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2007年5月2日 (水) 11:18時点における版

Valkyrien(1869) by ペーター・ニコライ・アルボ

、たて、:shield)とは、などによる斬撃、及び弓矢射撃などから身を守るための防具

素材

ルネッサンス後期には鉄製があらわれたが、ほとんどは木製で、革製のものもよく使用された。 古い時代には青銅製もあり大変重い物であった。 通常は盾のふちを補強するのだが、バイキングは狡猾にも補強せず材質も柔らかい木材を使った。これは相手の剣を盾で受け、刃を喰い込ませ動きがとれなくなった一瞬を狙う目的があった。 実験では木製盾は斧の数撃で破壊された。 現在は、ジュラルミンポリカーボネート製の盾がある。

歴史と形状

古代ギリシアや、それを源流とするヘレニズム文化圏では、ホプロンと呼ばれる丸盾と貫徹槍を装備した重装歩兵の密集陣形が活躍した。 盾と槍の隙間無い陣形は、並大抵のことでは突破できず、ペルシア帝国との戦いでは、圧倒的数的不利をものの見事に逆転したという。 古代ローマの帝国初期の歩兵は、スクトウムと呼ばれる四角い大形のものを使用した。彼等はこれを隙間なく並べ統一された行動で戦いに臨んだ。彼等は個人のテクニックよりもグループで動き様々なフォーメーションを組んだ。それは移動トーチカのような物であり、また城壁に接近する場合は亀甲のようにして投擲物から身を守った。 当然、散開して個々に使用することも十分でき、ホプロンと比べてやや重い分、防御率が高い。 また、帝国末期には、盾の裏に数本の投げ矢を装備する事もあった。 馬に乗るノルマン人は涙滴形をつかった。これは円盾の下部が伸び、足を守るためである。騎士のもつアイロン形はこの上部が水平に切られた物だ。ドイツ型は裏から見て右片方の上辺が切り欠かれ、視界をよくした物だ。この切り欠かれた部分は槍をもって騎馬突撃をする場合の槍の保持としても使う。ポーランドなどのものは左上辺が長く上に伸び、側頭部を守る。 標準的な円盾は両手の拳をつきあわせて肘から肘までが直径であった。円盾はもっとも基本的な物で、中心軸に持ち手があるセンターグリップ式である。盾はドーム状に膨らませるか、中央はくり抜かれアンブ-と呼ばれる金属半球がはめ込まれる。これは盾の中心軸を持つ為に拳の空間を逃がすための処置である。腕で盾を動かす範囲はおよそ左右上下20cmほどで足を除く全身が防御できる。 また、センターグリップタイプの盾は腕が固定されないため、初心者向きである。アイロン形は腕をとおすベルトがあり腕は完全に固定される。腕全体で支えるのでセンターグリップタイプよりも負担は少ない。強い衝撃にも耐えられ軽く感じるが細かい動作ができない。行軍中はベルトをつけ背中に背負うようにした。

欧州中世では騎士道の象徴であり、盾に描かれた紋章を見ればその騎士が誰かが分かったという。この盾の紋章から、西欧の紋章は発展した。騎士には必ず盾持ちの従者が伴ってたが、中世終期にはが全身を覆う頑丈なプレートアーマーとなり、盾は使われなくなった。

日本では、中古以降、地面に固定する型の盾(掻盾、垣盾などといわれる)が主に使われ、手で持つ型の盾(手盾)は使われなくなった。

金属で補強された盾の場合、盾の縁を武器で連打して大きな音を出し、敵を威嚇することに使われた。これは日本の機動隊などポリカーボネート製の盾を装備する現代の暴徒鎮圧部隊でも行われる事がある。

多くの場合、盾に槍などの大きな異物が突き刺さったりすると、大抵の盾はバランスが悪化し、持ち運びしにくくなって投棄せざるをえない。その為、投槍などで先制するなど、対抗策がいくつも生み出されている。

盾の形の分類

  • 四角盾
  • 長方盾
  • 丸盾・丸楯(牌・団牌・円楯・円盾)
  • 菱盾
  • 逆三角盾
  • 楕円盾
  • 五角盾
  • 木の葉盾
  • 槍盾
  • 剣盾

盾の大きさの分類

  • 小盾・小楯(30cm以内)
  • 手楯・手盾・楯・盾(30~60cm)
  • 大盾・大楯(0.6m~1m)
  • 壁盾(1m以上)

種類

  • 戦闘用の盾と、儀式用の盾がある。
  • 戦闘時に手で持つ盾と、地面に固定する大型の盾がある。後者の代表的な物はクロスボウマンが矢をセッティングする間を守るため巨大な設置式盾のハピスと呼ばれるものだ。日本で盾というと矢を防ぐこのタイプをいう。
  • 盾の内側に短刀を仕込める盾もある。

記念・賞としての盾

賞を与える時に、『盾』を与える事がある。

イタリアのサッカーリーグセリエAで優勝することを「スクデットを取る」というが、この「スクデット」も盾を意味する。

比喩

  • 『人間の盾』とは、人質を利用して敵を攻め込ませないようにすること。稀に個人の独断で自発的に行われることもある。文字通り人が盾になっている。
  • 『後ろ盾』とは、陰から協力すること。
  • 『砂漠の盾(デザートシールド)』とは、湾岸戦争の作戦名。
  • 『醜の御盾』
  • アメリカの警察では、“市民の護り手”の意を込め、盾をかたどった身分証明徽章(バッジ)を使用している機関がある。

西洋の盾

  • バックラー
小型の盾で相手に突きつけるように構える。中型の盾とはまったく異なった技術を要する。その感覚は二刀流に近い。西洋剣術の最も古いテキストはバックラーとブロードソードの扱いを述べており12世紀に書かれた。バックラーはレピアの時代に入っても好まれた息の長い防具である。中心に長いスパイクをつけたスコットランドの物はタ-ジュと呼ばれる。レピアが使 われた時代の物は太い針金をリング状にした物をつけたバックラ-が見られる。これはソードブレーカーである。リング状部分で剣を絡め折り取る。
これは盾と篭手、腕鎧が一つになりダガ-や、はてはランタンまでもがついたスイスアーミーナイフのような物だ。 この原形はおそらくプレートア-マ-の肘を大きく強化し盾の代用としたグリニッジ甲冑であろう。甲冑が発達すると盾は戦場から消え、トーナメントの際の紋章(看板がわり)と馬上鎗試合用のスポーツプロテクターとなった。タ-ジュとよばれ左の胸に固定された。中には演出のために槍が当たるとバネで盾が飛散する仕掛けのものもあった。
  • デュエリング・シールド
ソードシールドとかスパイクシールドとも呼ばれる大形の盾である。構造は棒術に使う棒に盾が付いたようなデザインで、両端はフックやスパイクになっている。これは裁判決闘につかわれ戦場では使用されなかった。場合によってはトーナメント種目でつかわれたかも知れない。

東洋の盾

  • ティンベー
の甲羅で出来た盾。ローチンと呼ばれる短い鉾と合わせて使われる。
  • 団牌(だんぱい)
円形の盾全般。別名、蛮牌。右手に刀を持って使われる。また、模様は太極図八卦、虎の顔や鬼の顔なども描かれている。
  • 籐牌(とうはい)
団牌の一種で籐などのかずらで籠のように編んだもの。籐とはラタンのことである。これは軽くて丈夫であったが突きや矢には弱い。

現代の盾

  • 防弾シールド(防弾盾)
  • ジュラルミン盾
機動隊の使用していた盾。
  • ポリカーボネート盾
ジュラルミン盾に代わって機動隊に採用された盾。透明もしくは半透明な為に視界を確保しやすい。ピストルポートがついたものもある。ただし。銃付き盾は15世紀には見られる。

盾の精神性

攻撃が剣を象徴するならば盾は防御の象徴として使用される。マケドニアに代表されるファランクスは長い槍と盾を重ね合わせて隊列を作る密集部隊であった。兵士は横に並んだ戦友の右半身を盾で守る。したがって盾をなくす事は非常に不名誉な事とされた。また、「盾に担がれて凱旋する」は名誉な戦死を遂げた者が盾に乗せられ仲間に担がれたことを意味する。 実際の戦いに臨んでは、盾は攻撃に消極的な感じを受けるが実際は逆である。標準的な盾は持っただけでからだの1/3は防御できる。これは命中判定が無条件に2/3になると言う事だ。あなたに盾がなく、相手が盾を持っている場合これは非常に不利な条件である。一方相手はあなたの攻撃が2/3になるのだからより積極的になる。また武器は片手用だから間合いは短い。嫌でも積極的にならざるを得ないのだ。

盾のテクニック

  • 基本は大きな盾ほど体に寄せバックラ-のような小さな盾ほど体からはなす。これは盾の陰を大きく取りその中に体を入れるためである。
  • 盾は重いので肩で上下はさせない。肘を中心に上下を、腰の回転で左右を守る。
  • 盾は防御だけではなく、攻撃の補助具である。
    • バックラ-は自分から当てて行く
    • 縁を使って相手の武器を引っ掛ける
    • 盾で殴る
    • 押し付けてイニシアチブを奪う
    • 目の前にかざして相手の視界を奪う、など。
  • 盾の欠点
    • 死角ができる
    • 足元への攻撃は弱い
    • 固定式の盾はねじられると関節が脱臼する、など。
  • 機動隊は盾の下辺を相手の足の甲に叩きつける。

有名な盾

関連項目