「産育」の版間の差分

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== 産育と葬送儀礼の類似性 ==
== 産育と葬送儀礼の類似性 ==
かつては、人が生まれるとすぐに飯を炊いて「[[産飯]]」と称して[[神棚]]に供える習俗があったが、そのいっぽうで、こんにちでも人が死ぬとやはり炊飯して「[[枕飯]]」と呼称して死者の枕元に置く習俗が広くのこっている。産後の[[産祝い]]と死後の[[食い別れ]]はともに会食の行事であり、[[お七夜]]と[[初七日]]、[[宮参り]](初宮)と[[四十九日]]法要、生後100日目の[[食い初め]]と[[百日法要]]、生後一年目の[[初誕生]]と死後一年目の[[一周忌]]というように、生後もしくは死後のほぼ同時期に互いに対応するような[[儀礼]]がおこなわれる。子供の[[夜泣き]]は[[前世]]との関連が意識され、死者の[[口寄せ]]によって[[現世]]と[[来世]]の交流が図られる。このような類似性はともに、生まれたばかりの子供、死んで間もない死者はともに[[霊魂]]が不安定であることに由来すると考えられている。つまり、儀礼を積み重ねることによって魂を安定させ、生まれたばかりの子供は現世の生者として、死者は[[三十三回忌]]を過ぎて[[祖霊]]となったのちに再び生まれ替わるため、現世から引き離して落ち着かせる目的でおこなう行事だとみなされるのである。
かつては、人が生まれるとすぐに飯を炊いて「[[産飯]]」と称して[[神棚]]に供える習俗があったが、そのいっぽうで、こんにちでも人が死ぬとやはり炊飯して「[[枕飯]]」と呼称して死者の枕元に置く習俗が広くのこっている。産後の[[産祝い]]と死後の[[食い別れ]]はともに会食の行事であり、[[お七夜]]と[[初七日]]、[[宮参り]](初宮)と[[四十九日]]法要、生後100日目の[[食い初め]]と[[百日法要]]、生後一年目の[[初誕生]]と死後一年目の[[一周忌]]というように、生後もしくは死後のほぼ同時期に互いに対応するような[[儀礼]]がおこなわれる。子供の[[夜泣き]]は[[前世]]との関連が意識され、死者の[[口寄せ]]によって[[現世]]と[[来世]]の交流が図られる。このような類似性はともに、生まれたばかりの子供、死んで間もない死者はともに[[霊魂]]が不安定であることに由来すると考えられている。つまり、儀礼を積み重ねることによって魂を安定させ、生まれたばかりの子供は現世の生者として、死者は[[三十三回忌]]を過ぎて[[祖霊]]となったのちに再び生まれ替わるため、現世から引き離して落ち着かせる目的でおこなう行事だとみなされるのである。

== 産育に属する民俗事象 ==
[[柳田国男]]監修、財団法人民俗学研究所編『民俗学辞典』(1951)による。

{| cellspacing="0" cellpadding="0" style="width:100%"
|style="width:25;vertical-align:top"|
*[[出産]]
*[[妊娠祈願]]
*[[妊婦]]
*[[帯祝]]
*[[男のつわり]]
*[[産屋]]
*[[産の忌み]]
*[[産神]]

|style="width:25;vertical-align:top"|
*[[臍の緒]]
*[[胞衣]]
*[[産着]]
*[[お守]]
*[[育児]]
*[[いずみ]]
*[[産婆]]
*[[乳母]]

|style="width:25;vertical-align:top"|
*[[名付け]]
*[[名付け親]]
*[[拾い親]]
*[[養い親]]
*[[取子]]
*[[子守]]
*[[七夜]]
*[[宮参り]]
*[[食初め]]

|style="width:25;vertical-align:top"|
*[[初節供]]
*[[誕生祝]]
*[[七五三]]
*[[子供組]]
*[[双生児]]
*[[間引き]]
*[[流灌頂]]
*[[石女]]
*[[月経]]
|}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* [[柳田国男]]監修、(財)民俗学研究所編『民俗学辞典』[[東京堂出版]]、1951.1、ISBN 4-490-10001-9
* 大島暁雄・佐藤良博・[[宮田登]]ほか『図説 民俗探訪事典』[[山川出版社]]、1983.4、ISBN 4-634-60090-0
* 大島暁雄・佐藤良博・[[宮田登]]ほか『図説 民俗探訪事典』[[山川出版社]]、1983.4、ISBN 4-634-60090-0
* 新谷尚紀編『民俗学がわかる事典』[[日本実業出版社]]、1999.9、ISBN 4-534-02985-3
* 新谷尚紀編『民俗学がわかる事典』[[日本実業出版社]]、1999.9、ISBN 4-534-02985-3


== 関連文献 ==
== 関連文献 ==
* [[柳田国男]]監修、民俗学研究所編『民俗学辞典』[[東京堂出版]]、1951.1、ISBN 4-490-10001-9
*舩橋惠子・堤マサエ『母性の社会学』サイエンス社、1992.3、ISBN 978-4-7819-0648-5
*舩橋惠子・堤マサエ『母性の社会学』サイエンス社、1992.3、ISBN 978-4-7819-0648-5
*國分 真佐代・大石 恵美子「初産婦の産育に関わる慣習の実行程度''On the Degree of Primiparas' Observance and Practice of Traditions and Customs related to Childbearing and Childrearing'' 」『聖隷クリストファー大学 紀要27』、2005.3
*國分 真佐代・大石 恵美子「初産婦の産育に関わる慣習の実行程度''On the Degree of Primiparas' Observance and Practice of Traditions and Customs related to Childbearing and Childrearing'' 」『聖隷クリストファー大学 紀要27』、2005.3

2007年10月4日 (木) 10:52時点における版

産育(さんいく)とは、子供が大人になるまでにおこなわれる習俗や慣行、行事のこと。生活様式の近代化によって大きく変容している。

産育と葬送儀礼の類似性

かつては、人が生まれるとすぐに飯を炊いて「産飯」と称して神棚に供える習俗があったが、そのいっぽうで、こんにちでも人が死ぬとやはり炊飯して「枕飯」と呼称して死者の枕元に置く習俗が広くのこっている。産後の産祝いと死後の食い別れはともに会食の行事であり、お七夜初七日宮参り(初宮)と四十九日法要、生後100日目の食い初め百日法要、生後一年目の初誕生と死後一年目の一周忌というように、生後もしくは死後のほぼ同時期に互いに対応するような儀礼がおこなわれる。子供の夜泣き前世との関連が意識され、死者の口寄せによって現世来世の交流が図られる。このような類似性はともに、生まれたばかりの子供、死んで間もない死者はともに霊魂が不安定であることに由来すると考えられている。つまり、儀礼を積み重ねることによって魂を安定させ、生まれたばかりの子供は現世の生者として、死者は三十三回忌を過ぎて祖霊となったのちに再び生まれ替わるため、現世から引き離して落ち着かせる目的でおこなう行事だとみなされるのである。

産育に属する民俗事象

柳田国男監修、財団法人民俗学研究所編『民俗学辞典』(1951)による。

参考文献

関連文献

  • 舩橋惠子・堤マサエ『母性の社会学』サイエンス社、1992.3、ISBN 978-4-7819-0648-5
  • 國分 真佐代・大石 恵美子「初産婦の産育に関わる慣習の実行程度On the Degree of Primiparas' Observance and Practice of Traditions and Customs related to Childbearing and Childrearing 」『聖隷クリストファー大学 紀要27』、2005.3

関連項目

外部リンク