にはたらく力・変形・モーメント・振動といった構造に関する問題を扱う。コンピュータを利用する FEM([[有限要素法]])による解析も行われている。優れた材料の開発を行う[[材料工学]]や、疲労・亀裂進展等を扱う[[材料強度学]]などとも密接に関連する。
*[[構造力学]] : 航空機の各部にはたらく力・変形・モーメント・振動といった構造に関する問題を扱う。コンピュータを利用する FEM([[有限要素法]])による解析も行われている。優れた材料の開発を行う[[材料工学]]や、疲労・亀裂進展等を扱う[[材料強度学]]などとも密接に関連する。
*推進工学 : [[プロペラ]]や[[ジェットエンジン]]など、航空機を前進させる力([[推力]])を生み出すための推進装置について扱う。
*推進工学 : [[プロペラ]]や[[ジェットエンジン]]など、航空機を前進させる力([[推力]])を生み出すための推進装置について扱う。
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*[[制御工学]] : 航空機やそのサブシステムを、操縦者の意図通りに挙動させるための技術を扱う。主として[[PID制御]]が用いられる。
*[[制御工学]] : 航空機やそのサブシステムを、操縦者の意図通りに挙動させるための技術を扱う。主として[[PID制御]]が用いられる。
*[[電気工学]]・[[電子工学]] : さまざまな装備品に供給するための[[発電]]・給電について(電気工学)、また計器や[[無線]]・NAV/COM(航法・通信)といった[[アビオニクス]](エイヴィオニクス)関係について(電子工学)扱う。コンピュータの発達に伴い、制御工学とともに航空機開発における重要性が非常に大きくなってきている。
*[[電気工学]]・[[電子工学]] : さまざまな装備品に供給するための[[発電]]・給電について(電気工学)、また計器や[[無線]]・NAV/COM(航法・通信)といった[[アビオニクス]](エイヴィオニクス)関係について(電子工学)扱う。コンピュータの発達に伴い、制御工学とともに航空機開発における重要性が非常に大きくなってきている。
*[[飛]]

*[[航空機]]
*[[飛行機]]
*[[航空宇宙工学]]
*[[航空整備士]]
*[[航空機体整備員]]
*[[航空発動機整備員]]
*[[航空電機計器整備員]]
*[[航空電子整備員]]
*[[航空力学]]



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2008年2月14日 (木) 21:27時点における版

航空工学(こうくうこうがく、aeronautical engineering)とは航空機の設計・製造・運用・整備等に関する工学である。優れた航空機を研究開発することを目的とする。

概説

航空工学とは航空機に関する工学的な研究を指すものであり、流体力学材料/構造力学熱力学制御工学などを基礎とする学問である。発展の歴史や扱う対象の類似から、宇宙工学とまとめて航空宇宙工学と呼ばれることも多い。

航空機は大気中を航行する能力を持つ交通手段であり、物資や人員を迅速に輸送することが可能である。航空機にはまず飛行する能力が求められるが、これには飛行するレイノルズ数 (Re) やマッハ数に応じた空気力学理論に基づく工学的設計指針が必要となる。空気力学は流体力学の一分野であり、空気流れによってや胴体にはたらく力を扱う。人や物資を輸送するスケール(Re = 106程度以上)の航空機には一般に定常ないし準定常の空気力学が適用される。ベルヌーイの定理に示されるように非粘性の定常流れにおいて流速の大きなところでは負圧が生じることが分かっているが、現実の航空機でも翼に適当な迎え角を与えて表面(境界層)から少し離れた上面の流れを加速させ、発生する負圧により揚力を得て飛行している(負圧を表面全体について積分して得られる空気力ベクトルのうち、飛行方向と平行な成分を抗力、垂直な成分を揚力と呼んでいる)。したがって、水平定常飛行中の航空機では、下向きの重力と上向きの揚力、前向きの推力と後向きの抗力とがそれぞれ釣り合っていることになる。

また航空気象も航空機の飛行に大きな影響を与えることが分かっている。大気はその性質が地域、気候、局地的な天候により変化するため、国際標準大気が定められている。1万1000メートルより上空を成層圏、それより低空を対流圏と定めて成層圏の気温はマイナス56.5度で安定しており、酸素濃度や大気圧も高空になればなるほど低下していく。航空において雲や天候、突風は飛行の障害となりうる要素であり、また有視界距離は飛行方式を左右する重大な条件である。

さまざまな制約の下で安全性、推進力、揚力、制御性などを確保した航空機は設計されなければならない。航空機は固定翼機回転翼機に分類されるが、固定翼機は基本的に胴体、その胴体の両側に位置する主翼、胴体の後部に置かれる尾翼、推進機関のエンジン、降着装置、その他のシステムから構成されており、主翼の補助翼、尾翼には縦向きの方向舵と横向きの昇降舵が取り付けられている。エンジンにより推力を作り、流体中において主翼により主な揚力を生み出している。尾翼の方向舵は左右に動くことにより機首を左右に振り、昇降舵は上下に動くことにより機首を上下させる機能がある。

航空機を制御する機能は通常胴体前部に位置するコクピットに集約されており、基本的な入力装置は操縦桿、ラダーペダル、ストットルである。操縦桿を前に倒すと尾翼の昇降舵が下がるために機首を上げ、右に倒すと右補助翼が上がりかつ左補助翼が下がるために機体は右方向に傾斜する。ラダーペダルは左右両足に対して二つあり、右のペダルを踏み込むと尾翼の方向舵後縁が右へ傾くために機首は右方向へ向く。スロットルはエンジンの推力を操作するものであり、奥へ倒すと出力が上昇する。これらの機能を用いて航空機を操縦することになるため、航空機は基本的に左右のロール(横転)、ピッチ(上下の首振り)の上下、ヨー(左右の首振り)の三つの運動を組み合わせて行わなければならない。

関連項目

  • 流体力学 : 風洞を用いた実験や実機を使った飛行試験に加え、コンピュータ・シミュレーションである数値流体力学 (CFD) が重要性を増してきている。
  • 構造力学 : 航空機の各部にはたらく力・変形・モーメント・振動といった構造に関する問題を扱う。コンピュータを利用する FEM(有限要素法)による解析も行われている。優れた材料の開発を行う材料工学や、疲労・亀裂進展等を扱う材料強度学などとも密接に関連する。
  • 推進工学 : プロペラジェットエンジンなど、航空機を前進させる力(推力)を生み出すための推進装置について扱う。
  • 飛行力学 : 航空機の運動・位置・姿勢や安定性について解析する。
  • 制御工学 : 航空機やそのサブシステムを、操縦者の意図通りに挙動させるための技術を扱う。主としてPID制御が用いられる。
  • 電気工学電子工学 : さまざまな装備品に供給するための発電・給電について(電気工学)、また計器や無線・NAV/COM(航法・通信)といったアビオニクス(エイヴィオニクス)関係について(電子工学)扱う。コンピュータの発達に伴い、制御工学とともに航空機開発における重要性が非常に大きくなってきている。
  • 飛翔